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平成十三年九月二十八日(金)
二十四日にこのメールマガジンを読んで戴いているお客様がいらっしゃいました。以下はお客様の直打ちです。 来ました。白石さん宅へ。 お土産の「そばめしチャーハン」は気に入って頂けたようでとても嬉しいです。 ところで、ここが藝道日記の発信基地ですね。 ほんとに秘密基地のようで、なんだか楽しそうです。 これからも、頑張って下さい。 あ、あと「のっぽんさん」見てますか?いろいろな縁で、みんなと友達になれてとても喜ばしいです。 お客様は泰ネイチヴのお友達様と一緒にいらっしゃいましたのでその後三人で港のちゃぶ台屋台に行きました。ビールを飲みながら雷魚トムヤムその他を腹一杯食しました。 食事しながら初対面のお二人とお話していると、何かいわく言い難い不可視の理力のようなものを感じます。どうやらその、お客様と一緒に来た泰ネイチヴお友達様がある種の傾向を持ったオーラのようなものを発信しているようです。 わたくしは感じたオーラから身体全体を使って分析した上で、ひとつの結論のようなものを導き出しそれを、こいつ絶対マイク持ったら離さへんタイプやな、という河内弁に翻訳して心の中で呟きました。 となるとわたくしの中に、こういったタイプの方は日の丸ネイチヴ言語藝人が歌う泰歌謡を聴かせ、言語的にいっぱついわしておかねばならない、という職業意識のようなものが発生してきます。 わたくしには機会ある毎に泰ネイチヴの方々の言語的脊髄を破壊せねばならない、という職業的使命があるのです。そうです。奴等に世界の広さを教えておかねばならないのです。 奴もわたくしのオーラを察知したのか、泰歌謡でネイチブに勝てる思とんのかワレ、というような河内弁翻訳済オーラを返してきます。挑戦的です。 なんやとコラおどれがやろうとしとる事が日本でキムヨンジャにカラオケ勝負挑む事くらい無謀やゆうことを身をもって教えたろやないけ、とわたくしは心の中で無茶苦茶大げさにそう呟き返しました。こういう発言を日本語でハッタリ、といいます。 そんな電波的な駆け引きの末、当然のようにわたくしたち三人は食事終了後すぐそばのカラオケ屋に場所を移すことにしました。 言語的には向こうがホームでこちらがアウェー。 地勢的にはこっちがホームで向こうがアウェー。 まさに条件は五分と五分。 一対一の漢の勝負の火蓋がここに切って落とされたのです。 勝負は長期戦になりました。二軒ハシゴして交互に歌いまくりです。奴は隙を見せるとすぐに固め打ちしてきます。わたくしも相手のガードをついてすぐに強い攻撃をしなければなりません。そうしないと奴の連打に対して防御一辺倒になってしまいます。 結局、戦いはどちらが倒れることもなく最終ラウンドにもつれ込みました。実に四時間という長時間に渡って二人で打ち合いを続けたわたくしたちは、もう判定の結果などどうでもいいくらいに精神的に充足しきっておりました。 その充実感の中、わたくしと奴はふとある存在に気がついたのです。 わたくしたちのテーブルですっかり真っ白な灰になってしまっているお客様の存在に。 そんなに泰語スラスラと読めるわけでもないです。 そんなお客様に対して実に四時間以上も泰歌謡による洗脳。 初対面だというのに酷い仕打ちです。 いえ、客観的に見てこれは仕打ち、と言った段階をとうの昔に通り越しています。 まさに拷問です。 わたくしは心の中ですぐさま剃髪眼帯装着しリングサイドコーナー下に降りると、ジョおおおお、すまなんだじょおおおお、と丹下段平憑依状態で心の中で呟きながらお客様に言葉を掛けました。 しかしお客様は、四時間もの泰歌謡放置拷問ですっかり真っ白になられており反応自体がうつろです。 結局お店を出てからしばらくリハビリした後、お客様と奴は豪雨の中タクシーで帰って行かれました。お客様はまだ少し灰がくすぶった状態のままでした。 わたくしは、わざわざ日本からお土産まで持ってきていただいた有り難いお客様に対して酷い事をしてしまった、と自責の念でいっぱいです。 しかも一軒目の食事と三軒目のビール代奢って貰ってるし。 なんか藝人として凄く大事なものをなくしてしまったような気がします。 それどころかよくよく思い出してみると、今年五月にも僻地のオケ屋の従業員達に言語的トラウマ刷り込むだけのために、身体の具合が悪い他のお客様を放置したまま一曲歌ったような気がします。 そういった過去や今回の悲劇、そして先日の露西亜人に完敗した現実をふまえた上で、わたくしは今後お金を払って歌うカラオケ、というお気楽な表現手段を自制せねばならないのであろうと思った次第です。 とりあえず反省せねばならない、と思ったので罰として三日でいただいたそばめしチャーハン八人前、全部食いました。美味しかったです。
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