戻る
ふたつ戻る |
|
|
平成十三年五月二十五日(金)。
三日間のお金を使わない生活のあと、結婚祝いに新婚夫婦にご馳走してから泰字新聞を読む会の例会があった昨日まで、人並みにお金を使ってしまいました。いや、この人並、と言うのがこちらの日本人社会ではなくうちの近所を基準にするのなら人並み以上です。 なにしろ前回配信したとおり市場で二キロ近くある雷魚をまるまる買ってきて食うわ、首都のパソコン街で一二〇パーツのホイールマウスは買うわ、日本人社会御用達のお弁当やさんでチキンカツ定食一二〇バーツは食うわで、あと細々したことは思い出せないのですが、激しい散財ぶりでした。というよりきっとお金を使わなかった三日間のリバウンド現象なのでしょうけど。 しかしそんなことをせずに慎ましやかに日々を送らなきゃならないと一応身体では理解しているわたくしは、昨夜徹夜してメルマガを配信しようかと思ったのですが、ついついひんやりしたタイルの床に身を横たえてしまって起きると朝十時。まったくもって身体のどこもやるべき事を理解していないと判明した今日の目覚めでした。 とりあえず目玉焼きご飯が食べたかったので、わたくしは階下に降りてゆきました。すると、ミニマートおばちゃんかたくさんのご飯をビニール袋に詰めております。おそらく近くの工場からの大量発注でしょう。 目玉焼きご飯、とわたくしは遠慮がちに、まるで独り言を呟くかのようにおばちゃんに注文してみました。するとおばちゃんのお顔がいきなり鬼のようになります。こがん忙がしか時にそがんもん作らるっもんね、とおばちゃんはおっしゃいいます当然長崎弁ではなく泰語で。 わたくしは逃げるように隣のムスリム姐さんの屋台に行きました。鶏モツいんげん春雨ご飯を注文すると、姐さんは、あんた今度日本に行くときあんたが今着てる着物買ってきてよ、とわたくしの浴衣を指さしながらおっしゃいます。わたくしはふと、小さすぎてわたくしには着ることが出来ない着物が一枚部屋にあったことを思い出して部屋に戻り、着物を取ってきて姐さんにお渡ししました。 姐さんは満面に笑顔をたたえて、あんたこれ、いくら払えばいいの? とわたくしに聞いてこられます。わたくしは出来上がっていた鶏モツいんげん春雨かけご飯に、揚げたての鶏から揚げをのせ、飯代、と言いました。 わたくしが着ることが出来ないのですから、わたくしが持っていても一銭の得にもならず、それなら姐さんに着ていただいた方がいい、とわたくしは判断したのです。姐さん大喜びです。しかしそのときのわたくしは日々のおまんまのために着物を質に入れなければならない甲斐性のない亭主を持った女房みたいな気分になっておりました。 それでそこから十八時まで五時間ほど勉強するつもりだったのですが、部屋に戻ると鶏モツいんげん春雨かけご飯と鶏から揚げで膨らんだわたくしの身体は思わずひんやりとしたタイルの床にからめ取られてしまいます。目が覚めると十七時。夕方に目覚めて何もしていない自分の状態を幽体離脱して客観視してみると非常に切なさのようなものを感じたので、わたくしは現実逃避をするために階下に降りました。 わたくしは切なさとは関係なくおばちゃんが作った目玉焼きご飯が食べたかったのです。自分の仕事を進めることは忘れてもわたくしは目玉焼きご飯に対しての思いは忘却していなかったようです。そしていま、目玉焼きご飯だけでは飽きたらず、ココナツミルクなしトマト豚肉入りトムヤムとさらにご飯をお代わりして食ってしまったわたくしが部屋に戻ってキーボードを叩いている、と言う状況です。 わたくしはしばらくの間、乾燥マンゴーと麦茶、水以外は食しません。今決めました。やるべきなのですわたくしはわたくしの生活を正すためにたった今から。期間は二十八日夕方まで。ほぼ三日間です。何故二十八日までかというとその日、あたしのOL時代の同期がこちらに遊びに来るので一緒にご飯を食べることになっているからなのです。 しかし、意志が弱くアルツ甚だしいわたくしのことですからいつ何時毀れていろいろなことを忘却し潜在意識求めるがまま口に食べ物を入れてしまうかもしれません。皆様もできれば、お客様ご相談窓口、 食ったあとに書き込まれている内容を目の当たりにしてブルーな気分になったりするのが怖いので、不退転の覚悟で断食の決意を忘却しないよう努めたいと思います。
|