「お引越」 〜携帯電話って便利〜

3月30日
 荷造りをする。もともと整理整頓するのが好きな性質なので、それなりに楽しい。捨てようか捨てまいか迷っていたものを、「えいっ!」と捨てるのもまた気持ち良い。
 しかし、埃と重い荷物に悩まされる。腰を痛める。
 NTTからの電話はない。まだ工事日も、新しい電話番号も分からない。31日に引越をすることは伝えてあるはずだが…?
 近くに住む弟に電話し、引越の際の立会いを頼む。不動産屋の引越先の鍵を引き渡しが3時までだが、引越業者が来るのはそれ以降だからだ。
3月31日
 午前中。
 荷造りの最終段階に入り、布団などを整理する。
 大学で事務手続をする。締切が過ぎていて、しかも昼休みのところを強引に手続をした私が悪いのだが、事務員の態度にむかつく。日頃から評判の悪い事務室だ。別に笑顔で応対しろとは言わないが、ねちねち嫌味を言う必要はないはずだ。

 昼。
 大家に挨拶する。雨が降り始める。原付で引越先まで移動するつもりだったが、電車に変更。

 PM3時。
 不動産屋に到着。5分ほど遅れたので、鍵を持った人は転居先のマンションの一室にいるといわれる。
 マンションに行き、鍵と「入居のしおり」をもらう。初めて部屋に入って少し戸惑う。意外に狭い

 PM4時。
 テレフォンカードを買い、公衆電話から昔の自分の部屋に電話をかける。NTTと引越業者から電話がかかってくるはずなので、電話だけは電源が入れてある。弟が出る。簡単な伝言を伝え、後を頼む。ちなみに私は携帯電話を持っていない。

 PM6時まで漫画喫茶で時間をつぶし、もう一度弟に電話をかける。どこからも電話すらないらしい。そろそろ引っ越し業者が来るはずだと話し、私もマンションに移動。途中、変なチラシが電柱に張ってあるのを見付ける。

【バイアグラ 4錠8回 ¥8,000/特急便有り/後払いOK】

 バイアグラって医薬品だから、医師の診察が必要なはず。……。さわらぬ神に祟りなし。
 マンションは水道と電気は通っていて、備え付けのエアコンがある。それ以外は、当然私が持ってきた着替えぐらいしかない。
 外も暗くなってきた。暇つぶし用に持ってきた『剣客商売』を読む。電気は通っているが、照明器具がないので、最初からついていた台所の電球のみが灯り。暗い。

 PM7時。
 腹が減ってきて、トイレ(大)もしたくなる。コンビニで弁当とトイレットペーパーを買ってくる。トイレットペーパーが“新居に初めて設置された「家具」”という栄光の座を得ることに。
 ついでに公衆電話から弟に電話をかける。話し中になっている。引越業者が来て回線を外したのだと推測する。
 マンションに戻り、台所の暗い灯りの下で、床の上に座ってわびしく弁当を食べる。寒いので、エアコンをつける。

 PM10時。
 引越業者はまだ来ない。持ってきた本も読み切ってしまったので、週刊誌を買いにコンビニへ。
 弟に電話をかける。電話の向こうで「ぷるるるるる」と呼出音が鳴る。驚く。しかし、弟は出ないし、留守電にも切り替わらない。よく分からないので、電話を切る。
 実家に電話をかける。9時半に弟から電話があり、引越業者が来たそうだ。だとすると、何故、先刻呼出音が鳴ったんだ?

 PM11時。
 引越業者が到着。住所が変更になったことを伝え忘れていたので、散々この場所を探し回った様子。このマンションは2つの棟があり、A棟のほうは変更前の住所で良かったのだが、私の住むB棟のほうは住所が変わっていたのだ。「携帯電話をお持ちでしたら良かったんですけどね」と言われる。全くそのとおりだと思う。
 搬入を開始。荷物を丁寧に扱ってくれる仕事の仕方に感動。引越業者とのトラブルは多いと聞くが、この引越社はそんなことはなさそうだ。
 しかし、問題点は2つあった。前の部屋よりも新しい部屋のほうが狭いのに、荷物の量は同じなのだ。よって、レイアウトに悩む。引越業者の人も一緒に考えてくれる。部屋の広さが最初から分かっていたら、持って来る荷物を少なくしたのだが……。

新築の罠・その3:「予め、部屋を見ることができない!」

 もう一つの問題点は、照明。壊れてしまったのか、つかない。暗い中での作業になる。

 AM0時。
 搬入終了。引越業者さんは帰る。私も疲れていたので、とりあえずベットだけつくって、寝る。

4月1日
 エイプリルフール。しかし、嘘をつく相手はいない。電話はあっても回線が繋がっていないので、使用不能なのだ。メールも送れない。しつこいようだが、私は携帯を持っていない。

 午前中。
 部屋の整理をする。きっちりと整理すると、棚などのスペースに余裕ができた。だが、狭い。私のくつろぐスペースがほとんどない。あと横に1.2倍あれば、ばっちりなのだが…。いや、贅沢は言うまい。
 汗をかいたので、シャワーを浴びようとする。風呂場を覗いてみると、汚い。細かいゴミが浴槽や洗い場に落ちている。風呂場だけではない。流し場も汚い。

新築の罠・その4:「新築だからと言って、きれいとはかぎらない!」

 とりあえず、簡単に掃除を済ませ、今度こそシャワーを浴びようとする。しかし、お湯が出ない。どうやらガス給湯器を使っているようだが…?
 「入居のしおり」を見る。電気と水道は事前にこちらで手続をとる必要はないようだが、ガスだけはそうではないらしい。そういうことを、入居した日に教えられても仕方ないと思うのは、私だけだろうか? 入居前に予め教えてくれれば、関西電力と水道局にわざわざ電話をするようなことはしなかったのに。(; ;)
 ともあれ、ガス給湯器のことは全く頭になかったので、ガスだけは何も手続をとっていなかった。従って絶対にお湯は出ない。だが、シャワーは浴びたい。…………。(←しばし悩む)
 春とはいえ、冷水シャワーはシャレにならないほどきつかった……。

 昼。
 公衆電話から116にかける。担当者の名前を忘れてしまっていたので(書いてあったメモは「最後にこちらからお電話します」と言われた時に捨てた)、手間取るが、どうにかなる。「ご連絡先はどうしましょう? 携帯をお持ちですか?」と言われる。携帯を持っていないので、実家にかけてもらうことに。
 電気屋に、洗濯機と冷蔵庫とアンテナコードを買いに行く。ついでに「使っているだけでマウスボールの埃をとってくれる」マウスパットを購入する。配達日時を確認し、店員さんに言われる。
「連絡先を教えていただけますか?」
「あ、回線工事がまだなんで、電話、通じないんですよ」
「でしたら、携帯のほうの番号を
「……」

 帰り道、公衆電話から大阪ガスに電話をかける。
 近くで火事があったらしく、消防車が走り回っている。そのサイレンの音のために、相手の声が聞こえにくい。相手に住所を教えている時のサイレンの音が一番うるさかった。ふと振り返ると、消防車がすぐ後ろに止まっていて、そこから飛び降りてきた消防士さんが、私のすぐ足元に合った消火槽にホースを差しこみ始めた。さすがにどきどきする。
 ガスの手続のほうは、とりあえず一番早い時間に、と言ったら、5時に係の者が行く、とのこと。意外なほどの迅速な対応にほっとする。しかし、ここでも連絡先を聞かれ、答えに困る。

 マンションに戻ると、入り口で引越ゴミを捨てに出て来た人とすれ違う。ふと床を見ると、その人のものらしいが、オートロックのドアが閉まらないようにドアの下に差し込んであった鍵を持ってくるのを忘れて、とっさにやったのだろうが、頭が良いのか悪いのか分からない。しかし、カッコ悪いのは確か。ドアのところでですれ違った女の子数人のグループが、それを見て笑っていた。近くに消火器が置いてあったのだから、それを置いて、閉まらないようにすれば良かったのに。まだまだ詰が甘いな、と思う。
 部屋に戻り、アンテナをテレビにつなぐ。ようやくテレビを見ることができるようになった。前の部屋では室内アンテナだったので画面が汚かったが、今度は共同アンテナなので画面がきれい。BSまで見えるそうだが、テレビのほうに受信機能がないので見られない。

 PM5時過ぎ。
 大阪ガスの人が来て、ガスの元栓を開けてくれる。本当はその場で「使用番号」を教えてくれて、口座引き落としの手続ができるそうだが、新築のために「使用番号」が分からず、無理。電話や引越業者に関してもそうだったが、新築ということでスムーズに手続が進まないことが多い。

新築の罠・その5:「諸手続が煩雑になることがある」

 PM7時。
 夕飯を食べに出たついでに、実家に電話をかける。NTTから電話があって、月曜日に電話をしてくれ、と言われたらしい(その日は土曜日だった)。

4月3日
 午前中。
 NTTに電話し、新しい電話番号を決める。PM3時くらいから使えるといわれる。

 昼。
 冷蔵庫と洗濯機が届く。ついでにまだ壊れたままの照明器具を見てもらうが、分からない、とのこと。




 こうして、それなりに住むための環境は整いましたが、この時ほど携帯電話の便利さを痛感したことはありません。本気で近くのモバイルショップで購入しようかと思いました。
 まあ、それは置いておいて、皆さんも、「新築」と言う甘美な響きに隠れた様々な罠にお気付きになったと思います。
 私が携帯電話を持っていなかったのと、私の行動が「とろくさかった」のもありますが、転居先が新築の場合は、新築でない場合よりも、色々と面倒くさいのは確か。手抜き工事も怖いですしね(幸い、私の部屋はそれほど目に付く部分はありませんが)。
 物事は何でもそうですが、新築のメリットばかりに目を向けては駄目だ、ということですね。
 私が今回の引越で得た最大の教訓は、「携帯電話は便利」と「不動産屋に期待するな」と「引越業者は“ありさんマークの引越社”を選べ」の3つですけどね。

 それにしても不動産屋……。不動産屋が全部やってくれるとは、もちろん思っていませんでしたけど――

の3つぐらいは期待しても良かったですよね? それとも、この程度のことも不動産屋の業務外なんですかね?

 でも、今回の引越で関係した人達が、皆良い人でよかったです。引越業者さんも、水道局と関西電力と大阪ガスの電話に出た人達も、ガスの元栓を開けに来てくれた人達も、皆良い人でした。特に、見積りに来た引越社の営業のSさんは本当に良い人でした。少しでも安くなるように、本当に親切に色々と手を尽くしてくださいました。
 そういう意味ではあまり不快な思いをすることはありませんでした。不動産屋とNTTのお姉ちゃんも、悪い人ではなかったです。悪い人ではなかったけど……

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