アフガンは誰の手に



北部同盟

北部同盟という名前に、北部解放戦線を重ねてしまう。しかし、彼らは開放を求めているのではないのだ。

国王がいた時代、平和で美しい国だった、アフガニスタン。

その成立は1774年のことである。その後、イギリスにより侵略され、独立を勝ち得たのは1919年のことである。

1973年にクーデターにより、王制から共和制に移行し、1978年のクーデターでは、共産主義の人民民主党が政権を握った。1979年にはソ連が軍事介入しカルマル政権が成立した。

それに対し、ムジャヒディーン(イスラム聖戦士達)が反発、政権及びソ連軍を相手に抵抗を開始した。1986年にはカルマルからナジブラに政権が引き継がれ、1989年2月にはソ連がジュネーブ合意に基づき撤退を完了した。後支えを失ったナジブラ政権は1992年に崩壊、ムジャヒディーン各派による連立政権が発足した。

ここまででも凄いが、まだ終わらないのだ。

その連立政権のラバニ大統領が当初の任期を過ぎても政権に居座ったことから、ムジャヒディーン同士の主導権争いが激化し、まさに群雄割拠の様相を呈した。イスラム協会(ラバニ派:タジク人中心)、イスラム党(ヘクマティヤル派等:パシュトゥーン人中心)、イスラム統一党(ハリリ派及びアクバリ派:シーア派のハザラ人中心)、イスラム国民運動党(ドストム派:ウズベク人中心)などである。

そこに、それまで難民であった者達が参戦してきた。内戦に嫌気を持っていた民衆の支持を得て、急速に勢力を伸ばしたのである。

それがタリバンである。

1996年9月、タリバンは首都カブールを陥落、これに脅威を感じた前述の各派は、反タリバンとして結束した。いわゆる北部同盟である。

整理しよう。

タリバンは、難民から出た勢力である。

北部同盟は、内戦していたが、反タリバンとして一時的に同盟したものだ。

そして、北部同盟は各地を奪回しているが、それが、先の分有割拠時代の支配地域なのである。一緒に国を再建しようという者たちではないのだ。

誰が一番にカブールに辿り着くか、誰が政権を奪うのか。

ここに至って尚、彼らの考えはそれだけなのを忘れてはならない。



近隣諸国の思惑

タリバンの戦闘を支援したのはパキスタン、サウディ・アラビアなどであり、他の各派を支援したのはイラン、ロシア、ウズベキスタンなどである。

それらの国は、自分の支援した派閥が勝利した方がいいに決まっている。

そのため、どこかひとつの派閥が優位となることは、国際的に望ましくない。国連が主体となって、民主的な国家として再建しようとしているのはこのためだ。

歴史を戻して、クーデター前の王制へというのが望ましいのかもしれない。しかし、それにしても、クーデターを歓迎したり、クーデター後に各派を支持していることから、王制に戻った後の待遇が問題となる。

アメリカにしてみると、ソ連の軍事介入に対抗するため、支援した経過がある。そして、現在はテロ組織およびその支援国として、タリバンも攻撃対象としている。タリバンの武器はアメリカが供与したものである。アメリカとしてはタリバン政権は崩壊して欲しいが、タリバン勢力が根絶し北部同盟に政権が移ることは、武器供与時点での思惑とは異なってしまうのである。もちろん、事ここに至り、アメリカの影響力をアフガンに残したいのは当然である。有態に言えば、北部同盟はただの駒に過ぎないのであって、アメリカやその支援国だけがタリバンを攻撃するとイスラム諸国の反発が強いが、内戦としての北部同盟が動く分には静観していてくれるのである。ラマダン中であっても、北部同盟が戦闘をしても誰も文句は言わないだろう。

また、歴史的経緯からしても、イギリスも介入してくるだろう。アメリカと共同で新政権を支えつつ、イギリスの影響力も持ちたいのである。だからこそ、真っ先にアメリカの報復攻撃に参戦したのだ。

とはいえ、イスラム教徒の多い土地柄であるから、近隣イスラム諸国も黙ってアメリカの自由にさせるはずはない。そうでなくとも、反アメリカ感情は強いのである。

北部同盟が再び元の内戦を行わないように監視し、それぞれの派閥が納得し、新手のテロリストや勢力が台頭するのを防ぐのは並大抵のことではない。それは国連、PKF・PKO、あらゆるNGOが一致協力することが必要となる。

北部同盟同士の争いよりなにより、タリバンの処遇が問題になる。内乱は同じ国民であるため、タリバン指導者の裁判方法や一般兵の迫害防止など問題は山積である。平和が戻り、難民が帰って国情が安定しても、数十年は目が離せないだろう。

こういう時にこそ、宗教と政治を分離し、平和憲法を持つ日本の外交手腕が問われるのである。

しかし、その時であるにも関らず、外相および外務省が機能停止状態であるのは大問題だろう。国益としての国際的役割を果たせないのである。

筆者は田中外相にはがんばって欲しいと思うが、日本のためには、ここで外相を交代すべきだろう。滅多な人では勤まらない。保守党の海部元総理では如何だろうか。

なお、勝手な予想だが、また内戦が起きる確立は高そうである。そうでなくても、ゲリラ戦は続くだろう。政治的に安定させるより、軍事的な力による制圧が求められるだろう。やはり、国連軍PKFによる制圧が必要である。

日本もPKFに参加すべきである。PKOと呼べるようになるのは、そのかなり後になるだろうから。




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