プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂 和訳

はじめに

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登場人物

 基本的に、固有名詞じゃないのは日本語で、読み方が分かるものはカタカナで書いてます。



台詞集

[オープニング]

 私たちは皆、大なり小なり過ちを犯します――。彼の過ちは、無知から生まれ、誇りによって煽り立てられました。そして、その彼の過ちはとても重大で恐ろしい過ちでした。

[王子、アミュレットを見る。不意に、いくつかの光景が脳裏に明滅する]

フードの男: お前のものは俺のものだ! そう、もうすぐ俺のものになる!

老人: 運命は変えられぬよ……。

 王子が死から逃れるために時の島へと旅立ったとき、彼は独りで帰ってくると思った人もいるでしょう。アミュレットは破壊され、ダハカは去り、女王は死に、そしてついに王子は自由になった、と。しかし、そうはなりませんでした。
 王子は私の運命から私を守ってくれた……それが事実です。彼は私を解き放ち…そして、私たちを運命付けたのです…。(訳注1)
カイリーナ: 王子、全ての可能性の中の一つの兆しが私には見えていたわ(Prince, of all the possible futures, this one held the most promise. )。でも、何かが変わってしまった…。

王子: カイリーナ、心配いらない。バビロンには君を傷つけるものなんてない。約束する。さあ、もうバビロンに着く。

[バビロンは炎に包まれている]

王子: 馬鹿な…

[矢が二人の乗る小船に射掛けられる。さらに、炎に包まれた石が船に命中し、王子とカイリーナは海中に投げ出される]

王子: カイリーナ、無事か?

[カイリーナは気を失い、波間を漂っている]

王子: カイリーナ!

[番兵がカイリーナを引き上げ、連れ去って行く]

王子: 彼女をどこへ連れて行くつもりだ!

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[王子、武器(しょぼいナイフ )を見つける]

王子: こういう時に限って、いつもまともな武器が見つからない。まあ、無いよりはマシだが。

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[バビロンの町を抜け、宮殿へ。玉座の間で、王子は誰かが話しているのを聞く]

なぞの男: 何年も前に、わしはインドのマハラジャと共に、時の島へ旅をしたことがある。その秘密を調査するためにな。そこは不毛で荒廃した場所じゃったよ。無人のホール、砂に還った番兵ども…。
 我々はそこで壁画を見つけた。その壁画には女王について描かれておった。時の女王! じゃが、その島で彼女についての痕跡は何一つ見付けることはできんかった。
 わしらは多くの財宝をインドに持ち帰った。ダガー、スタッフ、宝石で飾られた空の砂時計、そして書物を! わしはその時すでにもう年老いており、自分の余命がまもなく尽きることを知っておった。じゃが、その書物はわしに示してくれた。永遠の命というものが、決して手に入らないものではないということをな。じゃが、そのためには女王の力が、砂の力が必要だったのじゃ。
 あなたは存在しなかった…。砂は存在しなかった…。他の秘宝を調べてみたが、わしの夢は失われた…。
 じゃが、4週間前、ダガーが失意の底にあったわしを奮起させた。ダガーが夢の中でささやいたのじゃよ。それに導かれ、わしはここへ、バビロンにやってきた。
 ああ、マハラジャはわしとは喜びを共にせんかった。わしへの協力を拒んだ。だから彼を殺し、わしはわしの王国を、わしの軍隊を手に入れた。何人であろうと、わしの野望の邪魔はさせん!

 王子は無謀にも、私を救うために武器を構え、突進しました。彼は今までの冒険から何も学んではいないようでした。それとも、多分、彼はあまりの恐怖と怒りに我を忘れてしまったのでしょう。
 これから起きること、そして私の最期を語りたいと思います……
[王子、突撃するが、鎖で阻まれる]

Mahasti: ここで何をしている!

王子: 大臣?!

大臣: これはこれは、王子ではありませんか。ようやくお帰りですか。あまりに帰りが遅いので、心配していたのですよ。
 (カイリーナを見る )わしは、あなたには何かある、と、そう信じておる。

[大臣、カイリーナを刺す]

王子: カイリーナ!

[カイリーナの体が時の砂となり、その場にいた者を巻き込み、モンスターへと変貌させる。王子の腕に巻きついた鎖が、王子の肉体と同化(?)する]

大臣:約束は実現した! わしは神となる!!

[大臣、ダガーで自らを刺す。その体が変貌していく。王子、大臣が落としたダガーを素早く拾い上げる。]

王子: 父上、私の過ちを許してください。

[城が崩れていく]

王子: 腕がッ! 何だ?! 何が起きている! 大臣、私に何をした!!

[王子、落ちて行く]

 全ての因果が巡りました。王子は、彼の最大の敵を復活させてしまったのです。より悪いことに、偶然とはいえ、王子は私をその敵の手に渡してしまいました。そして、バビロンは悪夢に包まれてしまったのです。それのみならず、王子自身もまた、砂によって魔物へと変えられるところでした。死は免れましたが、彼は彼の中に巣食う決して触れてはいけないものに触れてしまったのです…
黒王子: 起きな、王子。起きるんだ! もう、後戻りはできないぜ。

王子: 何だ? 誰かいるのか?

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[下水を進む]

黒王子: 気をつけな。板は滑るぜ。ほら、バランスを崩すな。
 いいぞ、いいぞ。ほら、下を見てみろ。
 おお! やつら、光が好きなようには見えねぇな。光の中に放り込んでやれ! 目がくらんだ隙にぶっ殺すんだ!

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[変化]

王子: 私はどうなった? まさか、砂の魔物になったのか?! まさか、ずっとこのままではないと思うが…。

黒王子: おめぇが望めば、ずっとこのままでもいられるぜ。

王子: 私はそんなことは望まない。

黒王子: いいや、おめぇは望むはずだ。

王子: なぜ、こうなった? 私の身に何が起こった…?

黒王子: 分かってんだろ? お前は時の砂に犯されているのさ。そのダガーのおかげか、時の砂や女王と過ごした時のおかげか…いずれにせよ、今のところはほとんど抵抗できているみてぇだがな。

王子: ほとんど?

黒王子: おめぇは“何か”に変化したのさ。“唯一特別の何か”って言った方がいいか? 今、おめぇは進化したのさ。より強く、より速く…

王子:より醜く。

黒王子:ハッハッハッハッハッハッ!

王子: 変化については分かった。だが、お前は誰だ?

黒王子: 気づいてねぇのか? 俺はおめぇの中に眠る潜在能力。おめぇがまだ叶えていない願望だ。俺はおめぇの一部なのさ。

王子: 私の中にいるのか?!

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[水に入ると元に戻る]

王子: 今分かった。水が邪悪を消し去ってくれる。なぜ隠していた。

黒王子: 何のことだ? やれやれ、俺の楽しみを台無しにしやがって。

 時の砂に触れたことで、王子の中の“何か”が目を覚ましたのです。奇妙で、狡猾で、暗い“何か”が…。
 “それ”は7年にもわたる逃避行の中で王子の心の中に芽生えました(The seven years spent on the run had embedded the Prince and made him hard. )。この重荷は、一方で王子を強くしましたが(This burden sustained his other half, gave it strength. )、王子を誘惑し続けました。闇が晴れるかのように。全てを失ったものに安らぎを与えるかのように(The Prince was tempted to do as it said, for it was a lightened darkness, offering comfort to a man who had just lost everything. )
 しかし、“彼”の狙いはどこにあるのでしょうか? なぜ、王子を助けたのでしょうか? ただ、時のみがそれを綴るでしょう…。
王子: バビロン…遠いな……。子供の頃、父上から聞いたことが……

黒王子: おい、ぼさっとしてるんじゃねぇ! 何か、起こってるぜ。

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[戦車を見つける]

黒王子: おめぇ、こいつを御せるのか?

[箱を運ぶ番人]

番人: 王子だ! 捕まえろ!

[番人、箱を放り出し、王子を追う。囚人が箱から出てくる]

黒王子: おい、慎重にやれよ。

[チャリオットレース]

黒王子: 右へ行け! 左だ! よくやった、王子。ま、運が良かっただけだろうがな。

[レース終了]

黒王子: 俺は感動してるよ。

王子: そうか、それは良かった。お前の意見など、大して役に立たなかったがな。

黒王子: おい、それがおめぇの命の恩人に対する感謝の仕方なのか?

王子: まず第一に、お前は私の命の恩人などではない。私の命を守ったのは私自身だ。第二に、お前は人間などではない。実体を持たないただの声。幽霊だ。そして、第三に、私はお前に助けなど求めていない。そんなものは必要ないからだ。

黒王子: 俺がおめぇの虚勢を笑って許してるうちに、敬意を示すことを覚えたほうが利口ってもんだぜ。

王子: お前は口を閉じているということを覚えたほうが利口というものだ。お前は私を混乱させる。私とお前はもはや運命共同体なのだからな。邪魔をするな。

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[変化]

黒王子: 上だ。上へ進め、王子! ぐずぐずするな! おめぇは玉座を取り戻さなきゃなんねぇんだ。

王子: やってる! お前は、私に羽が生えて空を飛んでいけるとでも思っているのか?

黒王子: ふぅ…。人ってのは、いつでも夢を見ることができるもんだぜ。


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[元に戻る。屋根の上を進む。矢が助けてくれる]

王子: 何だ? 誰かが助けてくれたのか? そこに誰かいるのか? 姿を見せてくれ! 礼を言いたい!

[返事なし]

王子: 妙だな。私は……いや、今、考えるのはよそう。

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[アリーナ]

王子: この景色は好きになれんな。

[Klompaを見る]

王子: あれは…かつては人だった。カイリーナが死んだとき、その場にいた。

[戦闘]

黒王子: 目だ、王子。見えなきゃ、奴はおめぇを殺せねぇ。

[Klompaにつかまれるた場合]

黒王子: おお! 奴はキスしてほしいようだぜ!!

[王子が投げられる]

黒王子: 信じらんねぇ(Guess not. )


[王子、目をつぶす]

黒王子: よくやった! 奴の視界を奪ったぜ。次は膝を着かせろ。

[Klompaを倒し、市民を解放する]

市民: 我々は自由だ! 助かったぞ!

[変化]

王子: 私から離れろ!!

[トンネルへ逃げ込む]

 王子は不必要な配慮に困惑し(embarrassed at the unwanted attention, )、アリーナから逃げました。彼は、彼が砂の魔物に変貌しつつあることを知られるのを恐れたのです。何かが彼をあざけりました。「あいつらはお前が助けに来てくれたんだと信じていたんだぜ?」
 民…彼の民…。彼らは死すべきところを救われました(The people, his people, now lived when they should have died. )。でも、それは偶然でした。王子の頭の中には、大臣への復讐しかなかったのです。恐らく、今、王子は、彼がかつて失われた彼の名誉以外の何かのために戦ったことを思い出しているでしょう。まだ断言はできませんが……。
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[元に戻り、王子はファラと出会う]

黒王子: おい、あそこを見てみな!

王子: ファラ!

ファラ: あなた、どうして私の名前を知ってるの?

王子: あ、えっと…。

黒王子: くく。なんて答えるんだ? 早く聞かせてくれよ。

王子: 物語を聞いたことがある。素晴らしい物語を。美しく…勇ましいインドの姫の物語だ。彼女はバビロンに旅し、大きな災いをもたらした邪悪な大臣を滅ぼした。

[ファラ、矢を番え、王子を狙う]

黒王子: 見な。彼女は俺たちを殺す気だぜ!

[矢は近付いてきた砂の魔物に命中]

ファラ: あなた、その程度の腕で、どうやって今まで生き延びてきたの? それじゃあね、見知らぬ人。

[ファラ、走り去る]

王子: 「見知らぬ人」だと? 彼女は、俺たちが昔一緒にいたことを覚えていないのか…。

黒王子: そりゃそうだ。そんな過去は存在しねぇからな! いいか、時の砂なんてねぇ。Azadもだ。おめぇは大臣を手に入れた代わりに少女を手放しちまったのさ(You get the Vizier but you lose the girl. )。ま、大したことじゃねぇ。あんな女がいねぇほうが、何かと上手くいくってもんだ。それとも、忘れちまったのか? 多分、後ろから矢が飛んできて、おめぇの記憶をごちゃごちゃにかき回すことだろうよ(Perhaps a few arrows in the back will help stir your memory! )

王子: 彼女を追わないと。

黒王子: いいとも(Fair enough. )。俺とお前ではあの女に何を欲するか、随分違うと思うがな。


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[路地を進む]

黒王子: おめぇ、まだあの女に惚れてるだろ? 認めな。

王子: 私とファラは多くの困難を共に乗り越えてきた。彼女が覚えていなくとも、私が忘れることなどない。

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[ファラに追いつく]

ファラ: 時の短剣? あなた、どこでそれを手に入れたの?

黒王子: さあ、行こう(Here we go again. )

王子: こ、これは大臣から手に入れた。

ファラ: あの反逆者から!? あいつは私の父を殺し、同胞を奴隷にし、私を投獄した。全ての神の名に誓って、あいつだけは許さない(And all in the name of becoming some kind of god. )

王子: 奴がどんなこともやりかねない男であることは分かっている。だが、約束する。奴を見つけ出し、奴が私の王国にしたことの罰を与える。必ずだ。

ファラ: あなた、シャラマンの息子なの? ペルシャの王子…?

王子: そして、君はマハラジャの娘だ。目的は同じだ。協力し合うべきだと思うが?

ファラ: そうね…あなたが追いつくことができたら、ね。

[ファラ、走り去る]

黒王子: やれやれ、俺はあの女がいちいち俺たちを試すのに疲れたよ。

王子: それが彼女なりのやり方というだけのことだ。彼女は貴重な味方だ。保証する。

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[さらに屋根の上を進む]

ファラ: あら、すごいじゃない。どうやら、あなたと一緒に行ったほうが賢明みたいね。結局、そのほうが多少は安全みたいだし。

王子: 遠回りしてくれて助かったよ。

ファラ: そのことを後悔させないでね。さ、大臣を探しましょ。

 ダハカを打ち破ってより、王子はゆっくりと本来の自分を取り戻していました。もはや、重圧も自暴自棄も彼の中から去りました。事態は予断を許しませんでしたが、今は希望がありました。悩める英雄によって、この地に平和が取り戻されるという希望が。
 しかし、大臣の軍隊が彼を狙っていました。そしてそれは時とともに、力を増していました…
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[王子とファラ、庭園へ。ファラ、Zervanを見る]

ファラ: 何? あれは何?

王子: 大臣だ。

ファラ: あいつに何があったの?

王子: 悪いことが起こったんだ。

黒王子: 素晴らしいことが起こったのさ!

[大臣、寺院の中へ]

王子: くそっ!

ファラ: あいつが行ってしまって幸運だったのよ。あなたにあいつは殺せなかったわ(You would never have stood a chance. )

王子: ああ、私が馬鹿だった。君の言うとおりだ。私たちは降伏し、この街から逃げ出すべきだ。ここから数週間行ったところに小さな美しい島がある。私たちが戻ってくるまでに時が全てを解決してくれるさ。

ファラ: 私を馬鹿にすることで自分を慰めているんだったら、そのまま続けて。あなたはあいつを殺すことばかりに固執して、何の考えもなしに突っ込もうとしたじゃない。死んだかもしれないのに…

王子: そうだな…。だが、今は寺院に入る方法を見つけないとな。時を無駄にできない。

黒王子: おい、さっきファラが言ったことを考えたんだが、彼女にも一理あるぜ。どうやって、大臣を殺す? 奴は不死身だぞ!

王子: ダガーが奴を不死身に変えた。だったら、ダガーで奴を殺すことができるはずだ。

黒王子: それが本当かどうか、確かめておく必要があると思うぜ。

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[王子とファラ、別の庭園へ]

ファラ: 美しい建物ね…。

王子: 父上が民への慈しみの象徴として、これらの建物を建てた。かつては、バビロンの町もこんな風だった…。

[装置を色々操作して、ファラを先へ進ませる]

ファラ: ねえ、もうちょっと手早くできなかったの?

王子: ここに降りてきて、自分でやってみるといい! はぁ、7年経っても相変わらずか…。

ファラ: 7年? 何、言ってるの?

王子: あ、いや、例え話だ(It’s… a figure of speech! )

ファラ: 変な人(There is something very odd about you. )

黒王子: あの女、何も分かっちゃいねぇ(She has no idea. )

王子: とりあえず、一歩前進だ(Ah, we are making progress. )

ファラ: ねえ、あの塔の中に鐘があるわ。多分、ロープを切断できるから、それを使ってドアのスイッチを押して。

王子: 私の運次第で、何かの罠が動き出すか、砂の魔物を呼び寄せるか、さもなくば世界の終わりを引き起こすだろうな!

ファラ: 何? 私の楽天主義に殺されるって言うの?

王子: 経験は希望的観測が失望につながるだけであるのを、私に教えてくれたよ。

[ファラは矢を放ち、ロープを切断にして、鐘を地面に落とす]

ファラ: どう? やったわよ(You did it. )

王子: ああ、やったな(We did it. )

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[叫び声が聞こえてくる]

ファラ: 待って! 中に、傷ついた人たちがいるわ。助けなきゃ。

黒王子: 今は「王子の時間」じゃねぇ。助けたけりゃ、後にしな(You can help all you want later. )

王子: 行け、ファラ。怪我をしたみたいだ(Tend to the wounded. )。大臣に対処したら、後を追う(I will meet up with you after I have dealt with the Vizier. )

 こうして、王子とファラは別れました。彼女は命を救おうとしました。彼は命を奪おうとしました…

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[その後、王子は鉄の扉の向こうに閉じ込められたファラを見つける]

ファラ: 大丈夫?

王子: ああ、奴は逃げた。そっちは? 民たちは?

ファラ: 死んでた。みんな、死んでいたわ…。でも、大臣を…あいつがなりつつある「何か」を見たわ。宮殿のほうへ飛んでいったわ。

王子: 次にどこへ行くべきか分かったわけだ。

ファラ: ええ。でも…えっと…その…私、動けないの。ね、何とかしてくれない?

黒王子: 俺は礼儀ってもんをわきまえてるが、おめぇはちっとばかし足りねぇみてぇだな。

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[王子、市街を抜け、門を開ける]

ファラ: ありがとう、王子。

王子: ああ。だが、問題は…今度は私が動けない、ということだ。

黒王子: まるで、どこかのご婦人のように、な。女のほうの問題を解決すると、今度は自分ってわけだ。

ファラ: じゃ、借りを返すわね(Allow me to return the favor then. )

[ファラ、矢を射て、王子を助ける]

王子: (黒王子に )何か言ったか?

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王子: ファラ、無事だといいが。

黒王子: おいおい、さっきから、あの女のことばかり考えてるじゃねぇか。その思考は必要なのか?

王子: 動揺してるように聞こえるぞ。嫉妬してるのか?

黒王子: はっ! おめぇは宮殿にたどり着くことだけを考えてりゃいいんだよ。

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[王子はファラと合流し、宮殿へ]

王子: ついに戻ってきた。

[女性の泣き声が聞こえる。生まれたばかりのように聞こえる]

ファラ: 今の、聞いた?

黒王子: わかってるな、「ノー」と答えるのが良策だぜ(If you know what’s good for you say no. )

王子: ファラ、私たちは大臣を追わなければならないんだぞ(Farah, we must press on. )

ファラ: 正気? 生まれたばかりの赤ん坊よ! 彼女は他にも誰かいたって言ってたわ(She said there were others. )

王子: 駄目だ! これ以上、時間を割けない!!

黒王子: いいぞ。こんな女、放っておいて先へ進もう。

ファラ: あれはあなたの民よ! あなたは彼らの王子なのよ!! それなのに、あなたはこんな場所に彼らを置き去りにしようというの!

王子: あの男は、私から全てを奪った! そして、今があの男を滅ぼすチャンスだ。君は私を手間取らせたいのか? あいつが私に何をしたか、忘れたのか!

ファラ: でも、私は…

王子: ファラ、君は罪悪感を感じている。奴は君の民が苦しむ姿を君に見せ、君は彼らを助けることができなかった。だが、君は悪くない。罪悪感で判断力を曇らせるな!

ファラ: 私は判断を曇らせるような人間じゃないわ。あなたは私が彼らを助けることを望まないかもしれないけど、私をとめることはできないわ!

[ファラ、怒って王子を置き去りにする]

王子: 私は大臣を殺し、全て終わらせる! 君が傷口に包帯を巻こうと駆けずり回っている間にな!

黒王子: いい罵声だ(Good riddens )。あの女はすぐに本題を忘れ、トラブルに首を突っ込んでは、無駄な手間を取らせてきた。ようやく、俺たちは…何だ?

[王子、心配して、ファラの去ったほうへ戻る]

王子: 嫌な予感がする。彼女をまた失うわけにはいかない!

[王子、ファラの後を追って走る]

黒王子: おいおいおいおい! 俺たちは気が合ったはずだろ!

王子: ファラ! どこだ、ファラ!

[王子、売春宿(Brothel )へ向かう。変化]

王子: こんな姿をファラに見せるわけにはいかん。

黒王子: なぜだ? 彼女が新しいおめぇに惚れちまうのが怖いのか?

王子: 黒焦げの皮膚、真っ赤な目、ただれた顔面。ああ、彼女はきっと一目ぼれするだろうさ。

[王子、売春宿(Brothel )に入る]

黒王子: これ(助けること )は必要なのか?

王子: ああ。

黒王子: 本当に?

王子: ああ、そうだ!

黒王子: 素晴らしい! 姫を救って、せいぜい時間を無駄にするんだな。俺は大臣が何をやってるか想像することしかできねぇからな。多分、奴は軍隊を大きくしてるか、無辜の市民を拷問してるか、さもなくば、次に征服する王国を決めてるんだろうな。

王子: 自分の使命を忘れてはいない!

黒王子: 俺を馬鹿にしてるのか? 俺はおめぇに期待してたんだぜ? 時の島では、おめぇは脇目も振らずに突き進んでたろうが。

王子: ああ、非常に利己的にな。

黒王子: ばかばかしい。おめぇは自分の身を守ることだけを考えればいい。それの何が悪い?

王子: 周りを見ろ! この破壊は、全て私のせいだ!

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[元に戻り、売春宿を出、ファラと会う]

王子: ファラ!

ファラ: 何か用?

王子: 君が正しかった。私は――

[短剣が彼らを襲う。Mahastiだ]

ファラ: ちょっと、話の邪魔をしないでくれる? 死にたいんだったら、順番を待つことね。

[Mahasti、走り去る]

王子: 番兵どもはほとんど始末した。あそこは安全だ。女性たちを助けてやってくれ。私は、あの女の相手をする。

[ファラは売春宿へ向かい、王子はMahastiと対峙する]

黒王子: 素晴らしい! おめぇはファラを守るために戻ってきたのに、彼女を戦いの渦中に送り返し、自分はあいつを追い掛け回すわけだ。「ああ! 私のヒーロー!」

王子: 売春宿がもう危険ではないことは、お前には分かっているはずだ。私と同じぐらいにな。だが、あの砂の魔物を殺さなければ、ファラが危ない。

[Mahastiと戦う。王子、変身]

王子: やめろ! 今は駄目だ!

[Mahasti、飛び回る]

黒王子: 俺にはよく分からんが、あの女の後を追ったほうがいいんじゃねぇのか(Have you considered…oh I don’t know…following her! )? あのアマ、おめぇを馬鹿にしてるんだぜ、王子。ぶっ殺せ!!

[戦い終盤]

Mahasti: お前は時を無駄に浪費した。Vizier様は私が捕まえた女どもを既に変化させた。せいぜい、あがくといい(You buy yourself hours at best! )

[Mahasti、死ぬ]

王子: 私がいくら砂を持っていても、誰もがそう言うだろうな。ああ、そうするとしよう(If I had some Sands for every time someone said that to me… Oh! I do. )

ファラ: 女性たちを助けてきたわ。もう安全よ。あなたは正しい判断をした…

[ファラ、黒王子状態の王子を見てぞっとする]

ファラ: 王子なの? あなた…あいつらの仲間なの…?

王子: 違う! ファラ、奴らとは似ても似つかない(Farah, this is not what it looks like! )

ファラ: あなたは砂の魔物よ! ずっと、だましてたのね!

王子: 私は砂に冒された。それは事実だが、私の心も魂も元のままだ! 信じてくれ!

[ファラ、王子を弓で狙う]

ファラ: 近寄らないで!

[ファラ、王子を殺せず、虚空を射て、走り去る]

黒王子: ふむ、おめぇは彼女に嘘をついた。

王子: いや、私はただ…

黒王子: いいや、おめぇは彼女をだました。

王子: だが、説明しても彼女は理解できなかっただろう。私がどんな気持ちだったか。(But she would not understand. What was I thinking? )

 哀れな王子…。王子の秘密は白日の下にさらされ、それを見たファラは激しく動揺しました。王子は初めから彼女に正直に話すこともできたかもしれません。隠し通そうとしたことの愚を悟るのが、あまりにも遅すぎたのです。
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[ファラの後を追う。元に戻る]

王子: まだそんな目で見るのか? 体は変化するが、それだけだ。

ファラ: どうして、あなたが信じれるというの? あなたのしたことは全て、あなたの言ってることと矛盾してるわ! 私は見たもの! あなたが戦いを切望したのを! あなたが死を引き起こすことを楽しんだのを! あなたはいつも血だらけの復讐の話をし、自分の民を冷然と無視したわ! 売春宿で私が女性の声を聞いたとき、あなたも私と同じぐらいはっきりとそれを聞いたはずよ。でも、あなたは顔を背けた!!

王子: だが、私は戻ってきた。戻ってきたはずだ! 君のために…。

ファラ: あなたは肩書きだけの王子。あなたの玉座を取り戻すといい。でも、知るべきよ。あなたは孤独だわ。

[ファラ、立ち去る。王子、追えず]

黒王子: 女性の扱いが上手いじゃねぇか。お前に殺されてしまわないものは、お前から十分遠くに逃げられない(Those you don’t get killed can’t get far enough away from you. )
 宮殿は近い。さあ、俺たちの道を行こうじゃねぇか(Let us now be on our way? )

 王子は最終的に、ファラの気持ちが彼から去ったという事実を受け入れざるを得ませんでした。そして、その責任は全て彼自身に帰するものでした。もしも、彼が彼女に真実を隠さなかったら、彼は同情を得、恐らく、また別の結果になったことでしょう。しかし、今やそれは遅きに失しました。にもかかわらず、あるいは、だからこそ、王子は彼がファラの以前の言動に影響を受けていたことに気づきました。それは彼に変化をもたらし、徐々にエゴからもたらされる無情な闇の要求に取って代わりつつありました(They had brought a change in him, slowly supplanting the dark demands of his ruthless alter ego. )
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[王子、運河へ]

黒王子: やけに静かじゃねぇか。何か心配事でもあんのか?

王子: 多分、彼女は正しい。

黒王子: おいおい、俺の知ってる王子はどこに行きやがった。おめぇは冷酷な戦士だ。感傷的になんてなるんじゃねぇ。

王子: できることならそうしたい(Were it something I could push aside I would. )

黒王子: やるんだな。おめぇが直面している最大の試練は、まだ目の前に横たわっているんだからな。

王子: 教えてくれ。戦士であるために、お前は何を信じているんだ?

黒王子: 戦いへの渇望。刃による解決。おめぇは違うのか?

王子: 出会ったばかりの頃に問われれば、同じことを言っただろうな。今は、どうかな…。

黒王子: ま、時が来れば思い出すさ。

王子: 私は、本当の戦士というのは、自分よりも大切な何かのために戦うものだと思う。

黒王子: 戦いによって身を立て、運を開こうとする者にとって、それは何だ(And what of the man who battles to better his own station, to improve his lot in life? )? しばしば、戦いは名を成すための唯一の手段だぜ。

王子: だが、それは人ではない。怪物だ。

黒王子: まあな…

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[運河を出ると、建物が燃えている。泣き声が聞こえてくる]

王子: 何が起きている? 中の民たちが危険だ。

[変化]

黒王子: ふぅん、便利だな。助けを求める無力な民で満ちた燃え盛る建物、か。

王子: どういう意味だ?

黒王子: 罠だろうなって言ってるのさ。

王子: ばかばかしい。

黒王子: マジで言ってるのか? もし俺が、おめぇに既に腹心二人を殺されて激怒し、おめぇを殺すことにご執心の砂の神様なら、直接的な方法はとらねぇな。例えば、おめぇの心に芽生えた哀れみの心を利用するぜ。

王子: 罠であろうとなかろうと、彼らは助けを必要としている。

黒王子: 何の得にもならねぇぞ。

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[元に戻る。燃える建物の中へ。罠に引っかかる。]

Axe: 愚かな王子よ。その燃える建物から出る方法は皆無ぞ。

黒王子: おめぇが民なんぞを助けようとした結果どうなったか、分かったか? おめぇは死んだ。

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[王子、神像を使って部屋を脱出。民を助ける]

老人: 我らがメシアよ! 今こそ、我はそなたに告げよう! まさに、そなたこそがペルシャの王子(I tell you now and it’s true, it is! The Prince of Persia! )!!

市民: ペルシャの王子だって…?
 信じられない…。
 王子がご帰還なさったぞ!!

王子: お前たちが無事でよかった。

[突然、Axeが現れ、市民を殺す。王子、彼を追い、チャリオットレース開始]

黒王子: おい、おめぇはもう十分英雄的行為を楽しんだだろ(I think you’re taking this hero business a bit too far. )? 既に奴らを救ってやったじゃねぇか。

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[Axeに飛びつき、中庭に落ちる。Bladeに後ろから蹴られる。]

王子:いいだろう。かかってこい。お前たちに正々堂々戦うことなど期待していなかったからな(Alright, I will admit, I was not expecting that. )

[戦闘。勝利。消耗しきった王子にAxeが最期の攻撃。矢が突き刺さる。]

ファラ: 戻ってきて正解だったみたいね。

王子: 助かったよ。

黒王子: まぐれ当たりだな(Lucky shot. )

ファラ: さあ、行きましょう。まだ先は長いわ(We should move on I’m sure more are on the way. )

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[ともに宮殿へ]

王子: 気をつけろ(Be on your guard. )

ファラ: いつものことよ(I always am. )

[王子、大地が震えるのを確認する]

王子: 走れ!

[あまりに多くの砂の魔物に包囲される]

老人: ペルシャの王子を称えよ! 史上最も偉大なる英雄よ! そなたはこの町の民を救った!! 今こそ、我らはその恩に報いましょうぞ!!

[市民たちが武器を手に出てきて、魔物と戦う]

王子: お前たちではあのバケモノどもは殺せない!

老人: ですが、足止めはできましょう。行きなされ、王子よ。大臣を探し、奴めを打ち滅ぼすのです。この悪夢を終わらせるのです。

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[宮殿へ。一旦ファラと離れ離れになるが、また合流する]

ファラ: すごい! こんなの話に聞いたことしかないわ(I have only heard of such marvels, but to see one up close… )。Azadにしかない装置じゃないの?

王子: これを使えば玉座のままでいける。だが、動かないようだな。何とか復旧してみよう。

ファラ: 一度、Azadに行ってみたいわ。

[王子、エレベーターを動かす]

王子: すまない…

ファラ: え?

王子: すまないと言ったんだ! 私はまだ一度も謝罪していない。私がやったこと、言ったこと、私が何者で…

ファラ: もう謝罪は受け入れたわ。私のほうこそ、言い過ぎたわ(It was wrong of me to accuse you of such terrible things. )

王子: いや、私は実際にひどいことをした…。

ファラ: それはみんな同じよ。違うのは、あなたはあなたを受け入れたということ。私はあなたが工房で成し遂げたことを見たし、あの老人の言葉を聴いたわ。あなたは立派な王子よ。

黒王子: 俺を殺す気か、クソアマ。

[エレベーターはゆっくり昇って行く]

黒王子: すぐそこだ。もうすぐ、事態が好転する。

王子: やけに、はしゃいでるじゃないか。

黒王子: いいや。単に、おめぇが使命を忘れちまっただけさ。おめぇが俺とこの楽しみを分かち合わないことからも、明らかじゃねぇか。

[王子、エレベーターの上でファラと合流]

ファラ: ねえ、あなた、何色が好きなの?

王子: 何…?

ファラ: もう一度言いましょうか?

王子: ……青だ。

黒王子: 青だって!? 俺とは好みが違うみてぇだな。

王子: 今の質問に何か意味があるのか?

ファラ: 意味のある会話しかしては駄目なの? 私、あなたのこと何も知らないから。

王子: なるほど。では、好きな食べ物は何だ?

ファラ: もちろん、ざくろよ。

王子: 私は好きではないな。

ファラ: どうして?

王子: あれは食い散らかってしまう。あれを上品に食べるのは無理だ。たった二つ三つの種のために大仕事だ。

ファラ: その苦労に見合うぐらい甘くて美味しいじゃない(But is it not the effort that makes them that much sweeter? )

黒王子: げぇっ、病気になっちまうぜ。

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[空中庭園に]

ファラ: この場所は…?

王子: ここは空中庭園の中心部だ。全てを整え、実行する生命の道具がここにはある(These are the instruments of life, regulating and running everything. )

[庭を通り抜ける]

ファラ: あなたのお父上はどのような方だったの?

王子: 優秀なお人だ。いや、偉大な方だ。強く、誠実で、親切で、寛大で…。

ファラ: どうしたの?

王子: 私は…いや、私たちは、というべきか…あまり上手くいっていなかったんだ。もう何年も前のことだ。私は若く、プライドばかり高く、おまけに臆病だった。父上は声をかけてくれたが、私は何も答えられなかった。私が望むのは、唯一つ。父上を探し出し、彼に謝罪をしたい。

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[ファラがZervanに捕まってしまう]

Zervan: ほら、ステップを間違えるな。私はお前たちが私の歓迎パーティに参加してくれて感動しているよ(I’m impressed you made it passed my little welcome party. )。本当さ。だが、同時に苛立ってもいるよ。なんせ、お前が私から最も強力な盟友を奪ったのだからな。受けた恩は返さねば不公平というものだろ?
ファラは素晴らしい女王になるだろう。神に見合った、な。まあ、ちょっと「改造」が必要ではあるがね。

王子: ファラを放せ!

Zervan: お前はまるで自分に発言権があるかのように振舞うのだな。お前に発言権などないというのにな! さあ、お父上に挨拶をしてくるといい!

[足元の橋が崩れ、王子は闇に落ちていく]

 王子は闇の底へ落ちていき、死がその顎を開けて彼を待っています(The Prince was cast to his death, into a pit of darkness. )。ファラを奪われ、大臣にも逃げられてしまいました。彼の旅は幸せな結末を迎えないという警告を、彼は受けていました。
 ああ、ですが、驚かないでください。「変化」が彼を守ったのです。時には、病がよい結果をもたらすことがあるのです。時には……

[変身し、王子は無事に着地する]

黒王子: おめぇはまたも俺たちの勝利を拒んだ。俺が何度、あの女を追うなと警告したと思う? おめぇが使命にもっと専念してりゃ、こんなことにはなってねぇはずだ!

王子: 黙れ! お前がすることといったら、私をののしり、侮辱することだけだ。お前が何を企んでいるかは知らないが、私はお前を信じないし、私は今までの私の行動を恥じる。

黒王子: 俺には高貴な志しかねぇよ。

王子: 私は今は「高貴」とはいかなるものかを知っている。お前は違う。

黒王子: おめぇは正し……(You self righteous bastar- )

王子: 私は随分と我慢してやっている。口を閉じていろ。私が使命に戻れるようにな。そうすれば、お前について何をすべきか分かるだろう(Then we shall see what to do about you. )

黒王子: そうだな。忘れてたぜ。誰に責任があるのかをな。

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[王子、井戸を潜り抜ける]

黒王子: おい、王子。俺たちは井戸の中にいる。だが、おめぇは水音を聞いたか? 水を見たか? 湿気を感じたか? 大臣の野郎が水を抜きやがったのさ。おめぇはいつまで健康を維持できる? 体をコントロールできる?
 チックタック、チックタック。
 喉が乾かねぇか? なあ、喉がからからじゃねぇか? おっと! もしかして邪魔だったか?
 時は貴重だ。時は儚い。時は生きてゆくうえで必要不可欠なものだ。何かお飲み物をお持ちしましょうか?

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[王子、真っ暗な部屋に。床に剣がある]

王子: これは父上の剣。だが、どうしてこんなところに……。

[シャラマンの亡骸を見つける]

黒王子: 見てみな! おめぇは本当にこいつが生きていると思ってたのか? おめぇはいろんな経験をしたが、それでもなお、希望を抱いていたのか(Even after everything you have experienced, still you hold you hope? )

王子: ああ、父上…。私が何をしたというのです(Oh Father, what have I done? )

黒王子: いまさら何を(What now then? )。砂をかき集め、時を思いっきり巻き戻してやりゃいいだろ? 時の島へ行き、こいつが無事な時までさかのぼることもできるだろうよ。道を見失った乙女に救いの手が差し伸べられるだろうよ(Perhaps rescue a damsel in distress along the way! )

王子: 駄目だ!
 お前は正しい。私は子供のように行動してきた。私は世間知らずで、横柄で、いつも自分の過ちを取り返すために考えなしに行動して、その結果を直視してこなかった。だが、それもここまでだ! 私は、私のしでかしたこととその結果を受け入れる(I accept what I have done, and all that it implies. )

[元に戻る。水がないのに]

黒王子: 何だこれは! 水なんてねぇはずだ! てめぇ、一体どうやって…

王子: もうお前には私を上回る力などない! 消えろ! お前が生まれた暗い闇の中に引っ込み、二度と私を煩わせるな!

黒王子: そう簡単にいくものか。

 そう、王子はついに、彼の半身である邪悪と対峙したのです(And so, the Prince’s eyes had finally been opened to the true nature of his corrupt half. )。それは、彼の耳元で囁く残酷で魅力的な声。我らが悩める英雄を悪の道へと誘うもの。
 しかし、いまや、その声は沈黙しました。王子の心は再び彼のものとなったのです。
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[井戸を抜け、最後の戦いへ]

 あなたは、なぜ、私がこのような事態を受け入れているのか、疑問に思っているかもしれません(You may wonder why I would let this come to pass. )。そう、多くの死がありましたし、まだ増えるでしょう(So many dead, and likely more to follow. )。帝国は灰燼に帰し、王子は重犯罪者のように狩られました。
 ですが、私には見えたのです。私の前に広がる全ての結果――その中の一つに希望が残っていることを(But I had seen the timeline, and of all the outcomes laid there before me, this one held the most promise of them all. )。王子には、事態を正す機会が残っているのです(For the Prince would have an opportunity to set things right. )
 さあ、ご自分の目で確かめてください。私の話が真実か否か…(Watch now; see the things of which I speak… )
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[円形の広場に上がる。ファラはつかまり、近くにZervanがいる]

Zervan: さて、私はどこに本を置いたのだったかな?

ファラ: Zervan?

Zervan: なんだい? 愛しい人よ。

ファラ: もし、私にもうチャンスがなかったら…

[ファラ、つばを吐きかける]

Zervan: この生意気な豚めが! せっかく永遠を与えてやろうというのに、これがお前の感謝のしるしか?! いいとも、お前を改造するのを楽しむこととしよう!

[Zervan、振り返って王子を見る]

Zervan: やあ、王子。まったく予想もしていなかった帰郷になっただろう(Not quite the homecoming you expected. )? 

[戦闘開始]

王子: 償いをしてもらうぞ。お前が私の同胞にしたことへのな。

Zervan: 彼らにしたこと? いいことをしてやったと思うのだがね?

王子: 彼らは愚かな魔物どもに囲まれているのだぞ!

Zervan: あれは進化へのささやかな犠牲だよ。

[王子、Zervanを圧倒し、Zervan、瓦礫をぐるぐる回す]

Zervan: お前はわが軍隊の精鋭に迎え入れてやろう(You would have made a fine addition to my army. )。だが、お前の死体はなるべく綺麗にしないとな。

[Zervanの翼を切り落とす]

Zervan: ダガーめ、約束が違うぞ!!

[王子、ダガーを大臣に突き立てる。大臣、砂になって爆発する。カイリーナがバリアをはって守る。砂の魔物は消滅し、市民の歓呼の声。]

カイリーナ: この世界は、私には何の意味もないわ。でも、どこか別の場所で、私は私の居場所を見つけるでしょう。あなたがあなたのいるべき場所を見つけたように…。

[カイリーナ、王子の腕の鎖を外す]

カイリーナ: あなたはもう自由よ、王子。あなたの旅はここで終わったのよ。

[カイリーナ、消える。何かが床に落ちる音]

ファラ: あれは何…?

[それは王冠。王子が拾い上げようとするが、別の腕がそれを拾い上げる]

黒王子: おめぇのものは全て、当然俺のもの。そう、俺様のものだ!

[王子、黒王子を切りつけるたびに、どんどんあたりが暗くなっていく]

黒王子: おめぇは何を期待してたんだ? 大臣を殺せば、俺も消えるとでも思っていたのか?
 何にも分かっちゃいねぇ。おめぇの怒り、おめぇの安いプライド、おめぇの利己心――それらが俺を生み出し、実体化させた。砂がなくとも、俺には力が残っている。大臣がいなくなった今、俺はおめぇの居場所を奪い、おめぇの国を統治することができる。おめぇにできることは何もねぇ。

[王子、過去の風景を旅する]

黒王子: おめぇは時間そのものを制御するという、史上最も偉大な王たりうる力を持っていた。おめぇが戦うはずだった全ての戦争! おめぇを称えて創られるはずだった全ての記念碑! おめぇが手に入れられるはずだった全ての美女! だが、おめぇは俺に負けたんだ、王子。おめぇは軟弱な好い奴に成り下がっちまった。おめぇに栄光を与えようという俺の試みは無視された。だから、俺は待った。おめぇを叩きのめす、まさにこの時を(My attempts to get you seek glory fell on deaf ears, so I bided my time, waiting for the right moment to strike! )
 おめぇはおめぇに与えられた「力」には値しない。世界最強の帝国を操れるという力にな! この力があれば、おめぇは世界を手中にできただろうよ。だが、王子、おめぇは無駄にしちまった! 俺だったら正しく使うことができる。だから、それは俺のものであるべきだ!

王子: お前はただの寄生虫だ! お前に価値などない!

黒王子: 俺に価値がないだと(But don’t I? Have I not earned it?! )? 俺がいなけりゃ、おめぇがここにいられると思っているのか? 何度、助けてやった? 何度、障害物を乗り越え、おめぇの敵をなぎ倒し、使命を思い出せてやった? おめぇのしたことといったら、父親やカイリーナ、ファラのことでめそめそ泣いたことだけじゃねぇか! 不幸に飲まれちまいな(How everything bad always happens to you! )! クソ野郎(Boo who Prince! )

王子: お前の言葉は中身がない。いつも中身がなかった。お前はただの自暴自棄で利己的な精神だ。

黒王子: もし、俺が利己的なら、王子、それはてめぇがそうだからだ。もし、俺が無情で無謀で不道徳なら、王子、それはてめぇがそうだからだ! 俺はそれ以外にはなれねぇ(I did not spin myself out of the ether; )。俺はどこかのイカれた大臣によって呼び出されたわけじゃねぇからな。俺はおめぇだ!

王子: 違う。私は道を誤ったが、私は過去の罪を償った。私は変わったのだ(I am no longer that person. )

黒王子: 季節は巡り、味は変わる。だが、人は…人ってやつは絶対に変わらねぇ。おめぇが勘違いしてるだけだ。
 俺と戦うな。剣を置いて、俺を抱きしめろ。
 俺を殺す必要があるのか? お前が血の海に沈めてきた他の敵のように? 刀を振るえ、王子! はっ! その剣がどれくらいよく斬れるか、俺もおめぇもよく知ってるはずだ(We’ve seen how well that works! )
 暴力的だな!! おめぇの怒りは俺の糧になるだけだぜ。おっと、こいつは聞いておかないとな。「あなたは本当に変わったんですか? 結局、私はまだあなたの目の前にこうして立っていますよ!」

[最終的に、ファラの寝室に。ファラは窓辺に立っている。部屋が変化し、ファラは階段の前に立っている]

ファラ: 王子! ここにいては駄目! ここは悲しみと残酷な意志にまみれているわ! この影を追っては駄目! 顔を背けて! 目を覚ますのよ! 私があなたを導くわ。

[ファラ、階段を駆け上がる。黒王子が哄笑しながら現れる。王子、ファラを追う]

黒王子: 待て! 何をする気だ! 俺を無視するんじゃねぇ! 俺を置き去りにするな!
 やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

[白い光と静寂に包まれる]

ファラ: 起きて! 起きてよ!

[王子、ゆっくりと目を開ける]

王子: ファラ?

ファラ: 大丈夫?

王子: ようやく…ようやく終わったようだ…。

[並んで夕日を見る。静寂]

ファラ: 王子? 私、まだ分からないことがあるの。ねえ、どうして私の名前を知っていたの?

[王子、微笑む]

王子: ほとんどの人は時は川のようだと思っている。一方向に向かって、時に早く、時にゆっくり流れていると。だが、私は時の顔を見た。だから、それが間違っていることを知っている。

[(イメージ )王子、雨のジャングルを駆け抜けて行く]

王子: 時は嵐の海。私が何者で、何故こんなことを言うのか、君は不思議に思うだろうな。おいで。君が聞いたこともない話を聞かせよう。

[終幕]






後書



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(訳注1)
 前作「ケンシノココロ」(Warrior Within)のエンディングのことを言ってます。
 「ケンシノココロ」のエンディングは2種類あって、「独りで帰ってくる〜〜女王は死に〜〜」は女王カイリーナを殺す普通エンドのことで、「私の運命から私を守ってくれた〜〜」はダハカを殺し女王カイリーナを守って一緒に島を出るちょっとHな真エンドのことです。
 つまり、この「二つの魂」は真エンドが前提ですよってことを言ってます。
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