1HHJ 解説(Japanese only)
1HHJ, Human class I histocompatibility antigen (HLA-A 0201)
MHC 分子は、抗原のペプチド断片をのせて T 細胞に提示する「器」のような役目をして
おり、Perter Gorer と Gerge D.Snell によって移植拒絶の原因として発見されました。
この名前の語源は、ギリシャ語の「組織」を表す histo と「適合する能力」を表す
compatibility によります。
ヒトの MHC 分子は特に HLA と呼ばれています。
MHC 分子にはふたつの種類があり、それぞれに発現している細胞や提示する細胞の種類
が異なっています。
クラスTMHC 分子は体内のほとんどの細胞が持っており、認識するのは膜表面に CD8
というタンパク質をもった T 細胞(CD8 陽性 T 細胞)で、この T 細胞は細胞傷害性
T 細胞(キラー T 細胞)になります。
もうひとつのクラスU MHC 分子はマクロファージや B 細胞などの白血球だけがもって
おり、ヘルパー T 細胞になる CD4 陽性 T 細胞がこれを認識します。
クラスTMHC 分子は3つのドメイン(タンパク質などの構造上、機能上ひとつのまとまり
を持つ領域)α1、α2及びα3からなる、細胞表面上の部位と細胞膜貫通部および
細胞質内部からなり、さらに、このクラスT分子はβ2ミクログロブリンと非共有結合
しています。
α1、α2ドメイン上の2つのαヘリックス構造とβシート構造よって溝(groove)が形成
されており、正常な細胞では自己タンパク質由来のペプチドが、ウイルスなどに感染した
細胞では外来の抗原ペプチドがこの溝に結合して T 細胞に提示されます。
T 細胞はα1、α2ドメインで形成される構造を T 細胞レセプタが認識するとともに、
CD8 分子がα3ドメインの 222〜229 番目のアミノ酸で形成されるループに結合し、
T 細胞の抗原認識を助けていると考えられています。
T 細胞レセプタの構造は、B 細胞レセプタとして働く膜結合型の抗体分子と基本的には
同じですが、T 細胞レセプタは MHC 分子に結合した外来ペプチドだけを認識します。
(自己抗原と反応する T 細胞は、胸腺での成熟過程でアポトーシス−プログラムされた
細胞死−により除去される)
クラスTMHC 分子はウィルス抗原のような外因性の抗原だけではなく、移植をした時の
アロ抗原(同種抗原)やガン抗原のような内因性の抗原もペプチドとして結合させて
T 細胞に提示しています。
臓器や骨髄の移植では、ドナーと患者の MHC が一致しているのに拒絶反応が
起きることがあります。このような反応は T 細胞がマイナー組織適合性
(minor Histocompatibility - mH)抗原をアロ抗原として認識していると考えられて
います。
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