突出階段


突出階段

一般的な階段の床倍率は、0である

突出階段とは、本体から突出した長さをLx、巾をLyとしたとき
Ly/Lx>=0.8 かつ、階段部分が段板と蹴込み板と側桁が相互に緊結されて箱状となっている仕様の階段

突出階段の床倍率 0.5  単位長さあたりの許容せん断耐力ΔQa = 0.98kN/m ( 1.96 * 0.5 )

突出階段の水平構面検定について(A)

「3階建てサンプル」で示した突出階段の水平構面を検証してみる
外端部には耐力壁が無いものとして片持状態で検討する(新グレー本P82参照)

ここではサンプルの仕様より地震時水平力・風圧力とも小さくなるように仮定する

寸法: Lx = 1.82 Ly = 1.82  階高 2.8m
重量:壁(サイディング)650N/m^2  床(階段)300N/m^2 積載荷重(地震用)600N/m^2

地震時水平力
 壁 1.82*3*2.8*650 = 9937
 床 900*1.82*1.82 = 2981
 合計重量 W = 9937+2981 = 12918
 地震時水平力 Q = 12918*0.2= 2584N = 2.584kN (1階としてC=0.2)

 Ly = 1.82としての許容せん断力=1.82*0.98= 1.784 < 2.584 NG

風圧力
 小さい目に仮定して1階で、速度圧1000N/m^2  kz=0.77 風力係数C=0.8*0.77+0.4=1.016とすると
 風圧力 Q = 1000*1.016*1.82*2.8 = 5177N = 5.177kN > 1.784 NG

寸法: Lx = 0.91 Ly = 3.64で再検討
 W = 5.46*2.8*650+900*0.91*3.64 = 12918N
 地震時Q = 12918*0.2= 2584N = 2.584kN ≒ Qa=2.584
 風圧力Q = 1000*1.016*0.91*2.8 = 2588N = 2.588kN > 1.784 NG

突出階段の水平構面省略条件での検定について(B)

A式 L<=4.1ΔQa/α
B式 H>=1.7Lα/ΔQa

α = 1 とし L = Lx   H = Lyとすると
A式 Lx<= 4.1*0.98 = 4.018m
B式 Ly/Lx>= 1.7/0.98 = 1.735
片持状態ではLxを2倍と読み替えることによって
Lx = 1.82m とすると Ly = 1.735*1.82*2 = 6.315m以上
Lx = 0.91m とすると Ly = 1.735*0.91*2 = 3.158m以上
を満足する突出階段寸法が必要となる

水平構面の剛性が小さいので外端に耐力壁を設けることは薦めないがあえて設けるとすると
Lx = 1.82m とすると Ly = 1.735*1.82 = 3.158m以上
Lx = 0.91m とすると Ly = 1.735*0.91 = 1.579m以上
となり「3階建てサンプル」はOKとなるが・・・

突出階段としての結論

一般的な階段の寸法は上記(B)省略条件での寸法以下であり、突出階段の外端部に耐力壁を設けて精算すると逆にNGとなるでしょう
また実際の物件での設計条件は(A)の地震時水平力・風圧力とも大きい階があるでしょう
よって突出階段となる平面計画はしないようにするべきとなる

あるWebでこのような事例を説明しているものがあったが、その説明では外端部に耐力壁を設けない場合、この突出階段部分の水平構面の検証をしなくていい、というのが結論でした
しかし、新グレー本P82の説明とおり片持として検証すべきと私は考えます

私見の解決策

一般的な構造での突出部の設計ではその部分の自重に見合う水平力をなんらかの他の構造材で負担することがある
その方法として階段の突出方向の両端の梁を階段部分で切らず延長(片持梁として)してその梁のせん断耐力で負担する
さて審査でどう判断されるでしょうか?

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