手に入れた、温かな命。 共に歩いて行こう。 THANK U BABY -7-ほどなく、私は試験を棄権し そろそろ、能力を使わなければ残れない状態になっていたし 私の目的は、ヒソカに会い、この命を得ることだったから それが果たされた後、残る必要は0だった。 そして、別れを告げることは、失礼に思えた。
みんな、驚いただろうか… クラピカだけは、わかってくれてるだろうか…
そんな、1人ごちも、そう長くは、続けられなかった。
「やあ」
出産を控え、入院した私をはじめに見舞ったのは 意外な人物だった。
「ミルヒさん…でしたっけ」 「覚えているとは、好都合…まぁ説明する気もないけど」 「説明してくれたって、いいんじゃないかしら…冥土の土産って言うでしょ?」 「わかっているなら…一言だけ。 君自体はどうとも思わないが、その腹の子は危険だ。 楽なうちに殺っておく」
なんとなく、わかっていた気がした。 あの人と、共に歩くなど、無理なのだと。 例えそれが、彼の分身であろうとも。
圧倒的な力の差を感じていた私は…どうすることもできなかった。 なんとかこの場を凌ぐことができても…次は無理だろう。 恐怖を感じることさえ、愚かに思え、 私はそっと、お腹を抱きしめた。
さようなら
あなただけには伝える、別れの言葉。
そして
ありがとう
みんなを思って、あなたに告げる。
「フフ…」
耳の奥で、ヒソカの声が聞こえた気がした。 死んだ人間を覚えている人ではない… でも死に目を見せなければ、あなたはずっと覚えててくれる。 ヒソカ… 私にとって、最初で、最後…唯一の人…
意識は、そこで途絶えた。
わたしが、 目を覚ませることに気がついたのは、 それから3日後のことだったようだ。
「オハヨ」
そのときの驚きと言えば… きっとここは所謂天国なのだ、と思ったくらいだ。
まばゆい光の中で あの人が私を覗き込んでいた。
「…どうして?」 「…約束」 唇につけた人指し指を、私の唇にそっとあてる。 「イッショにイこうって、”言った”だろう」 「でもそれは―」 そもそも情事での言葉であったし、 そう、思ったのが伝わったのか、彼はフフ…と笑った。 「ステキじゃないカ ヒソカ一家」 「え・・・」 「イケてる父と、美しい母、そして― 僕らにそっくりの、可愛いコドモ」 彼が指差した先には、小さなベッドがあった。
「ウソ…」 「ステキな物語の始まりだ…」
お腹の空虚感を埋めるような安らぎが、その小さなベッドの中にあった。
「あぁ…ワクワクするヨ… このコが物心ついたら、どうなるかナァ…」 その顔は、明らかに煩悩に浸っている様子だった。 「キッと…母親思いで… キミを殺したら、死に物狂いで殺しにくるのかナァ…」
フフっと、私は笑った。 「そうね…まず、きっと世界中の刺客が、私達を狙いにくるでしょうね…」 「アァ、その通りだ…ボクは守りきれるかナァ…」
きっと、貴方は守りきれなくたって、どうとも思わないんだろう。 だけど、あなたと歩む道がみつかっただけで
私は幸せ。
[ Happy End...? ]
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