2000年12月24日 記
ここでは、ソフトウエア工学でいわれているライフサイクルではなく、 もっと実践的(?)な、オンラインソフトウエアのライフサイクル について考察してみたいと思います。
オンラインソフトウエアの場合、個人で開発しているものがほとんどであり、 組織で開発しているソフトウエアとはライフサイクルは大きく異なります。 ソフトウエアには、一定の寿命しかないという意味では同じですが... オンラインソフトウエアのライフサイクルは、おおよそ次のような かんじではないでしょうか。
オンラインソフトウエアに寿命があることには、次の理由が考えられます。
ソフトウエアを選択する場合、そのライフサイクルのどのフェーズにいる のかを見極めることが重要です。 通常のソフトウエアですと、たとえ使用中のソフトウエアの寿命が尽きても 他のソフトウエアに乗り換えればそれでおしまいです。しかし、 株ソフトの場合、他のソフトウエアに乗り換えることにより、自分でこつこつ と蓄積してきたデータが、全く使えなくなるという問題がありますから、 選択に慎重さが要求されます。
さらに、シェアウエアの場合は、支払いが発生しますから、さらなる慎重さ が要求されます。特に、株ソフトは数万円と、他種のシェアウエア相場の 数十倍の値付けがされていますから。大枚はたいて購入したシェアウエア が、使って何年もしないうちに寿命が尽きたなんて、笑えませんからね。 「私にとっては、今実現されている機能で充分だから、買ったソフトは一生 もの」と思っていても、OSの世代交代で寿命が尽きる場合がありますので、 注意が必要です。
Phase-3〜Phase-4段階のシェアウエアは、カモであるみなさんが、ネギを しょってやってくるのを、てぐすね引いて待っています。高価な シェアウエアを購入する場合は、そのソフトウエアがどのフェーズに いるのか、しっかりと見極めてください。
最初に公開されてから何年が経過しているか。またその間に、どういう バージョンアップが行われたか。 これは、バージョンアップの履歴が公開されている場合、容易に確認できます。 バージョン番号がどんどん大きくなるのに、本質的な機能がほとんど 変わっていないなら要注意。
また、DOSの時代から出していたHogeという名前のソフトウエアが、Windows3.1 が出現したらHoge/Win、Windows95が出現したらHoge95、2000年になってHoge2000、 2001年になってHoge21とかHoge.NETといったように名前だけ変えて、できることは 変わっていなかったら、これまた要注意。
開発者がプロフィールを公開している場合は、開発者の年齢はチェックして おいた方がよいでしょう。40歳、50歳になっても永遠に保守されるとは 考えないほうがよいでしょう。
バブルの前から開発をはじめて、10年以上の開発実績があるとか、 N88-BASICの頃からの実績とかをうたい文句にしているソフトは、 裏を返せば、寿命が近いということです。
ライフサイクルのPhase-3に入ると、「機能的に完成の域に達した」とか、 「みなさんの要望は満たしている」とか、「一通りのことはできます」と 称するようになってきます。 そうなったら要注意で、今後の発展は全く望めません。
一言で言って、VisualBasic等のBASIC系の開発言語で作成された株ソフトは 無条件で避けるべきです。最近のコンピュータは速度が速いので、BASICで 作られていても、チャートを表示するぐらいなら普通に使えるとは思います。 多少動作が重く感じる程度で、見た目は変わりませんし。
物理的な問題というより、BASICでしか開発できなかった、開発者の資質が 問題な訳です。N88-BASICからVisualBasicへ変えて、今に至っているものは、 オブジェクト指向などのテクノロジーとも無縁で、今後のソフトウエアアーキ テクチャの変遷に追従できるはずがありません。 このようなソフトウエアは、開発初期段階からPhase-4にいるようなものです。 そもそも、VisualBasicは、スキルが低いプログラマーでも、企業情報システム の末端部の開発を可能にするためのツールであり、パッケージ系アプリ ケーションの開発には不向きです。
高価なシェアウエアでも、銘柄選択中はチャート表示できないとか、銘柄抽出 中は何も入力が受け付けられなくなってしまうとかといった、素人プログラム レベルのものは、たいていは、BASIC系の開発言語で作成されたものです。 BASICで、お手軽に作って、手っ取り早く稼いで、さっさと店じまい という魂胆がみえみえのものもけっこうあります。 シェアウエア代金を支払う前に、どのような開発環境で開発されたものか を確認すべきでしょう。
ChartScapeの名前でデビューしてからは数年ですが、ChartScapeの作者も バブルの前、大阪有線から株データの配信を受け、PC9801で株価分析した 世代ですから、寿命は近いかも。でも、実はChartScapeの作者は魔女で、 もう700年も生き続けており、オランダのチュ−リップバブルも世界恐慌も、 独自の分析手法で乗り切っているので、今後も数百年は安泰でしょう。
という与太話はさておき、
ライフサイクルから見たChartScapeのフェーズを考えてみます。
ChartScape/Mac 1.xは1994年頃に開発をはじめましたが、MacOS8の頃から
アピアランスなどのOSの新しいサービスに追従できなくなり、
機能追加も難しくなり、ほころびが目立つようになりました。
で、2000年に新しいフレームワークに基づくChartScape/Mac 2.xに
引き継ぎました。このことから、1つのフレームワークの寿命は長くて
6年程度といえます。でも後半の3年はほとんど保守モードですね。
ChartScape/Macのフェーズは、OSの世代交代にあわせ、Phase-3からPhase-1に 輪廻したばかりの段階です。今後、3〜4年は、新しい提案をしていき たいですね。
ChartScape/Winの方は、フレームワーク的には、保守モード入りが近い かもしれません。
フレームワークが一新されて、これまでやりたくてもできなかったことが 実装できるような環境が整いました。 これまでのコンピュータを使ったテクニカル分析といえば、算術的に 計算可能な指標を計算し、その結果で分別するというものが主でした。 しかし、これはある時点での株価の特徴ベクトルの1次元 スナップショットを見ているにすぎません。時間軸を含めた多次元的な 特徴ベクトルのパターンを認識できるようにしていきたいと考えています。
昔から、チャートには、「三尊なんちゃら」とか、いろいろな「型」がありました。 しかし、これらの型が形成されたことを認識できるソフトはありません。 人はチャート上にトレンドラインを容易に引くことができますが、これを コンピュータにやらせようとするのは、ちょっと大変です。 高価な株ソフトは腐るほどありますが、パターン認識にもとづく分析が 可能なものは、私は知りません。今後は、パターン認識方面で攻めていきたいと 思います。
先人の知恵やコンピュータではじめて可能になるパターンを認識し、 データマイニングの手法で新しいルールを見つけていく、といったこと に発展させたいですね。