書評

「I/O別冊 カードワース 公式ガイドブック」

この本はCardWirthが商業ベースというか、マーケット向けメディアでメインとして紹介された始めての書籍だと思います。ちなみに私a-systemも作ったシナリオを掲載して頂きました。
そこで、いくつかの本屋を巡ってやっと入手に成功したこの本の書評などやってみます。

CWはもはや一つの「文化」として成立してますが、それはまだまだアンダーグラウンドな知る人ぞ知るという感じの形の文化です。ま、そこが魅力でもあるんですが。こうしたアンダーグラウンドな文化を商業メディアで取り上げる場合、たいていそのメディアに関わっている人自身がそれにはまってしまったか、あるいは新しい市場開拓といった商業的野心からかのいずれかだと思います。この公式ガイドブックの場合、明らかに前者でしょう。

この本は「公式ガイドブック」と銘打つだけあって、内容はあくまでCWに始めて触れた人向けです。
Askさんが用意されたダンジョン作成講座や、ヘルプファイルを元にした冒険初期の進め方など、なるほどこれ一冊あればCWをこれから始めるにはもってこい。一年前に逢いたかったなぁ…。
シナリオも沢山CD-ROMに入っているけど、もうやった物ばかりだしね(^^;

とはいえ、もうCWに慣れきってしまった方(このサイトに来てしまったまさにあなたの事、でしょうか?)もチェックした方がいいでしょう。というのも、この本の3分の1を占めているシナリオの「リプレイ」(まあ、いわばノベライズですね。)が良いからです。リプレイのネタになっているのはAskさんの名作「教会の妖姫」。私も好きな作品です。

大ざっぱな構成としては、騎士団崩れのパーティ(この本オリジナル。)が宗教都市ラーデックを訪れて、大事件に巻き込まれてしまう…という形で『教会の妖姫』を紹介していく、と行ったものですけど。(ちなみに私が好きなAskさんのシナリオはこれと『鳥の声が聞こえない』です。ストレートなシナリオではありますが。)うーん、やっぱりバルドゥアのベタな悪役ぶりが良いとか、悲恋の主人公はやっぱり美男美女が似合うなとか、いろいろ味わい直せてよいです。あ、もちろんオリジナルのシナリオを先にやった方がいいですよ。

ただ、一つだけ問題があるとすれば、この本の巻頭にあるこんな文句。

『…こうしてその夜、一人の冒険者が誕生する。今はまだだれもその名を知らず、その他大勢の一人でしかない。 だが、十年後、彼らは世界を震撼させる事件に、たった6人で立ち向かっていくことになる。』


…冒険者だけでそんな事件に立ち向かっちゃっていいのか?ま、いいか…。


追記

CWの総合リンクサイト「CardWirth - Impression & Review Links」からこのテキストにムックの紹介文としてリンクを貼っていただきました。しかし、そのわりに勝手なことしか書いていないような気がしましたので、若干の補足をしときます。

まずデータ面から。

I/O別冊 カードバトルRPG カードワース公式ガイドブック

発行:平成12年5月25日
発行所:株式会社工学社
値段:1900円(税抜き)
ISBN4-87593-832-2

内容
*プロローグ〜冒険者の誕生〜
(導入部。問題の「彼らは世界を震撼させる事件に、たった6人で立ち向かっていくことになる。」というくだりはここにあります。…頑張って貰いたいですね(^^;)

*これがカードワースだ
(カードワースの紹介、セットアップ方法、基本的遊び方などが書いてあります。内容的にはヘルプファイルを読めば分かることと言えばそれまでですが。でも、本屋に溢れるコンピューター関連の本は大抵そういうものなのではないでしょうか?初心者にはかなり有益だと思います。)

*誰にでも作れるダンジョン作成法
(要するに、Askさんのシナリオ作成講座。但し、宿の親父によるレクチャーという形を取っており、誌上で擬似的に親父シナリオを楽しめるメリットありステップ作成の入り口くらいまではこれで理解できるので、これを読めば簡単なシナリオは作成できると思われます。)

*リプレイ小説
(本ムックの最大の売りでしょう。んの名作「教会の妖姫」のリプレイが楽しめる。よくまとまっているのでおすすめ。)

*カードワースの世界〜その背景〜
(CW世界観の基本について、簡単に説明してあります。ここで紹介されている「観光名所」についてはムック制作者のこだわりが垣間見える。きちんと謎の国々である「トラキア・レイフォリス・ジオルード」についても言及しているのは、評価が高いです。

*GroupAsk座談会
(なんとAskの皆さんが登場。カードワース製作秘話なども掲載されている。)

*カードワースシナリオ
(CDに入っていないシナリオも含めて210本のシナリオリストが掲載されています。但し、ムックが発行されたのが2000年5月であることから、変更があるシナリオが結構あるので注意が必要です。)

特別付録CD-ROM


*Cardwirthフルパック(ゲーム本体・エディタ・データフォルダ・シナリオ「交易都市リューン」「ゴブリンの洞窟」「モンスター図鑑」)

*追加シナリオ9本(GroupAskさんのシナリオ。 「家宝の鎧」「鳥の歌が聞こえない」「墓守の苦悩」「機械仕掛けの番犬」「見えざる者の願い」「教会の妖姫」「賢者の選択」「古き沼の大蛇」「遺跡に咲く花」)

* ユーザーオリジナルシナリオ131本

現在、入手できるかどうかは未確認ですが、少なくとも店頭で並んでいるものを買うことは不可能だと思います。というより、5月当時においてもなかなか店頭で発見できずに入手に苦労した思い出があります。

なお、CD-ROMにはa-system作のシナリオは入っていません。(リストには含まれていますが…)あしからず。