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平成十三年九月三日(月)。



 今回の反省。

☆1.なくしたのが発覚した時点で農民銀行の二十四時間サポートデスクに電話すべきだった。
(サポートの電話番号を調べるのが遅く、カードを停めたのが結局土曜の深夜)

☆2.本格焼酎 薩摩見聞録には気をつける。
(どうもこれを呑むと記憶が飛ぶようです)

☆3.歩道で大の字になって無防備に寝ない。
(誰か知りませんが、港までソンテウに乗せて送ってくれたお姉さんありがとう。邪険にしてごめんなさい)

☆4.酔っぱらってバスには乗らない。ましてやバスの座席でこっそり更に酒蹴り込んだりしない。
(覚えてないが、状況的にバスの関係者に迷惑かけた可能性大)



 職業上、破滅的な状況に陥ると妄想能力が十二分に発揮されますので、今朝になるまで丸二日間、わたくしはずっと最悪の状況を想定しておりました。

 だってカードのケースには銀行残高書いた明細入れてあるんだもん。だからそのカードさえクラックすれば、わたくしがあと一年暮らせるくらいの大金が引き出せるってバレバレなんだもん。
 
 
 
 

 言ってみれば大金の入ったスケルトン金庫状態なのです。

 だから狙ってカードだけ盗られたのであれば、ソッコーで磁気データ読みとって暗証番号調べて引き出すはずです。磁気データは所詮磁気データ。専門知識がある人間がクラックしようと思えばいくらでもできるのです。

 休日中は営業していないと決めつけていて、銀行側に連絡するのが遅れたのもいけません。友達に聞いたら泰農民銀行には二十四時間電話受付のサポートデスクがあったのです。

 結局、わたくしは土曜日の二十時間以上、カードを丸腰のまま放置していたことになります。

 朝起きてアパートメントを出て、歩いて八時半に農民銀行に到着するまで、わたくしの頭の中では、帰り道に友達の工場に行って三万バーツほど借金し、先月の家賃を払ってから半年分ほど家賃の前払いをして、そのまま首都の旅行代理店に行き福岡往復一年オープンのチケットを買い、近日中に日本上陸し、友達に連絡取って山形飯豊連峰のダム建築現場の土建作業の仕事を紹介してもらって、またそこでゼロからスタートするというリアルな妄想が展開されていました。

 そして何よりも大事なのは、そういった展開になったときに、メールマガジン等でお客様相手にどうしたら笑っていただけるのかがわからないのです。そうなってしまうと事実が重すぎて、どうしても笑いを取ることが困難になってきます。

 ずっとどうしたら笑っていただけるか考えながら重い足取りで歩いて行くと、わたくしは泰農民銀行港町支店に到着いたしました。そして持っていた通帳を自動記帳機に挿入いたしました。

 ジーッ、ジーッ。

 嫌な音です。わたくしは三十二年間でこれほど辛い思いでドットインパクトプリンタの印刷音を聴いた事はありません。

 ものすごく長い時間、プリンターは印刷しているように思えました。まるでこのままずっと停まることなくわたくしの通帳に数字だけ書き付けて出てこないような気がしたほどです。

 いや、いっそ出てこなければいいのに、とわたくしは思っていたのかもしれません。出てこなければ安心もありませんが、不幸が訪れることもありません。

 ジーッ、ジーッ。

 ジーッ、ジーッ。

 ジーッ、ジーッ。

 ジーッ、ジーッ。
 
 
 

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 せぇぇぇぇええええふ!

 セーフ! セーフ!  セーフ!  セーフ! 

 セェェェェエエエエフ!

 いえーい。いええええい。

 無一文なーし! 被害ぜろおおおお!

 と、いうわけで何とか九死に一生を得たわたくしは、その場でキャッシュカードを再発行していただき、無事、先月の家賃も納入し、お祝いに昼間からビールなぞ飲んでおりました。

 みなさまには本当にご心配をかけて申し訳ありませんでした。

 なんとなく一度死んだ命だから、というような気分になっておりますので、今後更に気を引き締めて精進いたしたいと思います。

 最後に、泰農民銀行のサポートのお兄さん、優しく応対していただき有り難うございました。あなたのお陰でかなり楽な気持ちで日曜日を過ごすことが出来ました。
  

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