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平成十三年十月二十三日(火)
電話がかかってくること自体がめずらしいこの事務所兼住居に昨日電話がかかってきた。知り合いの社長さんからだ。 「あのさあ、白石さん、あした空いてます?」 「まあ空けられるっちゃあ、空けられますけど自由業ですから」 「お忙しいところ申し訳ないですが、テレビの取材があるんだけど、よかったら協力して欲しいんですよ」 「取材って、出演ですか?」 「うん、こっちに住んでいる日本人の取材なんですよ」 そこまで社長の言葉を聞いて、ああまたか、と儂は思った。そんな取材依頼なら何度か受けたことがあるし、何年か前、実際に出演したこともある。 その時は元ボクサーの俳優さんとプロレスラーさんという、いかにも新宿二丁目の皆さんが好みそうな二人がセットでこっちのボクシングジムを訪問する、という内容の取材だった。 しかしえてしてテレビの取材というものはあらかじめ撮るものが決まっていて、その台本に準じた型に取材対象を押し込めてしまう傾向にある。故に、そのときの儂は、見事にそのテレビ制作会社が決めた、こっちでボクシングを練習する日本人、と言う型にはめられてしまったのだ。儂は藝人としてはなはだ不本意だった。 そして更に不本意なことにはその番組が日本国内あらゆるところで何年も再放送されまくったために、作品製作費を稼ぐために日本で賃労働しているときも、なんでこいつテレビに出てたのに日本にいるんだ、と言うような視線を浴びるハメにな 「ちょっと言いにくいことなんだけど、こっちに住んでいるバカな日本人の取材なん
「お受けします。光栄です」 儂の即答に多少面食らいながら社長さんは場所と時間を指定して受話器を置いた。 バカとしての取材依頼なら、断ってはならないような気がするプロのバカとして。ここで断ってはこのメールマガジンを読んで下さっている二百三十五名のお客様に合わせる顔がない。 というわけで行ってきまーす。プロのバカであり、養殖系ボケの言語藝人としてしっかりバカやって来る所存です。 でも、カメラに向けられて緊張のあまりヘタレるか、とんでもないことを口走って場の空気を凍らせるかのどちらかと見た。
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