トコヤの婆さんきょうも豆まき、ハトにエサをあげます。
 あんまり昔からあげてるので、いつのことからか思い出せません。
 『ドゥッドゥルドゥー、おいしそうなお豆だぞぉ。
  ドゥッドゥルドゥー、きょうはごはんもあるぞぉ。うれしいなぁ。』

 雨がふっても風がふいても、きょうも豆まきハトにエサ。
 あんまり昔からあげてるので、なんのことやらか思い出せません。
 『ドゥッドゥルドゥー、おいしそうなお豆だぞぉ。
            きょうもごはんがあるぞぉ。うれしいなぁ。』
 ネコがとうりかかると、
 『ニャッ、お豆もごはんもすきじゃないニャ。』と言って、うなぎ屋さんにいきました。
 それでもハトたちは、一目散に、
 『ドゥッドゥルドゥー、ネコがきたよ。
            トコヤの電線ににげなきゃ。
            おいとこ、もうちょっとつめておくれよ。
            そこのあいだにいれてよね。
            もうちょっと、そっちいけよ。
            やだよ、ここがいいんだもん。』
 おしあいへしあいです。それでも、みんなここがいいのです。
 『ドゥッドゥルドゥー、電線はトコヤにかぎる。』

 きょうも朝からトコヤの電線は満員です。
 雪がふっても桜がふっても星がふってもトコヤの婆さん、はるかに青空、きょうも豆まきハトにエサをあげます。
 あんまり昔からあげてるので、いつまでのことか思い出せません。
 それでもいまだって遠くのかなたに、

 『ドゥッドゥルドゥー、ドゥッドゥルドゥ。』            

                                           トコヤの電線

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