期待値について

いままでギャンブラーの破産問題など、ギャンブルは運では絶対勝てないという話をしてきました。しかし競艇は運だけを競うゲームではありません。確かに競艇は主催者が有利なゲームであり、全体でみれば必ずお客が損をします。しかし必要以上に損する人もいれば、その反対に勝つ人もいます。ではどのようにすれば普通の人以上に勝つことが出来るのでしょうか。

世の中にはいろいろな予想法がありますが、だいたいほとんどが当たりそうな舟券を予想するというものです。それではプロが予想している、スポーツ新聞や専門誌の買い目を買っていれば、平均以上に勝つことが出来るのでしょうか。
競艇に関しては資料がないのでわかりませんが、競馬では「スポーツ紙で当てる競馬」という本に、スポーツ新聞の回収率について載っていました。以下の結果は98年10月から99年7月までの重賞レースについてのものです。

A紙 78.9%
B紙 77.6%
C紙 76.6%
D紙 73.9%
E紙 66.0%
F紙 57.6%

このようにプロが予想しているにも関わらず、平均(75%)並か平均以上負けています。これはいったい何を意味するのでしょうか。
ここで安易にプロにもかかわらず、予想する能力が一般の人並かそれ以下のためにこのような結果になったと、言ってしまうことは出来ません。仮にもプロである以上、予想する能力が一般の人より劣っているなどというのは考えられません。
ここで考えられるのは、この記者たちが、確かによく当たる馬券を予想したが、その馬券の価値に見合った売れ方をしたか、必要以上に売れてしまった馬券を、予想してしまったということです。一般の人は新聞に書いてあることをもとに馬券を買う場合が多いので、その新聞の買い目が適当もしくは必要以上に売れてしまうというのは、十分に考えられます。

さて、それではなぜよく当たる予想をしたにもかかわらず、その目が適当かそれ以上売れてしまうと、平均並か平均以上負けてしまうのでしょうか。それには期待値という概念を理解すればわかります。

話をわかりやすくするために、コイン投げで考えていきましょう。コインが表か裏かを当て、当たったら200円もらえるゲームがあったとします。表か裏の出る確率は1/2です。ここで表に賭けることにします。期待値は賞金(200円)とそれをもらう確率(1/2)を掛けることによって求めることができます。ここでの期待値は200×(1/2)で100円になります。このゲームの1回の試行で実際に起こることは、コインの表が出れば200円もらい、裏が出れば何ももらわないということです。どの場合でも実際に100円もらうことは出来ません。
しかしこのゲームを何回も(例えばnが大きい数で2n回)行うとき、投げた回数の半分ぐらい(約n回)は200円をもらうはずです。そして残りの約半分(同じく約n回)は何ももらいません。したがって、投げるごとにもらえると期待できる平均額は、200円の約n倍と、ゼロの約n倍の平均額になります。この平均は

(200+200+・・・・+200+0+0+・・・・+0)/(2n)

円であり、これから

(n×200)/(2n)=100

よって約100円であるということがわかります。
つまり期待値とは、長い試行系列において得るであろう平均金額の妥当な推定値となります。

それでは先ほどの、なぜ必要以上に売れてしまった買い目を買っていると平均以上に負けてしまうかという問題を考えていきましょう。競艇や競馬である目が必要以上に売れるとどうなるかというと、もちろんオッズが下がりますが、ただオッズが下がるというだけでなく、その目の期待値も下がるということになります。例えば1/10の確率で出る目があったとしましょう。しかしその目のオッズが600円だったとします。そうすると期待値は
600×(1/10)=60円になります。期待値が60円の舟券や馬券ばかり買っているとどうなるかというと、回収率は60%前後になります。このようにその目の出る確率に対してオッズが低い(期待値の低い)目ばかり買っていると平均以上に負けることになります。

さて、そうすると競艇で平均以上に勝つためには、いかに当たりそうな舟券を買うかということではなく、いかに期待値の高い舟券を買うかというのが問題になります。期待値はその目のオッズと確率を掛けることによって求めることが出来ます。競艇ではオッズはわかっているので、確率さえわかれば期待値を求めることが出来ます。なので当たりそうな舟券を予想するのではなく、確率を予想するというのがポイントになります。確率を予想するといってもピンとこないかもしれませんが、妥当なオッズを予想するというのならある程度検討がつくと思います。(ちなみに「競艇解析」は確率を予想するソフトです。)

75を確率で割ると期待値が75円のオッズを求めることが出来ます。これが妥当なオッズになります。もし実際のオッズが妥当なオッズよりも安いなら、それは期待値が75円以下になります。また100を確率で割ると期待値が100円のオッズを求めることが出来るので、妥当なオッズ×(100/75)が期待値100円以上のオッズになります。
なので実際のオッズが妥当なオッズの1.333倍ついていたなら、お買い得な舟券になります。平均以上に勝つためにはまず妥当なオッズを予想して、次に実際のオッズと比べて、実際のオッズが妥当なオッズより1.333倍高ければ買うようにすればよいでしょう。

期待値はオッズと確率を掛けることによって求めることが出来るので、オッズを見ないで舟券を買うというのは、賢い買い方とはいえないでしょう。オッズを気にしないで買っていると結局は回収率は75%前後に落ち着きます。
よくオッズを見ると最初の予想と変わってしまうのでよくないという話を聞きますが、たしかによくない場合もあります。それは本命党の人が自分が買おうと思っていた舟券のオッズが思ったより高くなっていたとき(期待値が高い)、これは来ないのではないかと思い、逆に自分が本命だと思っていなかった目が予想以上に売れていて(期待値が低い)、これは来るのではないかと思って買ってしまうことです。ここで注意しなければならないのは、単にオッズが主観的に高い安いという問題ではなくて、その舟券の価値(確率)に対しての高い安いというものです。

競艇では25%の控除があるので、期待値の平均は75円になります。もし期待値の高そうな(期待値100円以上の)舟券がなさそうなら、そのレースは買わないというのが賢明な選択になります。