タンパク質・核酸について(Japanese only)



「化学」と聞いただけで何らかの拒絶反応を起こすひとはこれ以下を読む必要はありませんが、 このホームページに少しでも興味を持たれたかたは、訳が解らないなりに一通り眼を通して おく事をお勧めします。


<タンパク質について>


タンパク質は基本的に「L-α-アミノ酸」という単位が直鎖状に連なったものです。 アミノ酸は

          R
          |
    NH3 - CH - COO

のように中心になる炭素(α炭素)にアミノ基、カルボキシル基、水素及び側鎖(R)が 結合したもので、これらが

          R              R                        R
          |              |                        |
    NH3 - CH - CO - NH - CH - CO - ....... - NH - CH - COO


のように結合(ぺプチド結合)したものがタンパク質の一次構造です。
このホームページ上のプログラムでは初期状態ではα炭素を結んだ折れ線で一次構造が 表現されます。

しかし、アミノ酸が直鎖状につらなっただけではタンパク質として機能しません。 直鎖状のものがある特定の立体構造をとった時に初めてタンパク質として機能します。

立体構造を構成する上で部分的に規則的な構造をとっている領域がしばしばみられます。 これらをタンパク質の二次構造とよび、らせん(Helix)構造、シート(Sheet)構造、ターン(Turn) 構造があります。

タンパク質を構成するアミノ酸は20種類で、Alanine->ALA,Cysteine->CYS の様に 通常3文字で表記されます。

Cystein残基が三次構造上で隣接している場合、酸化されてジスルフィド結合(Disulfide bond) を形成することがあります。SとSの結合であるためSS結合とも呼ばれます。 ジスルフィド結合はタンパク質の立体構造を安定にします。


<核酸(DNA)について>


DNAはデオキシリボース(糖)とリン酸が交互に連なったバックボーンの、糖に核酸塩基(Base) が結合したものです。

             B       B
             |       |
    ...- P - S - P - S - P -.....

DNAは通常、二重螺旋(Double helix)の言葉通りに塩基を内側にして互いによじれあって二本鎖を 形成しています。

    ...- P - S - P - S - P - S - P -.....
             |       |       |
             B       B       B
             :       :       :
             B       B       B
             |       |       |
    ...- P - S - P - S - P - S - P -.....

上図の「 : 」で表した塩基間の結合は「水素結合」と呼ばれる弱い結合で、比較的容易に結合 が解かれます。

このホームページ上のプログラムでは初期状態ではリン酸を結んだ折れ線でバックボーンが 表現されます。

DNAの塩基にはAdenosin,Thymidine,Cytidine,Guanosineがあり、それぞれの頭文字で表記 されます。
AはTと、CはGとのみ水素結合が形成されるため、相補的な複製や転写が可能になって います。


[参考] <セントラルドグマ> DNA→mRNA→タンパク質


遺伝情報はDNAの塩基配列として貯えられています。1957年にクリックは生物における情報の 流れに関する原理としてセントラルドグマを提唱しました。

それは、DNAの遺伝情報はRNAと呼ばれる別の情報高分子に転写され、そのRNAの情報が タンパク質として翻訳されるというように、一方向に流れていくというものです。
この仮説は現在では、レトロウィルスにより逆転写される場合を例外として、基本的には 正しいことが認められています。

RNAは基本構造はDNAと似ていますが、骨格をなす糖がデオキシリボースに対してリボースで ある事、塩基の一つがThymidineに対してUridineである事、DNAが基本的に二重らせん構造を とるのに対しRNAは通常一本鎖として存在する事、などの違いがあります。
RNAにはいくつかの種類がありますが、遺伝情報が転写されるのはmRNA(メッセンジャーRNA) で、DNAからmRNAへの転写はRNAポリメラーゼと呼ばれる酵素によって触媒されます。

転写されたmRNAは3つの連続した塩基配列(コドン)に対応するアミノ酸に翻訳され ます。この対応は遺伝暗号と呼ばれ、UUU→Phe,AAA→Lys,CCC→Pro のように下記の遺伝 暗号表に従って対応します。

遺伝暗号表

1'st base 2'nd base 3'rd base
UCAG
UPheSerTyrCysU
PheSerTyrCysC
LeuSerTermTermA
LeuSerTermTrpG
CLeuProHisArgU
LeuProHisArgC
LeuProGlnArgA
LeuProGlnArgG
AIleThrAsnSerU
IleThrAsnSerC
IleThrLysArgA
Met*ThrLysArgG
GValAlaAspGlyU
ValAlaAspGlyC
ValAlaGluGlyA
ValAlaGluGlyG

Met* はタンパク質合成開始コドン、Term は終止コドン



[参考] 転移 RNA (tRNA)


DNA の塩基配列がどのようにタンパク質中のアミノ酸配列に転換されるかという 遺伝暗号の解明過程において tRNA は、片方で mRNA の塩基配列を読み取り、 もう一方で特定のアミノ酸を結合する能力を持つアダプター分子として想定され、 すぐにその存在が実験的に確認されました。

現在では tRNA の結晶の X 線回折像から三次構造も明らかにされ、同時に化学的、 生化学的な分析も進み、tRNA は RNA 中で最もその構造と機能との関係が明らか にされている分子と言えます。

tRNA は内部で向かい合った塩基どうしが水素結合により塩基対を形成すること によりクローバ葉型の二次構造をとり、さらにその二次構造は相互の結合に よって折りたたまれ L 字型の三次構造を形成します。

にも示した通り、 L 字型の一端がアンチコドン と呼ばれる mRNA のコドンを認識する部位で、もう一端がそのコドンに対応 するアミノ酸を結合する部位(CCA 3'末端)です。
全ての tRNA においてその構造はきわめて良く似ています。