The Man at The Battlefield

耳元で羽音がし、しわがれた鳴き声が聞こえる。
目を開けると、聖堂のホールを見下ろせる。
上からステンドグラスの光が鈍く落ちてくる。

これからあいつがやってくる。俺と同じ血の流れるあの男。
自覚しているかは知らないが、嬉々としてやってくる。

俺と殺し合いを楽しむために。

あいつはたぶん笑っている。瞳に殺気を宿して。
血を見ない生き方なんて退屈なだけだ。そんな生き方は豚と同じだ。
おまえはそのことを知っている。だから俺を探して殺しに来る。
俺を殺したいか。殺したいはずだ。殺して俺の血を思う存分浴びたいだろう。
俺もおまえと同じだ。おまえを殺したい、おまえの血が流れるのを見たい。
女を寝取った、組織を抜けた、そんなのはただのきっかけに過ぎない。
俺達は命がけの戦いの中でしか存在価値を見いだせない。
麻薬にも似た強烈な刺激だ。

もうすぐおまえがやってくる。怠惰な夢の現実からこの世界に帰ってくる。
おまえの生きる場所は戦いの中にしかない。
殺し合いのあの刺激を、興奮を、歓喜を、思う存分味わせてやる。
俺とおまえは同じ生き物だ。

天国を追い出された天使は、悪魔になるしかないんだ。
そうだろう?スパイク。

作/亜巳

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