株投資損切り計算への応用例

X・Y・Zの3社があり、それぞれの株価は、「円相場」と「夏の気温」で変動します。  今、問題を簡単にするため、「円相場」は、「円高」か「円安」、「夏の気温」は、 「猛暑」か「冷夏」のそれぞれ2つしかないものと仮定して、円高・冷夏をT、 円高・猛暑をU、円安・冷夏をV、円安・猛暑をWとして、X社の株価変動幅は、 Tの時はー10%、Uの時は+15%、Vの時は、ー5%、Wの時は、+20%と変動する。 Y社では以下同様にTなら0%、Uならー10%、Vなら+10%、Wなら0%、 Z社では、Tなら+15%、Uなら+5%、Vならー15%、Wならー5%それぞれ変動する ものとする。あなたは、1200万円の資産をもって、これを運用するものとする。 絶対に「損失」を出さない投資比率は、如何?という問題です。

まず変数の設定をします。
: X社投資比率。
: Y社投資比率。
: Z社投資比率。
1+: 円高冷夏利益額。
1−: 円高冷夏損失額。
2+: 円高猛暑利益額。
2−: 円高猛暑損失額。
3+: 円安冷夏利益額。
3−: 円安冷夏損失額。
4+: 円安猛暑利益額。
4−: 円安猛暑損失額。
を設定する。

 制約条件

  1. 円高冷夏制約
    -120X1 + 180X3 + Y1- − Y1+ = 0
  2. 円高猛暑制約
    180X1 − 120X2 + 60X3 + Y2- − Y2+ = 0
  3. 円安冷夏制約
    -60X1+120X2 − 180X3+ Y3- − Y3+ = 0
  4. 円安猛暑制約
    240X1−60X3 + Y4- − Y4+ = 0
  5. 投資比率制約
    1 + X2 + X3 = 1

 目的関数

第一目標(損切り目標) Y1- + Y2- + Y3- + Y4- 最小化
第二目標(円高冷夏利益) Y1+ 最大化
第三目標(その他利益) Y2+ + Y3+ + Y4+ 最大化

 GLPS用インプット・データ(正式版3.1)

インプット・データの与え方はGLPS操作ガイドを参照していただきたい。実際このモデルインプット・データ はGLPSプログラムに同梱してあります。 GLPS実行 → ファイル → Sample09 開く を経て、ファイルを開くことによって見ることができます。
実際このモデルのインプット・データは下のようになっています。

TITLE 株投資損切り計算
損切り目標)  MIN Y1- + Y2- + Y3- + Y4-
円高冷夏利益) MAX Y1+
その他利益)  MAX Y2+ + Y3+ + Y4+
ST
円高冷夏制約) -120x1 + 180x3 + Y1- - Y1+ = 0
円高猛暑制約) 180x1 - 120x2 + 60x3 + Y2- - Y2+ = 0
円安冷夏制約) -60x1 + 120x2 - 180x3 + Y3- - Y3+ = 0
円安猛暑制約) 240x1 - 60x3 + Y4- - Y4+ = 0
投資比率制約) x1 + x2 + x3 = 1
END

 GLPS正式版計算結果

変数 GLPS最適解 最適解の意味
0.25 X社に300万投資
0.5 Y社に600万投資
0.25 Z社に300万投資
1− 0 円高冷夏損失0
1+ 15 円高冷夏利益15万
2− 0 円高猛暑損失0
2+ 0 円高猛暑利益0
3− 0 円安冷夏損失0
3+ 0 円安冷夏利益0
4− 0 円安猛暑損失0
4+ 45 円安猛暑利益45万

同様に円高猛暑利益を第二目標
TITLE 株投資損切り計算
損切り目標) MIN Y1- + Y2- + Y3- + Y4-
円高猛暑利益) MAX Y2+
その他利益) MAX Y1+ + Y3+ + Y4+
ST
円高冷夏制約) -120x1 + 180x3 + Y1- - Y1+ = 0
円高猛暑制約) 180x1 - 120x2 + 60x3 + Y2- - Y2+ = 0
円安冷夏制約) -60x1 + 120x2 - 180x3 + Y3- - Y3+ = 0
円安猛暑制約) 240x1 - 60x3 + Y4- - Y4+ = 0
投資比率制約) x1 + x2 + x3 = 1
END

 GLPS正式版計算結果

変数 GLPS最適解 最適解の意味
0.315789473684211 X社に378.95万投資
0.473684210526316 Y社に568.42万投資
0.210526315789474 Z社に252.63万投資
1− 0 円高冷夏損失0
1+ 0 円高冷夏利益0
2− 0 円高猛暑損失0
2+ 12.6315789473684 円高猛暑利益12.6315789473684万
3− 0 円安冷夏損失0
3+ 0 円安冷夏利益0
4− 0 円安猛暑損失0
4+ 63.1578947368421 円安猛暑利益63.1578947368421万

同様に円安冷夏利益を第二目標
TITLE 株投資損切り計算
損切り目標) MIN Y1- + Y2- + Y3- + Y4-
円安冷夏利益) MAX Y3+
その他利益) MAX Y1+ + Y2+ + Y4+
ST
円高冷夏制約) -120x1 + 180x3 + Y1- - Y1+ = 0
円高猛暑制約) 180x1 - 120x2 + 60x3 + Y2- - Y2+ = 0
円安冷夏制約) -60x1 + 120x2 - 180x3 + Y3- - Y3+ = 0
円安猛暑制約) 240x1 - 60x3 + Y4- - Y4+ = 0
投資比率制約) x1 + x2 + x3 = 1
END

 GLPS正式版計算結果

変数 GLPS最適解 最適解の意味
0.28571425714286 X社に342.86万投資
0.523809523809524 Y社に628.57万投資
0.190476190476191 Z社に228.57万投資
1− 0 円高冷夏損失0
1+ 0 円高冷夏利益0
2− 0 円高猛暑損失0
2+ 0 円高猛暑利益0
3− 0 円安冷夏損失0
3+ 11.4285714285714 円安冷夏利益11.4285714285714万
4− 0 円安猛暑損失0
4+ 57.1428571428571 円安猛暑利益57.1428571428571万

同様に円安猛暑利益を第二目標
TITLE 株投資損切り計算
損切り目標) MIN Y1- + Y2- + Y3- + Y4-
円安猛暑利益) MAX Y4+
その他利益) MAX Y1+ + Y2+ + Y3+
ST
円高冷夏制約) -120x1 + 180x3 + Y1- - Y1+ = 0
円高猛暑制約) 180x1 - 120x2 + 60x3 + Y2- - Y2+ = 0
円安冷夏制約) -60x1 + 120x2 - 180x3 + Y3- - Y3+ = 0
円安猛暑制約) 240x1 - 60x3 + Y4- - Y4+ = 0
投資比率制約) x1 + x2 + x3 = 1
END

 GLPS正式版計算結果

変数 GLPS最適解 最適解の意味
0.315789473684211 X社に378.95万投資
0.473684210526316 Y社に568.42万投資
0.210526315789474 Z社に252.63万投資
1− 0 円高冷夏損失0
1+ 0 円高冷夏利益0
2− 0 円高猛暑損失0
2+ 12.6315789473684 円高猛暑利益12.6315789473684万
3− 0 円安冷夏損失0
3+ 0 円安冷夏利益0
4− 0 円安猛暑損失0
4+ 63.1578947368421 円安猛暑利益63.1578947368421万

評価

計算結果、円高猛暑と円安猛暑の結果は同一結果。実際は三通りになります。各投資方法はすべて 「損失」を出さない投資比率です。気象庁と統計データを参考にして投資方法を一つに絞って、 兎に角損失は絶対出ません。

参考文献

この株投資損切り計算モデル例は、吉本佳生氏著の『金融工学の悪魔』 (P.228)の第一問です。情報提供は神戸・田中邦和氏。

[ 最適化ソフトメンページへ]

Copyright(C)2007-2008 M.Shiimori , All Rights Reserved.