核分裂と臨界



核分裂とは

物質を構成している最小単位を原子(アトム)と呼んでいます。原子は中心に正の電荷(+)を持つ原子核と、負の電荷(−)を持つ電子から成ります。この中心にある原子核を略して核とも呼び、これは「陽子」と「中性子」の塊です。

原子の性質は、この陽子の数によって百数十種に分類されていて、「周期律表」に表されています。水素、炭素、酸素などの呼び方はこの分類によるものです。しかし、陽子の数が同じでも中性子の数が異なるものも多く存在します。例えば「水素」は陽子1個、中性子0個が普通なのですが、中性子をひとつ持つ「重水素」やふたつ持つ「3重水素」も自然界に存在しています。

これらは同じ陽子数であることから「同位元素(アイソトープ)」と呼びます。不自然な数の中性子を持っている同位元素は不安定で、原子核が崩壊することがあります。原子核が崩壊していくつかの原子核に分かれることから、これを「核分裂」といい、その際に電磁波を出すことから、核分裂を起こす元素を「放射性同位元素(ラジオアイソトープ)」と呼んでいます。

放射性同位元素を含む物質は放射性を持つため、放射する能力があるという意味で「放射能」があることになります。ゴジラが吐き出すので有名な「放射能」とは放射する能力であり、放射性同位元素を表していることになります。

核分裂で発生するのは電磁波(電波、熱線、光)だけではなく、α線、β線、γ線、中性子線など非常に危険な「放射線」を含みます。すなわち「放射能」は「放射線」を出すので危険なのです。また、毒性を持ったものもあり、2重に危険なのですが、この中には「自然界に存在しない」のに原子炉でできてしまう「プルトニウム」が有名です。

放射性同位元素は自然の状態でも核分裂を起こしています。分裂する確率は種類により異なり、ある数の原子核の半数が核分裂するまでの時間を「半減期」と呼びます。ウランの半減期は地球が生まれてからこれまでの時間と同じくらいです。

自然な状態での核分裂から受ける(宇宙から来るものもあります:宇宙線)放射線を「自然放射線」といいます。多くは地中からのものであるため、地質によって差があり、糸魚川・静岡構造線(フォッサマグナ)以南の方が多くの自然放射線を受けています。これらの自然放射線は極めて微量であるため、無視できます。(でなければ地球に生命はいません)



臨界とは

ある確率で核分裂した原子核から放出された数個のα線や中性子はどこかへ飛んでいってしまいます。が、もしそこに放射性同位元素の原子核があり、これに衝突すると、核分裂を誘発します。ひとつの核分裂によりひとつ以上の核分裂が誘発されると、核分裂が増殖していくことになります。この状態が「臨界」です。

例えば風邪を引いているとき、近くに人がいると感染します。二人以上に感染させて、その人がまた二人以上に感染させると、風邪が大流行していまいます。しかし、近くに人がいなければ感染しません。ある程度の人が集まっていると感染させやすくなります。

核分裂も一定量以上の元素が集まっていないと「臨界」は発生できません。また、多すぎると爆発的に反応します。この性質を使ったのが「核爆弾:原子力爆弾(原爆)」です。

原子力発電所では反応を制御し安全な臨界状態で「熱」を原子炉内で取り出し、その熱により蒸気を作りタービンを回し発電しています。



原爆とは

無制限に臨界を超えた核分裂は爆弾に応用できます。これを実用化したのはアメリカで、1945年8月6日に広島、同9日に長崎に使用されました。輸送中は臨界量を超えない量にされたウランを、投下後に爆発させるため、広島()では「爆縮形」とし、32個に球状に分割された核を中央に火薬により瞬間的に集め臨界にし、長崎()では「打ち込み形」とし、一方に他方を火薬により打ち込むものでした。これらの種類が異なることから実験的な使用であることがわかります。

重大な被害を出した原爆ですが、現在の核爆弾(大陸間弾道弾)に比べればおもちゃみたいな小さなものです。ということは、「絶対に発射させてはならない」のです。

★libraさんよりご指摘いただきました。長崎が爆縮型、広島が打ち込み型の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

以下の情報を追加します。 (3/27/2001)

 広島型原子爆弾
(リトルボーイ)
長崎型原子爆弾
(ファットマン)
核物質ウラン235プルトニウム239
TNT換算爆発力15kt22kt
爆発効率1.4%15%
起爆方法砲身型(打ち込み式)爆縮型(周りから中心へ)
核実験実験なしに投下核実験後に投下

TNTは、TNT(トリニトロトルエン)火薬に換算した重さ、キロトン(1gの千倍の1kgの千倍の1tの千倍が1kt)。

アメリカアニメのロードランナーがコヨーテによく使ってたやつです。ちなみにロードランナーは本当にいる飛べない鳥で、和名はミチバシリ。直訳系の和名はちょっと情けないんですが、サンダーバードと雷鳥よりマシかも。サンダーバード2号だと空を飛べそうで、雷鳥2号だと空を飛べない感じがしませんか?(余計なこと書いちゃった)



JCO臨界事故とは

ここまでの説明のように「臨界」を作ってしまったのですが、問題は「裏マニュアル」でも「バケツ使用」でもありません。臨界を起こす可能性がある(マニュアル通りでない場合でも)のに、町工場然とした施設での操業を許可した国にあることは明白です。

材料があれば誰でも核爆弾ができるものを、その辺の工場に置いてあるのもおかしい話です。アメリカでは、あの規模は軍事工場になるそうで、一般の人間が近づくことはできないでしょう。

プルサーマル発電は欧米で実施しているなどと言っていますが、安全面(不利なこと)は決して言いません。ドイツが原子力発電所を全廃することも宣伝して欲しいものです。大体、原発が安全なら「臨海副都心」ででもやれるはずです。



プルサーマル発電とは

プルトニウムを含む核廃棄物を再処理(濃縮)し、これを燃料にするものです。石油ストーブにガソリンを入れるようなもので、うまく制御すれば大丈夫なのでしょう。(良い子は入れないでね、あっ、悪い子も入れないで!)

問題は、プルトニウムの毒性です。原発の放射能漏れは防ぎようがない(全廃以外)し、いつかは事故を起こすでしょう。その場合に毒性が強いと被害が拡大します。チェルノブイリ原発事故の汚染範囲を日本地図と重ねてみましたか?立ち入り禁止区域は半径85km程度でしたが、ヨーロッパ全土が汚染され、イタリアのパスタがどうのという話をご記憶のことでしょう。日本では季節風に乗って関東直撃です。



どうすればいいのか

一刻も早く原発を停止すべきです。そのためには、新たな発電を開発しなければなりません。人間は締め切りがないと動きません。全廃の期日を区切り、それまでに発明できなければ電気のない生活になってしまうくらいでないと、多分だめでしょう。

日本の非核3原則「作らず、持たず、持ち込ませず」は原子力発電所の核にも適用すべきではないでしょうか。

筆者は「世界一の発電量」を誇る「柏崎・刈羽原子力発電所」でお馴染み「新潟県柏崎市」に住んでいます。プルサーマル開始までに安全な所へ行きたいのですが、どこがいいでしょうか。




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