我輩は犬である

 我輩は犬である。名前はアイン。
 物心がついた時には、白衣の人間達に囲まれて、何だかの実験を施されていた。お陰で僕の頭は非常によくなっていた。

 ある日、アフロヘアの人間が僕をさらい、亀を頭に乗せた人間に売り付けようとしたのだ。とっさに逃げて飛び込んだ先は、もじゃもじゃ頭のスパイクとハゲ頭のジェットが乗るビバップ号だった。
 あれから僕はジェットから首輪をもらい、ビバップ号のペットとして暮らすようになった。そこにはブリッジなどでフワフワと空中遊泳できるし、ゴハンも食べられる。僕にとっては幸せな暮らしだった。

 そんなある日、一人の人間が居座ってきた。名前はフェイという、人間。あの人間ときたら、大胆不敵で自分中心、とにかく図太くて、金にはうるさい。ついこの間、冷蔵庫を開けて、たった一つの僕のゴハンをためらわずに食べてしまった。
「働かざる者、食うべからず。自分のエサは自分で確保しなさい」
 と冷たく言い放した。僕は睨みつけると、
「何よ。女は生きてるだけでエライんだから」
 と自分の行動を正当化する。まったくムカつく。

 だけど、僕はウィルシュ・コーギー・ペンブロークという犬。抗議をしたくても、金には困っているビバップ号の人間達に見世物小屋に売られるに決まっているので、わざとバカな犬のフリをしなくてはならない。最近になっては、エドという人間の子供と共に行動しているうちに、どこが芝居なのか、地なのか、わからなくなってしまった。

 今、僕はエドの後を追うように、ビバップ号を離れた。自分勝手な人間達のことには未練がないけど、僕は自分の意志で決めたことだ。エドと一緒にいれば、そのうち何とかなるんだろう。果てしない宇宙の片すみで・・・。

  SEE YOU DOG AGEIN


作/平安調美人

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