女より弱き者


─ バーサ・M・クレー ─


二つの選択肢 「幸」と「愛」


わが魂の王国へ
愛する人 きみを今日 招きいれよう
わが命を きみのもとに
わが心を きみにささげよう

たったひとつの想いだけが 別にのこり
永遠に そのまま あるだろう
わが心には ひとつの部屋があり
その戸は きみでさえ 拒む

開かずの間 ずっと前に
その扉を閉ざし 鍵をすてた
深く 苦い 水がそこに ただよい
誰もいない静かな海へ 流れてゆく

ああ、それは 憑かれた場所
ほかはすべて きみのものだ
もう 永久に その扉はとざされた
それでさえ 最良のすべ
ふたたび そこに 足を踏みいれはしない

二度とふたたび
恐ろしげな姿 恐ろしい幽霊と
共にありたくはない
きみの楽しげな 美しい微笑が 遠のく─
だから ふたたび そこに 足を踏みいれることはない

せきとめてくれ もし きみが 私を愛するのなら
どんな後悔も及ばない この想いは のこるから
微笑みをかわそう ねえ きみ そして
わが心の 開かずの間を 忘れよう



あらすじ

本作品のヒロインである絶世の美女ヴァイオレットは
幼なじみの婚約者フィリックスを裏切って、
大富豪の准男爵シャヴァニックス卿と結婚します。
結婚後、ヴァイオレットはシャヴァニックス卿から
奴隷のような扱いを受け、忍従の日々を過ごします。
他方、フィリックスはつらく苦しい過去を乗り越え、
自分にお似合いの女性であるイヴと結婚します。
そして、フィリックスとイヴはお互いが幸福な家庭を築きます。