1.クローンについて

クローンとは?

 clone:同一の遺伝情報を持つ生物や細胞*のこと。
【1】個体の場合、親と全く同じ遺伝情報を持つ生物個体をさす。
【2】細胞を指す場合、一個の細胞から分裂してできた子孫の細胞集団を指す。
【3】特定の遺伝子*だけを増殖させることを特にクローニングと呼ぶ。
※このページでは【1】の固体のクローンを扱っていきます。

生物個体のクローン

植物の場合
 植物の葉や根などの体細胞*を特定の条件下で培養すると、細胞がカルス*と呼ばれる未分化(形態的、機能的に区別のできない状態)な状態になる。このカルスを適切な条件で培養すると、根や茎、葉などが分化して完全な個体として再生する。この再生した個体は元の植物のクローンである。

動物の場合
 (1)受精卵(胚細胞)クローン
 卵割した受精卵(初期の胚*)の各割球*を分離し、それぞれを代理母の子宮に入れると、完全な個体が誕生する。誕生した子同士は、元の受精卵に由来する同じ遺伝子を持ったクローンである。この場合、クローンは割球の数しか作れず、受精卵を使用するため、精子と卵子による受精の過程が必要となる。

除核細胞+胚細胞→子同士はクローン

 (2)体細胞クローン
 除核(細胞核を取り除く)した未受精卵と成体の細胞を融合させる、または除核した未受精卵に成体細胞の核を注入して代理母の子宮に移す。誕生した子は元の成体と同じ遺伝子を持ったクローンとなる。
 2004年には、哺乳類(マウス)による単為発生にも成功している。
これは、卵子に遺伝子操作した卵母細胞由来の核を移植することで、完全に雌のみによるクローンが得られたことになる。

除核細胞+体細胞→成体のクローン

 この過程で重要なのは、分化・細胞分裂を起こさせる技術である。従来、高等生物の分化した細胞は、全能性*を失っているため、そこから成体を再生するのは困難とされていたからである。
 体細胞クローンは元の成体の遺伝子的な老化の影響(テロメア*、DNA複製時のエラー、活性酸素*など)を受けるために、寿命が短いのではないか、とも言われている。
 また、核由来のDNAは元の成体のものだが、ミトコンドリアDNA*は除核受精卵由来となるため、極めて厳密にはクローンにはならないとも言われる。
 さらに、全ての体細胞クローンは何らかの障害を持っているという話もある。

<筆者の個人的見解>
 人間の受精卵クローンは、技術的には可能らしいが、わざわざそんなことをしてまで双児(一卵性双生児)がほしいという親もいないでしょう。
 体細胞クローンについても不可能なわけではないらしい。実際に人間の体細胞クローンを作るとしたら、どのような問題が発生するのでしょうか?。
 まず考えられるのは、正常な人間が発生するのか?、という問題ですが、これは研究が進めば解決されることでしょう。それより問題なのは、産まれてきた子供を社会的にどう扱うか?、ということです。
 例えば、今、筆者のクローンが産まれたとすると、その子供は筆者と「年齢の離れた一卵性双生児」という関係になるのではないでしょうか?。言うまでもないことですが、体細胞クローンとは、元の成体の完全なコピーではありません。持っている遺伝子が同じであると言うだけであり、獲得形質(生物が環境要因によって得た後天的な形質。遺伝しない)である、知識や筋力などはクローンには引き継がれません。
 倫理的に問題がある、という人もいますが、産まれてくるのはただの双児の兄弟でしかありません。また、神の領域を侵す技術である、という人もいますが、人間が、神の力を推し量って良いものでしょうか?。人間が神の力を決めつけることの方が、よほど神を冒涜(ぼうとく)しているのではないでしょうか。本当の「神の領域」とはそんな簡単に人間が到達できるものでもないでしょう(私自身は、無から有の創造(宇宙や生命など)こそ神の領域だと思います)。
 結局、問題になるのは、法律(民法や戸籍法)的にどうするか、ということだけであり、さらに、この問題は早急に何とかする必要があります。それは、今、実際に人間のクローンが作られた場合に、その子供は人間として認められるのか?、という問題があるからです。たとえ、法的にクローン人間が認められていなくても、作られてしまえば、それは生物学的には人間のはずで、何らかの障害を持って産まれてきたとしても、実験動物のように処分するという訳にはいかないはずです(動物なら処分しても良いと言うことでもないのですが)。これは、作ってはいけないという規制法や、作った人間を処罰する処罰法以外の法律が必要だと言うことです。

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