ファウスト


─ J・W・ゲーテ ─



移ろうものはみな比喩に過ぎない。

地上で力及ばなかったことが、

この天上で出来事となり、

名状しがたいものがここに成し遂げられた。

永遠に女性的なるものが、われらを引きあげて行く。



あらすじ
第一部
あらゆる知的探求が内心の欲求を満たさぬことに絶望した老学者ファウストが、
悪魔メフィストフェレスと死後の魂を売り渡す契約をして、人生を体験し尽くそうとする。
魔術によって若返ったファウストは、少女マルガレーテと結ばれるが、
悪魔の介在によって彼女は嬰子殺しなどの罪で処刑されることで終わる。

第二部
主人公は広い世界に出て行為の人となり、
危険な人生の中でのたゆまぬ努力、勤労への意志によって救われ、
能動的な上昇期の市民精神を昇華して、 人間の生き方への解答が示される。
そして最後に新天地への開拓を思い立った盲いた百歳の老ファウストは、
自分の墓を掘っているとは知らず、鶴嘴の音を聞きながら倒れる。
悪魔は横手を打って魂を運び去ろうとするが、
その途端に天から降りてきたバラの花に身体を焼かれて敗走し、
ファウストはマルガレーテに導かれて昇天する。