kr_ryo 徒然日誌 <2002年7月14日分>

戦争芸術リプレイ記その10…コサックス体験記その13

とうとうコサックスリプレイ記も最終回です。10回の長きに渡りご愛読(?)ありがとうございましたm(__)m昔私は小説を書こうとして途中で挫折という経験が両手の指を何本も必要とするくらいありましたので、無事終わることができてほっとしています(^。^)予定通り終わるのも、やっぱり最初にプロットなり筋書きなりがしっかりできているリプレイならではですね。プロの作家の方は途中で登場人物が勝手に動くと言われたりしますが、素人では無理です( ̄^ ̄)ちゃんと設計しないといけないですね。

最近コサックス〜攻城の世紀〜と〜The Art of War〜の両方を軽くプレイしてみたんですけど、両者の戦術が微妙に違いますね。攻城の世紀はコンピュータ同士の勝手な同盟はともかくとして(3対1で勝てるか!(-_-メ)コサック傭兵を多用してきます。こちらが隙を見せればすぐ突入してきて引っかき回します。守備隊が少数だとやはり突っ込んできます。かき回されている間に敵の本隊が攻めてくる、という戦術です。建物に対する守備兵を多めにすることでかき回されなくなります。

これに対しThe Art of Warでは、アルジェリア射手が多用されます。120人位の規模の射手を平気で序盤から使ってきますので、槍兵1個部隊程度でも結構な損害を受けたりします。1人倒している間に後方の射手が大量に矢を放ってきて、こちらが次々と倒されていくというような。槍兵1人と射手1人の費用と育成時間から考えると、結構な損害です。これに対しては、以前のリプレイでもありましたが、複銃身カノン砲が有効です。一撃で敵のほとんどを吹っ飛ばしてくれます。The Art of Warではコサック傭兵はほとんど使われません。なぜでしょう?攻城の世紀の方は射手と擲弾傭兵の少数の混成部隊が多用されます。このため、初めてThe Art of Warをプレイしたときの射手の大軍を見たときは唖然とでき、久しぶりに攻城の世紀をプレイするとコサック騎兵に荒らされて唖然とできます(T-T)

個人的には、途中でコンピュータ同士の勝手な同盟を結んでいる攻城の世紀より、コンピュータ同士の叩き合いのあるThe Art of Warの方がよいですね(ってそりゃ改良版だからね)。長時間のダウンロードの甲斐あり、体験版とはいえずいぶん楽しませてもらいました。ロードが不安定な以外はちゃんと動いていますし。製品版は・・・もう出てましたっけ?(^^;A

それでは最終回をお楽しみください。

ウィーン侵攻戦 後編

ウィーンの西方リンツは、要の街として重要視されている。オーストリアに侵攻したファルツ選帝侯国軍の総司令官マンスフェルトは、オーストリア軍総司令官ワレンシュタインの軍を撃破してリンツを望める地点に陣をしいていた。リンツからは、オーストリアの胸甲騎兵小隊や擲弾兵小隊、射手と擲弾兵の混成小隊、榴弾砲、槍兵小隊など、ありとあらゆる小隊が次々とばらばらにファルツ軍に攻撃をしかけてきた。いずれも名のある貴族が率いた部隊であるようだが、接近するやいなやファルツ軍の複銃身カノン砲、竜騎兵、擲弾兵が弾丸の嵐を見舞って壊滅させている。

「この連中がまとまってワレンシュタインの指揮下に入っていたらもう少し手強かったんだが…」マンスフェルトは自分をもっとも苦しめた敵の不運を喜んでいいはずなのだが、やや釈然としなかった。ワレンシュタインは最後の最後にウィーンの宮廷に「干された」形になって増援を受けれなかったようで、リンツ郊外の会戦では、圧倒的な大軍のファルツ軍の前に破れ去った。ところが討ち漏らしたのか早くも逃げ出していたのか、彼の生死が不明であることがマンスフェルトをいらだたせていた。ワレンシュタインが市街戦の指揮を再びとっていたら…

リンツにせよウィーンにせよ、ファルツ軍は市街戦をほとんど経験していないため、街の威容に圧倒されている。先に突入させた胸甲騎兵隊と擲弾兵隊の報告がまだだ。複雑に入り組んだリンツの街を制圧するためには全軍を突撃させる方がよいのであるが、反面、一気に全滅の恐れもある。街中で要塞塔や大砲などで狙われれば、散開できない分一撃でやられる恐れがある。今もリンツ市内の要塞塔が轟音を上げている。どこを狙っているのか?マンスフェルトはその要塞塔に迫撃砲を狙わせた。

「擲弾兵第3中隊、中隊長以下全滅!」「我が胸甲騎兵リヒャルト隊、リヒャルト子爵様以下全員壮烈な戦死を遂げました!」ようやく伝令がマンスフェルトの陣まで届いた。明らかに形勢は不利のようだ。市街戦では敵のばらばらな小隊規模であっても、挟み打ちにしたり、狙撃したりなど、守る方が有利である。しかしここで退却させては再び敵が息を吹き返す恐れがある。マンスフェルトは護衛部隊を残した全軍を突入させるとともに、バイエルンやファルツから急ぎ援軍を派遣させるよう急使を飛ばした。

擲弾兵第8連隊第12小隊長ゲオルクは、今年22歳のファルツの鍛冶屋の3男である。ファルツで招集され、この戦争に加わって3年になる。ファルツの若者は、他国と異なり戦場に駆り出されることが多い。人口の少ない小国ファルツが、超大国神聖ローマ帝国=オーストリアと戦っているのであるからやむを得ないのであるが、戦争初期に国土をバイエルン軍に蹂躙された際、街の住民で組織したファルツ防衛隊以来の伝統でもある。ゲオルクの長兄も、ファルツ防衛隊としてバイエルン軍と戦って戦死していた。今やファルツは国民皆兵の気概がみなぎっている。ゲオルクも18歳で招集された後、擲弾兵としての練兵を受けた。投擲弾や銃剣付きマスケット銃、最近は手榴弾など、擲弾兵の装備は最新のものが多く、修理に彼の腕は重宝されていた。史上いわゆる第2次バイエルン攻略戦に参加して以来、仲間とともに敵を打ち破って生き残り、先のリンツ郊外の会戦で平民出身ながら小隊長に任じられていた。

ゲオルクは部下の第12小隊とともにリンツ市街に突入していた。石畳の上を、逃げまどう住民や、馬車や、敵兵などがごった返している。その連中を蹴散らしながら、敵の胸甲騎兵が数騎こちらに向かって突撃してくる。青ざめた表情の敵兵の顔にゲオルクはマスケット銃弾を命中させた。部下達もあるいは銃で、あるいは銃剣で敵を倒していた。

「小隊長、ここらは敵の騎兵養成所のようですぜ。」比較的開けた場所には副官のいうとおり、騎兵養成所があった。馬場にはこれから出発しようとしている敵の胸甲騎兵がいた。

「いっちょう吹っ飛ばそうか。」部下とともに手榴弾をベルトから外し、養成所の建物まで接近する。まだ馬がいるようで嘶きが聞こえる。窓から屋内に向けて投げ込んだ。轟音とともに柱の1本が砕けたようだ。屋根が傾き煙が上がる。反対方向に周り、まだ見える窓から手榴弾を投げ込んだ。再び轟音とともに屋根がはじけ、燃えだした。これ位でいいだろう。最新兵器の投擲式榴弾、略称手榴弾は、榴弾砲の榴弾を手投げ式にしたものだ。かなり重いが、その分威力は強力だ。普通の建物なら数発で粉々に破壊できる。

この轟音を聞きつけたのか、敵の槍兵隊と胸甲騎兵が現れた。どちらも小隊規模でこちらより多い。「ちょっとやばいな」思わずつぶやく。部下たちはマスケット銃をにぎり敵に照準を合わせた。いよいよ天国に召されるか?

轟音が響き、敵兵たちはばらばらと倒れた。音のした方を見ると、味方の竜騎兵だ。助かった。

「いい天気だ。諸君。」竜騎兵隊の指揮官は総司令官の副官クラウス様だった。日に焼けた精悍な顔をにやりと崩しながら、言った。「ところがそろそろ鉄の雨が降る。ここら辺りからは引いた方がいいぞ。」

クラウスの竜騎兵隊とゲオルクの擲弾兵隊は、道を塞ぐ敵兵を追い散らしながら南下する。頭上でヒューンと異様な音がしてその後に爆発音が響いた。迫撃砲撃が始まったようだ。ヒューンという金切音は絶え間なく続きだし、爆発音と煙と炎がそこかしこから上がった。ほとんど何も聞こえなくなったが、大声でクラウスが何か言っていた。「諸君、あれをやってくれ!」

歩兵養成所だった。レンガづくりの威容は要塞である。すでに他の部隊の擲弾兵が数人、手榴弾を投げ込もうとしていた。一発が壁にあたって跳ね返り、地面で炸裂して破片が投げた兵をなぎ倒した。

「おい、どこの隊だ?」ゲオルクは一人に声をかけた。「第3連隊第4小隊の者です。小隊長以下敵マスケット銃兵と戦って戦死、我々だけ残っています。」「とりあえず、我等と行動しよう。私は第8連隊第12小隊長のゲオルクだ」

ゲオルク隊は手榴弾を歩兵養成所の窓めがけて投げた。窓で爆発するもの、中に入って炸裂するもの、地面に落ちて爆発するもの様々だが、煙と火が上がった。聞きつけたのだろう、槍兵がばらばらと表れた。クラウスの竜騎兵隊が待ち構えていて、マスケット銃弾を浴びせてくれる。これなら背後は安全だ。 手榴弾を投げつくしたため、ゲオルク隊は退却した。今回も無事生き延びたな…

ゲオルクのように生き延びた兵士は少なかった。リンツの半分以上は攻略しているようなのだが、生き延びた兵が少なすぎた。ゲオルクの上官である第8連隊長の本隊は、前方の槍兵隊を狙撃途中に後方から迫られた敵擲弾兵とマスケット銃兵の攻撃により全滅していた。また、ある胸甲騎兵連隊は、敵を蹴散らしながら大通りを疾走中、路地で待ち構えていたカノン砲にぶどう弾(散弾)を打ち込まれて壊滅していた。クラウスの竜騎兵隊は巡回しながら兵を収容しているようなのだが…

マンスフェルトの手持ちの兵は少なかった。散開している迫撃砲全体をようやく守備できる程度であり、いまだ接近してくる敵小隊を撃退するのがやっとであった。深追いした守備部隊が返り討ちにあうこともあった。炎と煙を上げるリンツにウィーンから敵部隊が増援にきてしまったら…

「久しぶりだな、マンスフェルト」陣に入ってきたのは、なんとファルツ選帝侯フリードリヒであった。「バイエルンに援軍を送るついでについていったら、いよいよウィーン攻略というではないか。私も見たくなってな。」フリードリヒは、ファルツとバイエルンの胸甲騎兵と擲弾兵のほとんどを連れてきたという。別働隊をボヘミア経由でウィーン北方にも向かわせたらしい。全部で胸甲騎兵が4個連隊(360騎)、竜騎兵が2個連隊(80騎)、擲弾兵12個部隊(約420人)、カノン砲4門、迫撃砲10門といった陣容で、最初にバイエルンから出撃した部隊より多かった。持つべきものは話のわかる主君だ。

フリードリヒとマンスフェルトはリンツを制圧すると、そのままウィーンに向かった。リンツ陥落後リンツを土台に迫撃砲がウィーンの各所の要塞塔や軍事施設を破壊していく。オーストリアにとって何よりリンツやウィーンの住民を失ったのが痛かった。おびえる住民は次々逃亡し、ファルツ軍に拘束されたり掠奪の対象になっていた。フリードリヒが到着後はさすがに抵抗しなければ捕虜になるだけであったが、オーストリアの生産力はがた落ちになっており、もはや敗戦は時間の問題であった。帝国軍を構成する雑多な部隊は、戦うよりかえってウィーンの掠奪に走るものまで出る始末であった。

ここに至ってマンスフェルトは全軍をウィーンに突撃させる。強力な擲弾兵と胸甲騎兵は、旧態然としたウィーンの守備隊を文字通り蹴散らし、各所を掠奪し始める。この勢いの前には、ようやく出撃した皇帝フェルディナント2世の軍勢も敵ではなかった。最後の胸甲騎兵と重騎兵の混成部隊は、ファルツの胸甲騎兵と激突、擲弾兵と竜騎兵の援護を受けたファルツ軍の前に次々と打ち倒され、皇帝フェルディナント2世も乱戦のさなか討ち取られた。

ウィーンには皇帝が最後に呼び出したらしいアルジェリア射手やらコサック騎兵やらがいまだにファルツ軍に歯向かったり、逆に市内に火をつけて回ったりしていたが、もはや残存部隊にすぎない。燃えるウィーンを前に、フリードリヒは古い時代が音を立てて崩れ、新しい時代がやってこようとしているのを感じた。カトリックと新教の宗教戦争がきっかけだったが、もはや、国民戦争であり軍事力経済力の戦いとなったようだ。古いオーストリアが滅び、新しいファルツが帝国を再生し、諸国に冠していかねばならない。

後世ドイツ10年戦争と呼ばれる戦争はこうして幕を下ろした。フリードリヒは自ら選帝会議を主催し、神聖ローマ帝国皇帝を名乗ったのだった…

Fin.

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