虚の縁で

 ある狂信者は言った----この地球(ほし)は滅ぶ。

 「正義の味方」の国があった。ある小さな国に攻撃を始めた。強力な爆弾を作っているから、と。悪者は早急に抹殺するのだ、と。
 飛行機が飛んだ。爆弾を落とした。下界に灼(あつ)い風が吹いた。木が消えた。建物が崩れた。人が死んだ。残ったのは廃物(ゴミ)ばかり。

 小さな国はすぐにやられた。しかし戦争は終わらない。周りの国が助けに来た。「正義の味方」の国も助けを呼んだ。

 軍隊のない国があった。しかし国民を兵隊にして軍隊をつくり、すぐ戦地に送った。また戦争になった。

 「正義の味方」の国と、軍隊のなかった国の飛行機が飛んだ。爆弾を落とした。下界に灼い風が吹いた。木が吹っ飛んだ。建物も吹っ飛んだ。人も吹っ飛んだ。残ったのは、わずかな廃物と誰かの哀しみ。

 まだ戦争は終わらない。下界に堕(お)ちる鉄の塊。空を裂くプロペラの平たい音。そして、吹っ飛ぶ。

 「正義の味方」の国の決断。あの爆弾を使う。強力な----核-----爆弾。「正義の味方」が、この爆弾を一番多く持っていた。
 爆撃は驚くほど大規模であっけなかった。膨大な数の鉄の風船が廃墟の上空を舞った。そして。

 地球(ほし)は爆撃に耐えなかった。

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