vol.2

nine inch nails/THE FRAGILE

端的に言って、この「音」は今世紀(20世紀現在)最高傑作でしょう!!
もっとも、この「最高傑作」というのは使い古された言い回しなんで私もあまり使いたくないんですが、こう言わざるを得ないほどの作品です。恐らくこれを超える音楽は次のトレント・レズナーの作品を除いてあり得ないかも知れません。あるいは、こういっても良いかも知れません。ロックの形をした音楽でこれを超える作品は現れ得ない、と。

"the fragile"については、既に各ロック雑誌が様々な言葉で絶賛しているところで、各ライターさんも思いの丈をぶちまけていたりします。それはそれでいいと思います。思いますが、それだけで語りつくせるのか?自分の持つ小さな絶望と重ね合わせるだけで済ませられる物なのか、という疑問はどうしても残らざるを得ません。この作品を味あうためにはもっと長い時間が必要だと感じますね。

"the fragile"は、CD2枚組、アナログで3枚組の超大作で、インストを含めて100分以上の大作です。その中に23曲の強烈な曲が叩き込まれているわけです。
何がそれほど強烈なのか?
それは、一つ一つ丁寧に作られた音の強度です。
もちろん歌詞の良さや曲の構成なども言うまでもないのですが、特筆すべきは音の強さでしょう。
特にドラム/キックの強さ。ドラム/キックが曲を進めていくというのはまさにテクノの文法ですが、人を踊らせてなんぼという一般テクノの音の安易さとはまたかけ離れた所にあります。音に感情を込めた上で、その感情に頼らず音の強さを信じて作り上げられたこの作品は、もはやロックでもテクノでも無い形を取っています。その点が今や下火となり飽きられたビッグ・ビートとは決定的に異なる所です。
この音の力が如実に現れる曲としては、一曲目「somewhat damaged」が一番分かりやすい所で、その強烈なビートはイギリスの天才エイフェックス・ツインを軽く上回っています(そう言えば、エイフェックスの曲に「come to daddy」という傑作がありました、、、あれもインダストリアル調の強烈な曲でしたが、あの衝撃など問題にならないくらいNINの新曲は凄いですね)他にも十三曲目「into the void」二十二曲目「underneath it all」を聞けば、「音の強烈さ」の意味がわかってもらえると思います。
そういった炸裂ビートだけではなく、クラシックの要素をすくい上げた「la mer」「the great below」、またヘビメタ(!!)のいい要素だけをすくい上げた「no,you don't」・・・・・・・を聞けば、いかに一つ一つの音を立たせているか、分かると思います。

ともかく。
先入観を持たずに聞いてみれば、とても明るいアルバムです。
かつ音楽への向かい方が変わります。
是非聞いてみることをお勧めいたします。