BASIC-MSX
MSX, the Home Computer Architecture

冷戦時代の鉄のカーテンなどものともせず、国内外23社のメーカーによって生産され、ドライバソフトのインストール作業など必要としない真のPlug & Playを1983年に実現していた、世界共通規格のホームコンピュータ。

MSX

―――そして、身近な街の電器屋さんに置いてあった『未来』。

あの頃の未来が現実となった今だからこそ、たまにはあの頃を思い出してみませんか。
MSX・FAN採用時にいただいた自作品ROM
MSX専門誌『MSX・FAN』に投稿プログラムが採用されると、投稿謝礼(現金)の他に、投稿プログラムが自動起動するオリジナルROMカートリッジがもらえました。
残念ながら、1992年ごろに廃止されたようです。


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MSX-DOSはZ80汎用MS-DOSだった!!

MSX-DOSが、MSX以外の機種に移植されていたと聞いたら、あなたはどう思われるでしょうか。
名前からしてMSX専用であるように思われるMSX-DOS。しかし、現にかつて SHARPの X1turbo 、同じくSHARPの MZ-2500 上で Multiplan(現Microsoft Excel)を動かすために MSX-DOSが動いていました。

MSX-DOSができた当時、Z80マシン用DOSの主流はデジタル・リサーチ社(NHKの電子立国で取材を受けてすぐ亡くなったキルドール氏の会社)のCP/Mだったのですが、マイクロソフトはMSX用のDOSとして使うために自社のMS-DOS(v1.25)をZ80用に移植しました。ディスクフォーマットはMS-DOS互換なので、MS-DOSが動く16ビットマシンとのデータ互換が可能でした。ただし、既存のCP/M用ソフトが動くように、システムコールはCP/M互換とされました。

そこでMultiplanを移植する際、16ビット版は当然MS-DOSで動いていたので、OSごと移植してしまえ(Multiplanは16ビット機から、OSはMSXから)ということで X1turboやMZ-2500用のMSX-DOSが誕生したようです。
このことを紹介した Oh!MZ 1986年3月号にはMSX-DOSのCP/Mに対する有用性(使ったことはないがCP/Mはコピーコマンドが外部コマンドだったりしてかなりすごいらしい)を述べ、メーカに対してX1turbo版MSX-DOSの単品販売を提言しています。

なお、MSX-DOSの開発を行ったのはMS-DOSのもとを作成したティム・パターソンであり、MSX-DOSのcommand.comをダンプすると、後ろの方に
  MSX-DOS version 2.2 by Tim Paterson 03/06/84
と書かれています。バージョンが2.2になっているのがちょっと気になる……。

参考文献:
風間 浩『われMS(X)-DOSを発見せり』Oh!MZ 1986.3 p25-33, 日本ソフトバンク

なお Oh!MZ は1987年ごろ Oh!X と改名しました。




MSX turbo R は未完成の MSX3だった!!

MSXが、グラフィック性能でX68000やFMTOWNSと競合していた可能性があった。

なんて書き出しを、もしX68kやFMTOWNSのユーザの方が読んだら失笑を買うことでしょう。MSXのグラフィック性能は、MSX2+の時点で 解像度が最大 512×212ドット(16色)、色数が最大 19268色(解像度256×212ドット)でした。これは一昔前のWindows用マシンにもひょっとしたら対抗し得るX68kやFMTOWNSのグラフィック性能とは比較するに値しないものです。
MSX turbo Rは MSX2+に Z80互換16ビットRISC-CPU『R800』とMSX-DOS2その他を加えはしましたが、グラフィック性能はMSX2+と何ら変わりませんでした。そしてMSXのグラフィック性能は、それ以上進化することがありませんでした(少なくとも公式には)。

ところが、A1GT(国内最後のMSX)が出た頃のバックアップ活用テクニック(現ゲームラボ)の記事に
噂ではGTはグラフィックターボの略で、VDPにV9990を搭載してX68000やTOWNSを凌ぐ画像が扱える予定だったのが、V9990の開発が間に合わずお流れになってしまった
と書かれていました。
なんともアングラ色の濃い記事なので、眉に唾をつけて読んでいましたが、なんとMSX・FAN1995年2月号(p.90)にも同様の事が書かれていました(権威主義者と呼んでもらって結構^^;)。
MSX・FANによれば
CPUに16ビットRISCチップR800とグラフィックにV9990を積んだMSX3を出す予定が、VDPの開発が遅れて載せられなかった
とのことです。

V9990のスペックについては、MSX・FAN1992年5月号p90(写真入り)のものを引用すると……


とのことですが、これだけではよくわからないので他をあたると、


だそうです。『X68000やTOWNSを凌』いではいないと思いますが、そこはみんなもういい歳なので流しましょう。

V9990の恩恵を受けるのはゲームに限りません。ワープロも! MSXViewも!! 軽くなっていたに違いないからです(HDDが高嶺の花だった当時、A1GTのようにソフトをROMに積んでいればなおさらの話です)。
もしこれを装備したMSX3が1990年の段階で出ていれば、MSXの運命は少しは変わったものになっていたかもしれません(turbo R がA1STだけで10万台以上売れていたことを考えると特にそう感じられます)。
プログラムを組む側としては、V9990が駄目になったのなら、せめてR800の高速性を殺さないためにも高速版V9958を積んで欲しかったものです……。

なお、海外の同人ハードでは、V9990を積んだMSX用ビデオカードが出ているようです。

資料:MSXと搭載VDP
MSXのバージョンVDP
MSX1TMS9918A
MSX2V9938
MSX2+V9958
MSX turbo RV9958
(MSX3?)(V9990)

資料:MSX2+,MSX3とX68000(初代機)の比較
注)表中『16/65,536色』とは65,536色中任意の16色を表示可能であることをあらわす
MSX2+MSX3X68000
VRAM128kB512kB?テキスト:512kB
グラフィック:512kB
スプライト:32kB
最大解像度512×212 (16/512色)
インタレース時512×424×16色
640×480 (16/32,768色)
インタレース時768×480×16色
768×512 (16/65,536色)
最大色数19,268色 (256×212時)32,768 (512×212時)65,536 (512×512時)




色指定1ライン単位可1ドット単位可?1ドット単位可
最大同時
表示枚数
32125128
(同一横軸)81632
その他スムーズスクロール
パレット機能
スムーズスクロール
重ね合わせ機能
パレット機能
PCGモード
スムーズスクロール
プライオリティ選択
パレット機能
半透明機能
しかし1987年の段階でこんなスペックのマシンを作って、しかも30万円台で売ってたなんて……目の付け所がシャープ過ぎて生きるのがつらいわ。

参考文献:
MSX・FAN 1995.2 p90, 徳間書店インターメディア
バックアップ活用テクニック No.25〜29のどれか, 三才ブックス


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