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平成十三年五月十五日(火)。

 一口目は都こんぶの味なのです乾燥フルーツというものは。たぶんこれは乾燥する際塩で水気を取りながら干しているからなのだと思います。塩をまぶされ乾燥させられた物はえてしてそう言った味がするものです。

 これほどに果物が豊富な国であるが故に、ここでは実にいろいろなものが乾燥されて売ってたりします。一般的なのはマンゴーやパパイヤなのですが、グァバやみかん、梅、イチゴなんてのもあるのです。

 そして当然のように各社からありとあらゆる銘柄の物が発売されていて、コンビニなどで売られているのです。大体一袋一〇バーツから二十バーツくらいなのですが、中にはあやしい日本語表記の物もあります。

 例えばこれなのですが、こんなナイスな日本語表記がステッカーで貼ってあったのです。がしかし、今年になってコ、の部分に濁点がついてしまっています。誰かこっちにいる日本人が注意したのでしょうか、本当に風流を解せない人というのはつまんないです。

 このナイスな日本語表記をコンビニで見るたびに、へへへへ乾いとんのやったらおっちゃんが何とかしたろやないけ、と日本語で一人呟くのが私の人生のささやかな楽しみだったのです。どうしてくれるのでしょう私のこの空虚感を製造元は。

 話は戻ってこのドライフルーツというものは、都こんぶテイストをこらえつつ、噛まずに口の中で転がしているとじきに酸っぱさが甘さに変わってゆきます。そのまま水分を吸い続けて元のフレッシュフルーツに戻ってしまうのかと思えるくらい甘くなってゆくのです。

 一度、袋ごと口に入れると口の中で皮がついた黄色いマンゴーになって出てくる夢を見ました。我慢してしゃぶっているとその味の変化はそのくらい淡い期待を抱かせるものなのです。

 さて、先日乾燥フルーツが切れたので市場に行ってみました。しかし市場のコンビニには乾燥フルーツが置いてありません。仕方なくあの都こんぶテイストに飢えたまま肩を落として帰途についていると、市場近くの雑貨屋で四切れほど小さな袋詰めになった乾燥マンゴーを発見いたしました。

 その小さな袋に詰められた物が二十個ほど長い厚紙にステープラーで閉じられています。そうです、むかし懐かしい駄菓子屋のくじ引き状態なのです。値段が一バーツだと書いてあるので、私はその厚紙から小さな袋をひとつもぎ取りました。

 あんたそれ一個じゃ売ってへんのよ全部で十五バーツなんよ、と店のおばちゃんは言います当然岡山弁でなく泰語で。仕方ないので私は十五バーツで全部購入いたしました。よくよく見てみれば一袋一〇バーツのベストブランドや十八バーツのあきこブランドの物より、マンゴーひとつひとつが大きくて確実に値段的にはお得です。

 しかし、これが何故か口の中がビリビリするほど都こんぶテイストがきつく、なんとなく歯がざらざらしてくるのです。なんとなくすべてにおいてケミカルっぽいのです。しかし、ケミカルだという根拠もなく、ただ単に塩がきついだけなのかもしれないのでわがままを言わず食っております。

 当然半日でその味に慣れました。しかし、このネイチヴテイストバリバリの乾燥マンゴーになれてしまった私の身体が今後、コンビニで売っているインダストリアルな乾燥マンゴーを受け付けなくなってしまいそうで恐怖に打ち震えつつ、まあそれはそれでいいかと思っている次第であります。
 

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