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十月十一日(水)

 実は皆様に隠していたことがあるのであります。

 八月十七日の日記で、儂の日常的運動内容を皆様にお伝えし、以下引用、


 で、せっかくなのでこの堅実さに従って、きっちりやることを片付けることにします。まず、各九十九回まで達した運動メニューに前蹴り四十四回を加えて一日一回ずつ増やしてゆきます。

な発言をしたのでありますが、実はその翌日からおとといまで二ヶ月近くもの間、まったく運動しておりませんでした。

 ええ、すっかり忘れていたのであります。そんな発言をしたこと自体をそんな発言した直後に。もしかしたら忘れたのはそんな発言をしたからなのかもしれません。

 先月なぜかこの日記をご賞味いただいているお客様が何人かたてつづけにこちらにいらっしゃって、あんなにトレーニングしているワリにはそんなに健康そうじゃないよね、旨のご忠告を何回もいただき、今になってじわじわと自分が吐いた言動を思い出してきた、と言う次第であります。

 そういった情勢をふまえた上で、おとといからまた開始しました運動を。

 二ヶ月近くもやっていなかったのでありますから、日々向上していてやめた時点でピークだった運動内容と同じものをこなせるわけがありません。

 が、こなせました。

 鉄棒ぶら下がり以外のメニューはあっさりノルマクリアです。自分でもびっくりです。侮ってはいけません訓練によって養われた肉化した身体的記憶というものは。

 儂は昨年末ぷよぷよとしてテレビに出まくっていた高橋尚子さんがとんでもない世界記録を打ち立てたとしても何も不思議はない、と身をもって思い知った次第であります。身体的な貯金というものはそう簡単には目減りしないようであります。

 がしかし、ひとつだけ衰えていた鉄棒ぶら下がりの記録なのでありますが、開始二日目の昨日、いきなり今までの最高記録が出やがりました。

 おかしいです。いくら何でもこれはおかしいであります。二ヶ月何もしなかったのにどうしていきなり新記録が樹立できるのでしょうか。何か原因があるはずであります。儂はいろいろと原因を追及した結果ひとつの結論に達しました。

 鉄棒の滑り止めは、木炭の粉末よりも普通の灰がいい。

 どうやら先日、おでんを作る、と言う理由のもとに七輪で火遊びして思いっきり炭を消費し尽くしたのが素晴らしい真理を導き出したようです。

 しかし、炊飯時に電気釜に紛れ込ませる分の木炭まで灰にしてしまったので、ご飯がいつもよりちょっと美味しくないのは悲しいのであります。

 今日の結論としては、そろそろ新しい木炭を補充しなければならない時期だと言うことなのであります。
  


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