「…はい?」
断じておくが、これは「彼女になれ」ではない。
なんてったって、「買い物に付き合え」と言われること自体に驚いているような間柄なのだから。
[ Let's Shopping! ]
「えーと…それじゃそういう事で」
は回れ右して、目の前の加賀鉄男に背を向けようとした。
「何でそうなる」
しかしそれは加賀の右手によって阻止されてしまった。
「…それはこっちの台詞なんデスけど…将棋部部長、カガテツオさん」
「…なんだ、俺のこと知ってるじゃねーか」
「そりゃぁ…」
そこまで口にし、は言葉を止めた。
(加賀鉄男って言ったら泣く子も黙るってねぇ…
しかし結構近くで見ると、いい男だったんだね…)
目の前にいる「加賀鉄男」をマジマジと見つめながらは思った。
「…なんだよ」
「別に…」
何故こんなことになったのか、それはあまりに簡単すぎて
当の本人も戸惑っている状態だ。
話はこうだ。
は帰宅しようと思い、いつもどおり廊下を歩いていた。
↓
すると目の先にあった将棋部から誰かが出てきた。
↓
よく見ると「カガテツオ」だった。
↓
と、目が合った。
↓
「おい」と言われた。
↓
「俺の茶飲みがないから付き合え」と言われた。
↓
「…は?」と答えた。
↓
「カガ」が「進藤ヒカル」によって割られたこと話し出す。
↓
「ってわけだから、付き合え」
・
・
今に至る
断じておくが、お互い同じ3年として顔を知ってる程度の仲のはずだ。
「今日しか休みねーんだよ、さっさと行くぞ」
「ぅえっ!? ちょ、ちょっと…!」
急に首に腕を巻かれ、無理やり連れて行かれそうになりは非難の声をあげる。
「それともお前、この俺様に逆らおうって言うのか?」
至近距離で、ギラリと睨まれは固まってしまった...
外に出るとすっかり夕暮れだった。
首は開放してもらえたが、今は手を掴まれている。
他の帰宅生や野外部の視線が二人に集中している…。
「…あのー…加賀サン…手を放してもらえないでしょうか…」
「…放したら逃げるだろが、お前」
「…あはは」
(それもあるけど…どんな噂がたつか怖いんですよ…)
の頭の中には恐ろしいタイトルで飾る新聞部の一面が浮かぶ…
「…それに…温かいだろ、この方が」
「…え!?」
聞き返すが返事はない。
少し前の歩く加賀の顔は、から殆ど見えない。
微かに見える顔色は、夕日のせいかもしれないが、なんとなく赤いような…
(…あ、あの加賀が…! あの泣く子も黙る加賀が…!!)
こっちのほうがよっぽどスクープだと噴出しそうになる口を、空いた手で無理やり押さえる。
なんてったって、ここで笑ったら 絶対殺される。ああきっと瞬殺だろうよ…
そんなの顔も赤くなっているとはつゆ知らず、
行き先はデパート? 商店街? それとも...
[ End..? ]