第16話 |
「あ〜やだやだ、女の子大好きの色ボケ男なんてねぇ…
ぎょっとした、鈴花がこんなこと本人の目の前で言うなんて。
「そーかそーか、俺はそんなふうに思われたのか」 目の前の朝帰り男はしれっとした顔でそういった――近藤勇、その人が。 「鈴花? あなた思ってることが声にでちゃってない?」 「くんも手厳しいね〜」 頭に手をやりながら、余裕で笑っている。 「、ちょっとこい!」 少しはなれから、永倉さんに呼ばれた。
「なんでしょう?」 永倉さんもの傍に行った途端、その一言だった。 「だめか?」 私の握った拳を、軽くポンポンとたたくと、彼は母屋の方を向いて歩き出した。
そんなわけで、永倉さんの部屋でお茶を飲んだあと、部屋に戻って、横になることにした。 「(…はぁ…床に吸い寄せられる…結構疲れてたんだな…)」 コポコポコポ… 隣の鈴花の部屋から水の音が聞こえた。彼女とは同じ女性ということで、襖1枚でとなりになっている。 「はぁ〜、お茶が美味しい…」 つい、自分が何かもらっていたか、思い出してしまった。 「近藤さんは、単純に女の子が好きなんだよ」 なんだかこの二人の会話はまったりしてて、ところどころ心の中でつっこんでしまった。 「おっ、また俺の悪口でも言ってるな?」 そのあとは、なるべく聞かないようにした。聞かないようにしたけど、つい、耳に残ってしまった。 「奥さんのこと、とても愛してるんですね」
胸が、締め付けられた。
「(なんで私、胸が苦しくなってるんだろう…そんな、まさか…)」
奥さんに、嫉妬してる?
「(うそ…でも…)」
そうなのかもしれない…この世界に、私をあそこまで信じて、愛してくれる人はいるんだろうか。
「(でも、別に近藤さんに愛されたくなんか…)」
そう思ったら、なぜか顔が熱くなった…。
「(そんな…まさか、あんな女たらしに…)」
モンモンとした気持ちを抱えて、私は目を閉じた。
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永倉さん、ちょっとしか出せませんでした… 2006.06 up| メニュー|サイトTOP | |