2.遺伝子組み換え

2-1.遺伝子組み換え技術

 任意のDNA*断片を別のDNA分子に結合させること。公的には「組み換えDNA実験」と呼ばれる。

組み換えDNA実験
 DNAは組み換え機構を備えており、有性生殖を通じて近縁種族間でDNAの組み換えを行うことが可能だが、こうした細胞*内での組み換えによらず、生物から抽出したDNAを試験管内で組み換え、再び細胞に移入して増殖させる技術。

 基本的な手順
【1】細胞からDNAを精製する。
【2】DNAを制限酵素*によって切断し、標的遺伝子を得る。
【3】同様の制限酵素によってベクター*DNAも切断。
【4】ベクターに標的遺伝子を挿入し、DNAリガーゼ*で連結する。
【5】組み換え体ベクターをコンピテント細胞*に取り込ませる。
【6】細胞を培養して遺伝子を発現させる。


<筆者の個人的見解>
 遺伝子組み換えの解説で「ウイルス*の遺伝子を組み込む」と言うような記述を幾つか見かけたことがあります。実際には「ウイルスを使って遺伝子を組み込む」とするのが正しいので(組み込む遺伝子がウイルス由来の場合もある)、新聞だろうと偉い人が言っていることであろうと、鵜呑みにしないように。

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2-2.遺伝子組み換え食品

 外来遺伝子導入などの遺伝子組み換え技術を応用してつくられた食品。
 現在商品化されている遺伝子組み換え作物の多くが、農薬や害虫への耐性など、生産性の向上を目的としたものである。これにより、耐農薬作物への大量農薬の使用、耐害虫作物が植物体内で生産する毒素の人間への影響などが問題視されている。
 遺伝子組み換え食品全般に対しては、新たに生成された物質がアレルゲン*になるのではないか、また、遺伝子が組み換えられていることを確認できるようにするためのマーカー遺伝子が影響するのではないか、なども問題とされている。

<筆者の個人的見解>
 最近の加工食品の原材料表示に「遺伝子組み換えでない」と言う記述を見かけるようになりました。まるで非遺伝子組み換えの原材料がブランドであるかのような扱いです。これは、遺伝子組み換えのほとんどが生産性向上のためにしか使われていないのが原因でしょう。実際には、アレルギー物質を抑えた低アレルゲン米や、コレステロール低下を助けるオレイン酸量の多いダイズなどが研究されています。こうした食品としての付加価値を持った遺伝子組み換え食品が登場した時、遺伝子組み換えだから、と言う理由だけで否定するのはどうかと思います。
 食品ではありませんが、医薬品では大量生産のために遺伝子組み換えは無くてはならない技術となっています。

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2-3.遺伝子汚染

 遺伝子汚染とは、外来性の遺伝子によって、既存の遺伝子が汚染されること。遺伝子組み換え作物が既存の植物と交配して、新たな種が発生するような場合を言う。なお、実験室や病院内から細菌・ウイルスなどの微生物が外部へ漏出することによって引き起こされる災害・障害をバイオハザード(生物災害)と呼ぶ。

移入生物による遺伝子汚染
 ある生息場所あるいは個体群に注目する時、そこに外部から入ってきた生物を移入生物と呼ぶ。外国から入ってきて繁殖している生物である「帰化生物」も含む。移入生物の場合は、一地域(特定の都道府県や離島)でのみ生息している個体群に対しての生物の他地域への移動も意味する。例えば、北海道で生息しない生物を本州から持ち込むような場合である。
 移入してきた生物と、在来種の交配が起こった場合、中間種の増加によって在来種の遺伝子が汚染されていくことになる。実際にこの問題はすでに発生しており、種の絶滅、生物多様性の喪失等の問題を起こしている。

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