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平成十三年十一月二十日(火)

 気がつくと二週間もこのメールマガジンの発行をサボっていた、と言う事実とはあまり関係ないが、昨日夕方、部屋を出て外に夕飯を買いに行ったのだが、階下降りてゆくとミニマート前で屋台を営んでいるお姉さんが、どこに行くんだ? と俺に聞く、俺はすかさず、飯、と答えた。お姉さんはすぐにおれの言葉に反応して、てめえここで食えバジル豚肉炒めご飯だなこの野郎二〇バーツとっとと出しやがれ、と言うような意味の泰語を吐いた。

 商売人にあるまじき粗野な言動である。

 しかしこのアパートメントにおいて、成虫オスでありながらも地域社会に貢献する労働行為をしていない非常に肩身が狭い立場の俺はお姉さんの言うことを聞かざるを得ない。それは抗うことができない現実なのだ。お姉さんに逆らったら生きていけない。

 俺はお姉さんに二十バーツ払ってアパートを出た。雑貨屋に行き、残った小銭でケミカルテイストが強い三バーツのオレンジジュースを買い、その液体をストローで吸い込みながら屋台に戻ると、屋台のテーブルにはムスリム姐さんがいた。

 ムスリム姐さんは今座っているミニマート前の屋台から二十メートルも離れていないアパートの入口で屋台を営んでいる。しかしここ何日か店は出していても、昼間は入口脇の部屋で寝ていることが多かった。そして今、その姐さんの前にはスープが二種類あり、姐さんはそれを交互に口に運んでいた。ひとつは牛肉と野菜の漬け物が入った透明なスープで、もう一つはキャベツと鶏肉をココナツミルクで煮込んだ真っ白なスープだった。姐さん一人で食べきれる量ではない。

 さっきまで中華鍋を振ってバジルと豚肉を炒めていたお姉さんが俺の注文を持ってくると、ムスリム姐さんの前に置いた。この店にはテーブルがひとつしかない。俺は姐さんの向かい側に座る。「あたしこれ全部食べきれなくて勿体ないから一緒に残り食べて頂戴」姐さんは目の前に座った俺に向かってそう言った。

 俺は、食いきれないのになんでこんなに一人で注文してるのだろうこの姐さんは、と思いながらひとつの事実に気づいて太陽が沈んでしまって暗くなりかけた空のどこにもないことを確認する。そうだ、そういえばラジオでそういっていたような気がする。

 つづく。
   


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