IT業界と職業訓練



失業者の訓練

失業対策の一環として、職業訓練がある。国で行っているものとして、公共職業安定所(ハローワーク)の職業訓練がある。ご存知ない方も居られるだろうが、職安は国の機関であり、その職員は国家公民なのだ。

また、研修費の一部(殆どともいえる)を国が補助する制度もあるし、もちろん、独学や学校で勉強している人もいるだろう。

時折テレビで見かけるものに、失業して、コンピュータ関係に就きたいから、コンピュータを勉強しているという人がいる。

もちろん、間違っていないが、勉強は気休め程度で、情報処理試験も第2種というのは、コンピュータの常識問題で、高校卒業程度の学力を設定したものなのである。自動車免許の学科試験と変わらないものに過ぎない。

覚える勉強で試験は通ってしまうが、それでは仕事はできない。

自分で課題を設定するとき、実現不可能と思われるものでなければならない。その時の実力で実現できるものでは勉強にはならないのである。実際の仕事では、今までにないものを作ることばかりである。もし、もうあるのなら作る必要はないからだ。新しいものを作るには、どう実現するかを考えることが中心となる。分からないことは調べ、実現するための工夫をする。その訓練なくして、コンピュータを勉強したとは言えない。

パソコンの使い方やワープロ程度なら、小学生でも今は出来るのである。

考える訓練、知らないことを調べて覚える訓練、それらを応用する訓練が必要なのである。



前職が天職

コンピュータ業界でも失業者が出る。

柏崎市には新潟日本電気という会社があった。設立当時はプリンタを主に製造していたが、その後パソコンも製造していた。もちろん、NECパソコンである。

その工場が閉鎖となり、他のメーカが買い取った。数百人の失業者が出た。

それ以前にも大きな工場が閉鎖されたことがある。リストラで工場を減らすのはよくあることである。柏崎の工場が閉鎖されることが多いように感じるのは、原発があるためと思われる。社長など上層部は本社から転勤の場合が多いが、わざわざ危険な地域に赴任するのは嫌だろうからだ。

コンピュータ関係の失業者は、他業種の失業者よりコンピュータに詳しいのは当然である。そういう人と競うことになるのである。

それには前職の知識が重要になる。

天職という言葉があるが、筆者の考えでは、最初にある程度の期間就いた職業が天職になるのだと思う。ある程度とは、その職業で十分な知識と実力を得たことを言い、少なくとも3年は必要である。できれば10年は欲しい。

これは板前(調理師)など、どんな仕事でも変わらない定理である。

その知識とコンピュータの知識が複合した時が有利なのである。

なお、そうなる前、半年や1年くらいで辞めた人は次は見つけにくい。企業としてもそういう人は嫌うのである。そういう人は、いっそ専門学校に入りなおした方がいい会社に入れるはずである。

なお、IT分野が好調だとして、それを目指すより、元の手に職の意味通り、板前や菓子職人、大工や指物師など、若ければチャレンジして欲しいものだ。それらは定年もないし、失業も腕がよければないのだから。ITよりものづくりとしての伝統工芸は今後期待できるだろう。

ITでは人間国宝にはなれないのだから。




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