低レベルなヒトの覚え書き

●超特別企画: 停電時の明かりに関する一考察 〜サラダオイルランプを中心に〜


1. サラダオイルランプの製作とその注意点および関連するアイディア

(1) イントロダクション

2011年3月11日。 いろいろなことがありました。
そして、事態はまだまだ収束しそうにありません。
幸い筆者はこれまでのところ特に何の被害も受けていませんが、とりあえず今回は、またいつ起きるかわからない停電に備えて、サラダオイルを燃料とするランプの製作に取り組んでみました。

(2) 絶対に読んでほしい注意事項

まず、当たり前のことですが、とにかく火の扱いには十分注意してください。
それから、ここで紹介するサラダオイルランプは、その名の通り、サラダオイルを燃料として使用するために考えられたものです( 註1 )。 このランプで灯油やガソリンやアルコールなどの「一般に燃料として使用されている液体」を燃やすことは、非常に危険なので絶対にやめてください。
ちなみにネット上を検索すると、灯油ランプやアルコールランプの自作に関する記事もいくつか発見できますが、その種の危険物の扱いに関する専門的な知識を有している人以外は、安易に真似をしないほうが無難です。 素人がうっかり手を出すと、文字通りの意味で火だるまになる危険性があります。
もちろん、そういう意味では食用油といえども油には違いないので、とにかく本当に火の扱いには十分注意してください。

註1: サラダオイル以外でも、オリーブオイルや天ぷら油などの食用油なら大丈夫そうですが、筆者自身は検証していません。

(3) 今回の元ネタ

サラダオイルランプに関しては、ネット上に多くの製作記事が掲載されていますが、そのほとんどの元ネタと思われるのは、財団法人市民防災研究所のウェブサイトにある記事です。

[URL]

(4) 製作の方針

さて、今回の元ネタのサラダオイルランプの重要な特徴としては、次の3点が挙げられると思います。

ただ、このうち2点目に関しては、大雑把でもなんでも事前に作り方をおぼえておかないと話になりませんし(停電したらwebは見られない)( 註3 )、ことが起きてから慌てるよりは、平時のうちにしっかりしたものを作って備蓄しておくほうが安心だし安全という気もします。
というわけで今回は、前記「防災アイデア」のページにある「ジャムの瓶など、蓋の付いたものにセットしておくと、こぼれる心配もなくいつでも使えます」という記述を参考にして、そんな感じのランプを作ってみることにしました。

註2: もちろん、非自炊派の単身世帯など、家にサラダオイルがないケースもあるとは思いますが、筆者の最近の経験からいうと、あらゆる店頭からロウソクや乾電池が消えてしまったときでも、サラダオイルは比較的容易に入手できるようでした。

註3: いちおう、うちでは元ネタのページをプリントアウトしてあります。

(5) 結果と考察

細かいことは省略して、まずは出来上がったものの画像をご覧ください。 筆者が何をしたかったのか、どんな材料を使用したのかは、画像を見てもらえばわかると思います。
ただ、正直に言いますと、こいつは実際にはまったく使いものになりませんでした。

ランプ画像1-1-1(失敗したサラダオイルランプ:組み立て時) ランプ画像1-1-2(失敗したサラダオイルランプ:収納時)

タンクに燃料を入れて(今回の試験ではビンの底が軽く浸る程度)、灯芯の先まで油が染み込むのを待って点火して、それなりの明かりがともったのもつかの間、わずか数分で炎は自然に消えてしまいました。
燃料はまだ十分残っているし、試験を行った室内は無風だし、点火した当初の様子を見る限り灯芯に問題があるとも思えない。 ではなぜ?

ということで、とにかく試験と観察を繰り返すうちにようやく気づいたのが、炎が消えてしまった時点で、灯芯の先端の燃焼部分から2〜3cmの範囲だけが半乾きの状態になっていることでした。
ここから考えられるのは、「今回の試験で実際に燃焼したのは、その半乾きになった部分の灯芯に事前に染み込んでいた燃料だけだった」ということであり、つまりは「灯芯の先端部への燃料供給がうまくいっていない(灯芯の先端で燃料が消費される速度に比べて、タンクから灯芯の先端部まで燃料が染み込んでいく速度が遅すぎる)」ということです。

そこで、作ったばかりのランプから灯芯だけを抜き出して、実際に燃焼する部分と燃料の液面の適正な距離を探ってみたところ、安定した燃焼を持続させるには、その距離は最大でも2cm程度までに収めるべきであるらしいことがわかりました。

ランプ画像1-2(灯芯先端と燃料液面の距離の実験)

今回自作したランプのデザインは、一般的なアルコールランプや灯油ランプと同じイメージで考えたものだったのですが、やっぱりサラダオイルはアルコールや灯油のようにはいかないようです(おそらくは粘度か何かの関係で)。
実際、あとになってあらためて元ネタのオイルランプ製作記事を見返してみますと、燃料となるサラダオイルの量について、高さ1.5cmの灯芯支えの下半分が浸るまで入れるようにと指示されていました。

なお、関連しそうな資料をいくつかネット上で見つけましたので、以下に紹介しておきます。

[URL]

(6) バリエーション

(6-1) 古典的な方式

知らない人もいないとは思いますが、電灯が普及する以前の灯油ランプが普及する以前の江戸時代ぐらいには、ここで紹介したサラダオイルランプと同様のものがロウソクとともに夜の明かりとしてごく普通に使用されていました。
今回の元ネタのサイトのランプにおいては、透明なガラスのコップに燃料タンクと風防の役割を兼ねさせるという改良(たぶん)が加えられているわけですが、逆にいうと、単に最低限の明かりを確保するだけなら、昔の古典的なデザインのままでも十分役立ちます。
作り方は、適当な小皿に適当な食用油を入れて、ティッシュ(もしくは天然繊維の布の切れ端か紐)を材料にした灯芯を浸せば、それでもう完成です。

ただし、灯芯を皿の縁に直接もたれさせた状態で長時間燃焼させると、皿に熱が伝わってけっこう熱くなりますので、実際に使用する場合は皿自体を耐熱性のある台の上に置くとか、何らかの灯芯支えを用いて炎の熱が皿に伝わりにくいようにするなどの工夫をしたほうが良いと思います( 註4 )。

註4: これは完全な余談になりますが、実は筆者は、ここで触れたような皿と灯芯(と燃料)だけから成るシンプルな照明器具の一般的な名称を知りません。
いちおう「油皿」とか「灯火皿」という候補は見つけたのですが、本当にそれらでいいのかどうか。 「灯明」は照明器具そのものを指す言葉ではないようですし。
ちなみに、近縁種の器具で灯芯を燃料容器の中央部に立てる方式のものは「ひょうそく」と呼ばれるようです(たぶん筆者の失敗作もこれ)。

(6-2) 灯芯をコルクで浮かす方式

今回の元ネタのサイトとは別に、サラダオイルランプに関してちょっと面白いアイディアを紹介している記事を見つけました。
具体的な情報は下記のリンク先を参照していただくこととして、ここで概略だけを述べれば、その最大の特徴は燃料の液面に浮かべたコルクを灯芯支えとする点にあります。
このやり方だと、燃料が減っても液面と灯芯先端の距離が変化しないので、投入した燃料を無駄なく燃やすことができそうです。
一方で、コルクがゆらゆらと液面を漂っている様を想像すると、なんとなく落ち着かない気分になるので(筆者だけか?)、その辺は改良の余地がなくもないかもしれません。

[URL]
(6-3) ランプではなくロウソクにしてしまう

サラダオイルなどの食用油を灯火の燃料にする方法としては、ここまで紹介してきたランプのほかにも、「固めるテンプル」などの商品名で市販されている凝固剤を利用して、ロウソク状に成型してしまうやり方が広く知られています。
ランプ方式に比べると製作の工程がやや面倒になることと、肝心の凝固剤がないとどうにもならないのが難点ですが、燃料漏れを心配しなくて良いなどの利点もあるので、いちおうここでも紹介しておきます。 詳しいことは、ネット上にたくさんの記事があるのでそちらを参照してください。
まあ、基本的には適当な型枠に灯芯(ランプで使うのと同じようなもの)をセットして、そこに油を注ぎ込み、凝固剤を投入して固めるだけです。
ただし、筆者はまだ一度もこれを実際に試してみたことはありません。
また、「固めるテンプル」の販売元であるジョンソン社は、こうしたロウソク作りに使用することを推奨していないというか、むしろ「絶対にやめてほしい」的なスタンスのようなので、その点はしっかりと認識しておいてください。

[URL]

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R.2: 2011/07/12
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