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平成十三年十一月二十一日(水)

 ラマダーンなのだ。回教徒は定められた期間、日中には食べ物や水を一切食してはならない、という戒律がある。その期間ほとんどの回教徒は食べ物のありがたさを知ると共に空腹感と共にアラーへの感謝を気持ちを募らせるらしい。

 実母の子宮口に頭を突っ込み産道をくぐり抜けて初めて光を感じて以来、一定に刻み続けた三十二年という物理的時間の中で、断食をしたことが俺にも何度かあった。

 期間はまちまちだが俺にとってその経験は空腹感と共にある種の神々しい感覚の変化を感じることができた貴重な経験だった。

 それになにより、生活が不摂生になりがちで、体重が増えやすい俺にとっては身体を根本から是正して、生活そのものを考え直すいい機会だった。断食をすると体重が減るのでダイエットにも良い。おそらく目の前のムスリム姐さんもその時の俺と同じ様な状態にいるのだろう。

 俺が言われるがまま二種類のスープを有り難く食しながら姐さんに、いつまでなの? と問う。来月十五日頃まで、と答えた。大変だな、と俺は思う。

 姐さんの前にはマンゴーのソムタムが運ばれてきた。姐さんは俺が食っている余りのスープに手を着けることなくそのソムタムを食い始める。

 さらに甘く味付けされた糯米と、黄色く熟れたマンゴーがニコ運ばれてきて、姐さんは手慣れた手つきで、皮を向くとそれらをもの凄い勢いで口に入れはじめた。

 おそらくあと二十日間ほど、この、オラ日ィ沈みよった食ったるでえ状態が毎日続くのだ。
 
 
 

 訂正する。回教徒のラマダーンはダイエットとしての効果はあまり期待できないようだ。
   

 
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