方陣のはなし(Q&A)

「はじめに」 前回は方陣の名称について述べました。「今回は方陣のはなし・方陣の世界」と題してムラシンの歩みを語ります。
その1‥‥‥Q 「方陣をはじめたのは」 1967年3月です。その頃、電気を勉強していて、電気の本に魔方陣がのっていた。それが契機です。 「電波技術」という月刊誌の中に電波クイズがあって、いろいろな難問や珍問が載っていてそれを毎号解くのが楽し かった。電気と魔方陣がからんだ問題があって、それで初めて「魔方陣」を知ったように憶えています。また、「電検」 という雑誌の付録に魔方陣が載っていて、今思えば極めて初歩的な事柄ですが、その解法の部分を丸暗記してしまって 友人に得意げになって魔方陣を作って見せたのを記憶してます。 その2‥‥‥Q 「今まで作った作品の数は」 1000を越えたくらいです。はじめの頃は作っても作品を保管するという考えは全くなかった。今は連番の番号をつけて 発表しています。1年で50〜120作、大きいのやら小さいのやらいろいろ作りますが全体的には大きいのが多いです。 その3‥‥‥Q 「小方陣を作らない理由は」 すぐに類似のものやランクアップのものが作られてしまい自分の作の価値がなくなり、影が薄くなってしまうからです。 変換やら改造やら拡大でバリエーションが多いのです。また、自分では新作だと思って完成したものが、よく調べてみると、 既に何10年も前に同一のものが作られていて、がっかりすることがあります。その点、54方陣とか72方陣とかの大方陣 となると研究者も少ないので合致したなどという事はめったにおきない。そのような心配が全くないのでそれで大きな方陣 を作るようになってしまいました。 その4‥‥‥Q 「一番大きな方陣は」 102方陣と202方陣の2作を作りました。それから502方陣の外囲を整定したことがあります。 その5‥‥‥Q 「2が半端になっているのは」 4の整数倍の方陣は考えることなく幾らでも大きな方陣を自動的に作れるのです。ところが4でわりきれない方陣となると 大方陣ではそう簡単には作れないのです。そこが狙いで、102方陣とか202方陣を作ったのです。1000方陣を作る より202方陣を作るほうが難しく時間もかかるのです。 その6‥‥‥Q 「ギネスブックでは吉岡保夫先生の1040方陣が世界一の記録となっていますね」 その通りです。立派な世界一の方陣です。しかし、この方陣も4の整数倍ですから作り易い方陣です。ところが 問題は「紙の大きさ」にあります。1マス1センチに数字を記入したとすれば10メートル40センチの正方形の用紙を 使わねば作ることはできません。作品を見たわけではありませんが、吉岡保夫先生は実にすごい事をやってしまったのです。 その7‥‥‥Q 「巨大方陣についてどのように考えればいいですか?」 誰でも1度は巨大方陣に憧れていて、自分なりの方法を発見していて、自分だけが大方陣を作れる者だと思い込みます。 大方陣を作れることが一番技術が上だとこの時は思っているのです。既にどのような巨大方陣が作られているかを知らない。 知ってがっかりすることが多いです。それでも一端足を踏み入れると方陣作りの興味を捨てることなく勉強することになる ものです。大方陣が難しい方陣だと勘違いしています。小方陣でも大方陣より困難な難度の高い優れた方陣が沢山存在して いるのです。やさしい方陣で大方陣作ってもただただ紙の無駄になるだけです。 他人の作法や作品や研究を知ることも大切です。そこでどのような方陣を作ればよいかという問題にぶつかる。この段階では まだあまり本も読んでいないし、方陣仲間もいない。方陣界のことは詳しくわからない。どのような作品が古典にあるのか、 どんな種類があるのか、高級方陣、低級方陣と言った質の判断、どのような作法があるのか、今自分がやっていることは既成 の事か新発見かといった問題、レベルの問題など全般的なことを知る必要が生じてきます。ここからが初めて 「方陣入門」ということです。このスタート時点で、方陣を志す人とやめてしまう人に分かれてしまいます。 その8‥‥‥Q 「どうしてやめてしまうのでしょうか?」 方陣の資料や文献は普通では殆どなかなか入手できないし、情報も書籍も少ない実状が原因です。入門者向きの本も あまりないし、本屋に殆ど置いてない。これが一番の理由です。今のようにインターネットもありませんでした。 そこでそういう人のために少しでもお役に立てばと信じて先陣をきってムラシンページを開設したのです。方陣関係 の本はカラーが少ないので、この点もわかりやすい色彩表現を豊富に使いました。 その9‥‥‥Q 「阿部楽方先生にはいつ頃から知り合ったのですか」 1988年1月です。もう13年にもなります。東京では2回会って一緒に食事しながら2時間も3時間も方陣談義に更った ことは今でも憶えています。手紙や作品、その他の資料の交換はお互い100回以上におよんでいます。また、昨年(2000年 2月)は先生の訪問があり、一泊してもらいました。いろいろ方陣談義に花が咲きました。阿部楽方先生はオールマイ ティーでまるで富士山です。何年かかっても全く我々は足元にも及びません。 その10‥‥‥Q 「阿部楽方先生の影響が強いとわかりましたが‥‥‥」 話した通りの仲ですから一番可愛がられているのはムラシン以外にはいないと確信してます。方陣やっている人知らない 人いないと思います。知らない人は方陣やっているとはいえない。それくらい世界的に有名なんです。皆が影響を受けて いるといっても過言ではありません。先生の方陣は難しいので独壇場なんです。「包括方陣」「へんげ方陣」「重複方陣」 「高順方陣」どれ1つとっても誰も追従できません。 その11‥‥‥Q 「ムラシン作はどれが印象深いのですか」 雑誌を創刊することになった「ダイヤ陣」の発見です。次が「ユニット親子陣」その次が「無限方陣」「減少方陣」 他にも「公差方陣」「連続定和+連続公差方陣」「循環方陣」を挙げることができます。最近は「完全包括方陣」が 主体の方陣作りとなりました。現在は前人未踏の「完全包括16方陣」と格闘してます。 その12‥‥‥Q 「定理や法則は発見したのですか?」 新しい方陣を1つ考え出してそれを作るたびにそれら一つ一つが新しい定理法則なくしては作品が完成しません。 まとめてはいませんが200くらいは持っていると思っています。 その13‥‥‥Q 「秘法というのはあるのですか」 たくさん作っても本当の意味の秘法というのは数えるほどしかないものです。せいぜい20くらいのものです。「ダイヤ」 には幾つか公表しました。発表できないものもあります。「悪魔の変換」などです。それでも秘密性の排除を主張して 幾つか「ムラシン変換シリーズ」を発表してました。「秘法を公表するは大家なり」などと暴言をはいてもいました。 「誰にでもできる方陣の作り方」を一貫して研究しておられる専門家は三重県の戸谷清一先生です。 このムラシンページにも紹介した「完全包括方陣の戸谷パターン」の作者です。先ほどの格言は実はムラシンではなく 戸谷清一先生のことなのです。先生には秘密というのがありません。いくらでも教えてくれます。 その14‥‥Q 「方陣の価値はどのような基準なのか?」 その時点で価値判断がつけられないことの方が多いです。自分で判らない時は阿部樂方先生に聞いた方が正確です。 それでも先生は10年20年たたなければ判らない事もあると言ってます。結局、基準なんてものはない。いろいろな分野 があり、好みも異なる。ある人が評価してくれても別の人はちっとも評価しないこともあるわけです。けれども アドバイスされたことそのものが答えだと今ではおもいます。抽象的ですのでかえって判らないかも知れません。 @作るに楽な方陣は時間の無駄。Aどこまでも深めることにより日の目を見ることができる。B後世に残らないような 作品はなるべく作らないように。 総合すると、誰も作れないような難しい方陣ということかな。レベルの高い方陣です。最先端の方陣です。勿論これは 最初からすぐできるというものでなく少しずつ作れるようになっていくのです。 例えば、連続数で作る方陣は易しいから、これからは不連続数で方陣を作った方がよいと言われても、それは一通り 方陣をたくさん作ってきた人のことで、いきなり不連続数方陣なんてものは作れません。 その15‥‥Q 「自分でよいと思ったものを作っているのですか?」 そうではなく、自分の研究分野のものを作っているにすぎません。長い間やっていると自然に自分の方向性が決まって しまうものです。人からこれを作れと言われても、なかなか受け入れようとしないほど自分の研究には愛着心がある ものです。そんなわけで集合方陣ばかり作ってました。完全包括方陣はごく最近になって始めたものです。 その16‥‥Q 「1日何時間研究してますか」 寝ても覚めてもやってます。暇があればやってます。休みの時は1日中やってることが殆どです。平均すると 10時間以上やってるかも知れません。 その17‥‥Q 「数多くの世界初方陣を作っているけど、発想や着想はどこから湧くの?」 ステップバイステップ方式をとっているだけです。急には上達しませんから。アイディアは普段メモしておきます。 このメモの書き溜めが意外と次回作のヒントになります。とにかく常にいろいろな種類のものを作ろうと心掛けて います。そこに重点置きます。自分流では1つ生み出すと立て続けに出てくるものです。また、易しい方陣の中にまだ誰も 作っていない方陣があります。それを見つけて作るのは誰でも狙えます。 その18‥‥Q 「何故難しい方陣を作るのか?」 あまり意識しなくてもやっているうちにだんだんと難しいのが作れるようになってきたのだと思います。先ほど述べたように 師のアドバイスのとおりです。@良く考えて価値あるものを作ること。A世界に通用するものをつくること。B後世に残る ようなものを作ること。B研究の終わりが即ち研究のはじめという態度でどこまでも深めていく事。等です。結局難度の高い ものを要求されます。しかし今までレベル的に作れなかったのです。今は、いくら真似ても作ることのできない方陣を作る のが目標となりました。 その19‥‥Q 「いくら真似ても作ることのできない方陣とはどのような方陣ですか」 現在具体的に3作あります。そのうち2作はムラシンページで公開してますから実物をみて下さい。いくら真似ても絶対に作る ことのできない方陣の第1号は、完全包括方陣Iに出てます。作品番号ムラシンNo.1445の完全包括45方陣です。 第2号は完全包括方陣Jに出てます。作品番号ムラシンNo.1448の完全包括51方陣です。その理由も書いてありますので そこのところを読んでください。 その20‥‥Q 「21世紀の方陣の動向は」 ゆっくり流れています。連続数中心の方陣からだんだん不連続数を中心としたものへ変わろうとする流れがあります。 不連続数を中心としたものはレベルが高いからです。公差方陣、包括方陣、完全包括方陣、へんげ方陣が主流の時代と なるのも近いことでしょう。 その21‥‥Q 「公差方陣はどのような価値があるの?」 いろいろな宝が隠されている点でこれだけでたいへんな価値がある。多機能、配列美、不連続数、難度等を盛り込むことが できるので発展性の強いことです。包括方陣、完全包括方陣、へんげ方陣にも深く関わりをもつことが解ってきました。 だからこそもっと研究されるべき方陣と思っています。 その22‥‥Q 「アイディア方陣ってどんな方陣?」 おもしろ方陣シリーズを作っていた時があります。その時、文字方陣、メッセージ方陣、麻雀方陣、百人一首方陣、迷路方陣等 いろいろ作りました。これらの総称です。変わったものでは、ドラゴンボールZの方陣というのも作りました。 その23‥‥Q 「不連続数方陣ってどうような方陣?」 方陣を作る時、連続数でつくるのがごく一般的で当たり前ですが、公差陣のように、例えばd2の2,4,6,8,10,‥‥というふう な数列を考え、それで1ブロックの方陣を作り、残りの1,3,5,7,9,11,‥‥という数列で別のブロックの方陣を作り、全体で 連続数となっている用い方をするのがルールです。包括方陣などの難しい方陣はこのような数列で構成されています。 その24‥‥Q 「方陣交友で何か珍しい話でもありますか?」 豊富にあります。三重県の戸谷清一先生から中国の香扇を送って戴き感激しました。松本市の久保田郷夫さんは山本行雄先生の カラー方陣の手拭を送ってくださいました。山本行雄先生は完全方陣の研究で有名人でしたので当時はたいへん感激しました。 その後、先生より手紙と作品と資料と写真までも戴きとても嬉しかったです。大阪の田村三郎先生からは、サイン入りの新刊の、 数学パズルランドをおくって下さり、これまた思ってもいなかっただけに大感激でした。先生は神戸大学の名誉教授をしておら れる立派なかたであり、とても多忙なのでこちらの相手をしている暇などないと思い込んでいましたから‥‥。 それから茨城県の横瀬杜美也先生より手紙と原稿が寄せられました。「横瀬バシェー変換」で有名なかたです。手紙には主として 理論的なことを研究していると書いてありました。原稿は学問的で立派過ぎて難しく、精度の高いものでした。ただ 方陣を作ってさえいればいいわたくしのごとき者には、一生かかっても書けない論文でした。 山梨県の、ギネスの吉岡保夫先生には立体の「魔立陣」の論文をいただきました。 宇治市の荒井三郎さんは5方陣の研究をまとめた書籍を送ってくださいました。しかし平成7年転居先不明となりました。 阿部楽方先生は「誕生日入りの切手額」「幸せの6角形額」、その他たくさんの資料を戴いています。前述しましたが昨年 (2000年2月)に一泊して行かれましたので方陣談義に花が咲き楽しい1日を過ごしました。 その25‥‥Q 「コンピュータでも解けない方陣ってどんな方陣、そんなのあるの?」 コンピュータなら何でも出来てしまうと思いがちですが、実際はそうではありません。プログラムを組んで動かすのは人です。 ですから、複雑でアルゴリズムも解らぬ難しい方陣はソフトが作れないのでコンピュータは動いてくれません。 「いくら真似ても作れない方陣」のことです。先ほど述べた通りです。これこそが世界に通用する方陣だと思っています。 これを現在のムラシンの「座右の銘」にして、方陣を工夫しながら作っている今日この頃です。 やさしいものから入っていくうちに、知らず知らずのうちに不思議な数の世界に浸ってしまうものです。自分はコンピュータ でも解けないことをやっていると思うと1つの優越感が湧いてくるのです。これが何よりの励みとなります。 知られざる数の世界‥‥これが魅力ある方陣の世界なのです。そこには、あなたが落ち込む落とし穴があります。それに ふさわしいあなたが、いつの日か虜になって知られざる数の世界をさまよって懸命になって魔方陣を作っていることでしょう。 その26‥‥Q 「方陣の七不思議ってどんな不思議?」 不思議と言わなくても方陣は元来不思議なものです。それほど不思議に思っていないふだんの自分でも時として唖然として 声も出なくなるほどの不思議に驚愕することがあります。やはり、方陣を作っているといろいろな不思議に遭遇するのです。 それを集めたのが「方陣の七不思議」です。この初心者コーナにも別章で紹介しましょう。ここでは1つだけ挙げてみます。 昨年ムラシンは「無冠のメダル」を貰いました。そのことを話してみたいとおもいます。それは「宇宙からの贈り物」なのだ と解釈しています。それは2000年8月23日のことです。一連の完全包括方陣を作っていた時のことです。49方陣が完成してデータ をまとめていると、大きな方陣なので各行の和をそれぞれ正確に表示しなければなりません。それを書き終わったその時、 はっ!としたと同時に努力が報われたのです。各方陣数の各1行の和は、なんと実に不思議な数が並んでいるでわありませんか。 それぞれの1行の和の中にそれぞれの方陣数を表す数が含まれているのです。しかも末位2桁にきちんとその数があるのです。 しばらくの間、呆然としてきちんと並んだその数に見惚れていました。 こんなことはいまだかって1度もなかったことだからです。しかもこれは、完全包括方陣だからこそ意味のあることで それを作った者こそふさわしい意義のある贈り物であったとするのが1番良いとおもいました。 「末位2桁がそれぞれの方陣数を表す1行の和」 その後、2000年8月29日のことです。完全包括51方陣が完成したのです。完全包括方陣を作ったものだけに与えられる 贈り物を2回も貰ったのです。 作品番号ムラシンNo.1447の完全包括49方陣 作品番号ムラシンNo.1448の完全包括51方陣 この51方陣の方はムラシンの「完全包括方陣J」に公開してありますので見てください。データは何気なく書いてありますが 関心をもって見て頂くとすぐにわかります。各行和の一覧データです。どの末位2桁もその方陣数を表して並んでいる、整然と 並んでいるのがおわかりになる筈です。こんな事が現実に作った方陣の中に何と2作品も事実あるのです。これがムラシンが 宇宙、知られざる数の大宇宙から貰った勲章なのです。何故ならばこれらの数は完全包括49方陣と完全包括51方陣でなければ 何の意味もないからです。完成させたムラシンだけに与えられた贈り物なのです。更にその不思議は誰かが他に別の方陣数の 完全包括方陣を作ったにしろこの不思議な現象は決して起きることはあり得ない事です。ですから49方陣と51方陣でめぐり あった未知との遭遇をこの不思議を大切に心に刻んでおきたいのです。 こんな整数の世界が方陣の中に事実存在していることを敢えて世界の数学者に知らせてやりたい気持ちでいっぱいです。 この不思議を自分の目でしかと確かめたあなたは魅力ある数の世界にいつの日か虜になって懸命になって 魔方陣を作っていることでしょう。