vol.14

GODSPEED YOU!BLACK EMPEROR

YANQUI U.X.O.
ゴッドスピードのアルバムです。

ジャケットは航空機から爆弾が落とされるイメージ。
タイトルの「YANQUI」とは、彼らの造語で「ポスト・コロニアル帝国主義であり、国際的警察国家であり、多国籍企業の寡頭政治」で、アメリカ合衆国を連想させるもの。
そして「U.X.O」とは、クラスター爆弾のこと。
凄くメッセージ性の強い作品で、曲のタイトルもイスラエルのシャロン首相が行なったパレスチナの虐殺、キリスト教=アメリカへの怒りを表しているものです。

こうした、反戦平和をテーマとした楽曲をアーティストが作ること自体は珍しいことではないのですが、問題はアルバムの裏ジャケットに欧米の軍需産業と、ワーナー、アトランテック、ソニー、コロンビア、BMG、ユニバーサル等々のレコード会社が資本関係で深く結びついていることを示したことです。
「多国籍企業が戦争(虐殺)からエンターテイメントまで独占している」というメッセージをレコード会社に依存しなければ作品を出せないアーティストが発すると言うことは、私たちが想像するよりもよっぽど大変なことです。

あなただって、正論であったとしても、自分の属する学校、会社、あるいはグループに反して主張することには痛みを感じると思います。
ましてや、それ等に対し「人殺し」ということなんて(それが正しくとも)、もってのほかなのでは?
そうした「痛み」をためらわない表現を出来る人、アーティストは、信用に値すると思います。

こうしたことが出来るのも、彼らがカナダの地元でしっかりと活動し、安易にジャーナリズム(レコード会社の広告に依存した)に頼らないという姿勢を持っているからだと思います。


もちろん、メッセージ性がいくらあっても、肝心の曲がダメならどうしょうもないんですが、それはもう最高ですよ。
前作よりもさらに深く、深く、かつ美しい音楽になってます。是非買って、聴くことをお薦めします。