このモデルは、ひとつの金融機関の本部における年間計画の策定過程を扱うものである。モデルの構成、使用される定数等については現実の金融機関を調査して得たものではないか、概略の姿は反映されている。
預金(記号Y)
- 利率 5%/年のもの(記号YH)
- 利率 2%/年のもの(記号YL)
貸付(記号K)
- 利率 8%/年のもの(記号KH)
- 利率 7%/年のもの(記号YL)
全店的にも、各支店ごとにも厳しさの差はあれ、制約がある。
貸付の伸びの額(△K)
金融引締め時を想定すると、これは金融機関ごとに厳しく制限される(これは全店的)。
各支店の性格の違いか顕着に現れるように、各定数を定めた。
上位目標 | 全店預金の非減目標 |
↓ | 全店貸付の非減目標 |
預貸率制約 | |
貸付構成制約 | |
固定預金比率制約 | |
固定預金伸び目標 | |
利益額 | |
貸付の伸び | |
預金の伸び | |
下位目標 | コール借入額を抑える |
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預貸比 ( K/Y ) = 0.23
固定預金比率 ( YH/(YH + YL) ) = 0.76 貸付構成比 ( KH/(KH + KL) ) = 0.53 |
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預貸比 ( K/Y ) = 0.83
固定預金比率 ( YH/(YH + YL) ) = 0.58 貸付構成比 ( KH/(KH + KL) ) = 0.60 |
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預貸比 ( K/Y ) = 1.80
固定預金比率 = 0.45 貸付構成比 = 0.67 |
バランスシート
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預貸比 ( K/Y ) = 1.05
固定預金比率 = 0.58 貸付構成比 = 0.64 |
損益計算書
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平均預金利率 = 0.0375
平均貸付利率 = 0.0764 利益/総預金 = 0.0388 |
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預貸比 = 0.22
固定預金比率 = 0.75 貸付構成比 = 0.50 ΔYH1 = 10.5 (18.4%) ΔYL1 = 4.5 (25.0%) ΔY = 15.0 (20.0%) ΔKH1 = 1.0 (11.1%) ΔKL1 = 2.0 (25.0%) ΔK = 3.0 (17.6%) 資金の伸び = 12.0 (20.7%) |
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預貸比 = 0.86
固定預金比率 = 0.60 貸付構成比 = 0.67 ΔYH2 = 7.0 (20.0%) ΔYL2 = 3.0 (12.0%) ΔY = 10.0 (16.7%) ΔKH2 = 10.0 (33.0%) ΔKL2 = 0.0 ( 0 %) ΔK = 10.0 (20.0%) 資金の伸び = 0.0 ( 0 %) |
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預貸比 = 1.92
固定預金比率 = 0.50 貸付構成比 = 0.75 ΔYH3 = 15.0 (33.3%) ΔYL3 = 5.0 (9.1%) ΔY = 20.0 (20.0%) ΔKH3 = 52.0 (43.3%) ΔKL3 = -2.0 ( -3.3 %) ΔK = 50.0 (27.8%) CALL借伸び = 18.0(150.0%) |
バランスシート
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預貸比 = 1.11
固定預金比率 = 0.61 貸付構成比 = 0.72 ΔYH = 32.5 (23.7%) ΔYL = 12.5 (12.8%) ΔY = 45.0 (19.1%) ΔKH = 63.0 (39.6%) ΔKL = 0.0 ( 0 %) ΔK = 63.0 (25.5%) |
損益計算書
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平均預金利率 = 0.0382
平均貸付利率 = 0.0772 利益/総預金 = 0.0376 利益伸び率 = 0.172 |
今期は、急速に強力な金融引締め期に入り、金融機関貸出に強い規制が行われるようになった。具体的には、貸付の伸びは、前期増加額の6割以内とされた。これは当社にあてはめると、前期増加額が63億円であるので
目標行名 | 式変数 | 内容説明 | |
1 | 預金非減目標 | Y11-,Y21-,Y31-,Y41- | 全店預金の非減目標 |
2 | 貸付非減目標 | Y15-,Y25-,Y35-,Y43- | 全店貸付の非減目標 |
3 | 預貸率制約 | Y12+,Y22+,Y32+ | 預貸率超過は避けたい。 |
4 | 貸付構成制約 | Y14+,Y24+,Y34+ | 貸付構成超過は避けたい。 |
5 | 固預金比制約 | Y13+,Y23+,Y33+ | 固定預金比率超過は避けたい。 |
6 | 固預金伸目標 | Y421- | 固定預金の伸びは達成不足だけ
が避けたい。 |
7 | 固預金比改善 | Y13-,Y23-,Y33- | 固定預金比率不足は避けたい。 |
8 | 全貸付伸制約 | Y431+,Y431- | 全店貸付伸び超過は避けたい。 |
9 | 支預金伸制約 | Y111+,Y211+,Y311+ | 支店預金伸び超過は避けたい。 |
10 | 貸付伸び抑制 | Y151-,Y251-,Y351- | 各支店の貸付伸びを抑制する。 |
11 | 利益目標 | Ym-Ym+ | 利益目標値を丁度達成したい。 |
12 | 貸付拡大目標 | Y431- | 貸付伸びを拡大する。 |
13 | 固定預金非減 | Y42- | 固定預金総額不足は避けたい。 |
14 | 貸付構成改善 | Y14-,Y24-,Y34- | 支店貸付構成不足は避けたい。 |
15 | 預貸率改善 | Y12-,Y22-,Y32- | 支店預貸率不足は避けたい。 |
16 | 全預金伸制約 | Y411+ | 全店預金伸び超過は避けたい。 |
17 | 支預金伸目標 | Y111-,Y211-,Y311- | 支店預金伸び不足は避けたい。 |
18 | 借入額を抑え | YC- | コール借入額を抑える目標。 |
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預貸比 = 0.22
固定預金比率 = 0.75 貸付構成比 = 0.50 ΔYH1 = 6.1 ΔYL1 = 2 ΔY = 8.1 ( 9%) ΔKH1 = 0.9 ΔKL1 = 0.9 ΔK = 1.8 資金の伸び = 6.3 ( 9% ) |
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預貸比 = 0.83
固定預金比率 = 0.68 貸付構成比 = 0.67 ΔYH2 = 10.8 ΔYL2 = -1.6 ΔY = 9.2 ( 13%) ΔKH2 = 4 ΔKL2 = 2 ΔK = 6 資金の伸び = 3.2 ( 32% ) |
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預貸比 = 2.0
固定預金比率 = 0.5 貸付構成比 = 0.75 ΔYH3 = 5.0 (8.3%) ΔYL3 = 5.0 (8.3%) ΔY = 10.0 ( 8.3%) ΔKH3 = 23 (13.4%) ΔKL3 = 7 (10.9%) ΔK = 30 (13%) コール借の伸び = 10.4 ( 34.5% ) |
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平均預金利率 = 0.0387
平均貸付利率 = 0.0772 利益/総預金 = 0.0368 利益伸び率 = 0.072 |
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預貸比 = 1.13
固定預金比率 = 0.62 貸付構成比 = 0.72 ΔYH = 21.9 ΔYL = 5.4 ΔY = 27.3 (9.75%) ΔKH = 27.9 (12.6%) ΔKL = 9.9 (11.3%) ΔK = 37.8 (12.2%) |
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預貸比 = 0.22
固定預金比率 = 0.75 貸付構成比 = 0.50 ΔYH1 = 13.5 ΔYL1 = 4.5 ΔY = 18 ( 20% ) ΔKH1 = 2.0 ΔKL1 = 2.0 ΔK = 4.0 ( 20%) 資金の伸び = 14.0 ( 20% ) |
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預貸比 = 0.83
固定預金比率 = 0.67 貸付構成比 = 0.67 ΔYH2 = 12.7 ΔYL2 = -0.7 ΔY = 12 ( 17.1% ) ΔKH2 = 5.5 ΔKL2 = 2.8 ΔK = 8.3 ( 13.8% ) 資金の伸び = 3.7 ( 37% ) |
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預貸比 = 2.0
固定預金比率 = 0.5 貸付構成比 = 0.75 ΔYH3 = 3.9 ( 6.5% ) ΔYL3 = 3.9 ( 6.5% ) ΔY = 7.8 ( 6.5% ) ΔKH3 = 19.6 (11.4%) ΔKL3 = 5.9 (10.2%) ΔK = 25.5 (11.1%) コール借の伸び = 0.0023; |
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平均預金利率 = 0.0388
平均貸付利率 = 0.0772 利益/総預金 = 0.037 利益伸び率 = 0.119 |
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預貸比 = 1.09
固定預金比率 = 0.63 貸付構成比 = 0.72 ΔYH = 30.04 ΔYL = 7.7 ΔY = 37.74 ( 13.5% ) ΔKH = 27.16 ΔKL = 10.65 ΔK = 37.81 (12.2%) |
利益の伸びとコール借入の点が改良されたことがわかる。
参考文献
この金融機関年間計画のモデル例は、1976年3月日本オペレーションズ・リサーチ学会のオペレーションズ・リサーチのためのデータとプログラムに関する報告書の第5章のデータです。