| 農耕機械メーカーの老舗であったグラ−スが、本格的な自動車産業に進出した1955年から、BMWに吸収され、その名前が消える1969年までほとんど変わらず生産されてきたのが今回のTシリーズ、リムジン(サルーン)である。 1954年、グラ−スの4輪車進出がアナウンスされた年である。その年の暮れにはシャシーの全貌が明らかになる。そこには、大人二人、子供二人のための空間が確保され、中央にはセンタートンネル風の造型がなされていた。 翌年、250ccのエンジンを搭載したゴッゴモビル・T250がリリースされた。翌1956年には、排気量が300ccにされ、イギリス等への輸出も始められる。 このゴッゴモビル達は、バイエルンのディンゴルフィングと言う町に、新しく作られた工場で生産された。ゴッゴモビルはグラ−スが以前から手掛けていたスクーターシリーズからの派生モデルと言う位置付けであり、ホイールもスクーターのものを流用していた。 |
| 2ドアセダンボディの後部に搭載される、空冷300ccエンジンは、レブこそたいした事はないが、必要にして十分以上のパワーを絞り出した。そのエンジンは、軽量なボディを驚くほどの速さで走らせる。パワーユニットは、トランスミッションやデファレンシャルと共に一つのユニットにまとめられたため、整備性は非常に高かったのも特長だ。 組み合わされるサスペンションは4輪とも、独立式のスイングアクスルである。その剛性はなかなかのもので、見かけに似合わぬ高級さを感じさせた。 |
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![]() ゴッゴモビルの心臓部 背後には変わった形のエグゾ−ストが 備わる。 |
室内空間は、小さなボディながらボクシーなスタイルと相まって、広い室内を実現していた。我慢すれば、大人もリアシートに座れるほどだと言う。言うまでもなく、フロントシートは十分な空間を確保しており、運転時のホールド性もしっかりしている。リアシートへアクセスするには、助手席のシートバックを前に倒すしかない。運転席は固定されているのである。 トランクスペースはほぼ無い。2人までの乗車なら、リアシートにかなりたくさんの荷物を積む事ができるが、そこに置けない場合は手荷物の置き場所にさえ困る。ノーズの中にも空間はあるが、そこはほとんどがスペアタイアに占領されている。荷物をたくさん積みたい場合は、オプションで用意されたルーフキャリアを利用するしかない。しかし、少数が作られたオープンルーフモデルでは、当然ながら利用できない。 |
| この後、Tシリーズには400ccエンジンのT400が追加される。だが、その時既にマイクロカーブームは下降に向かっていた。いかに合理的に作られたクルマでも、人間の欲望には勝てなかったと言う事なのだろうか。 |