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シンデレラによる正三角点(アポロニウス点)表示

2005年6月2日 追記を追加

◆平面幾何プログラム「シンデレラ」による正三角点表示

 最近「シンデレラ」と呼ばれる平面幾何のソフトを手に入れ、前述の正三角点の表示ができましたので、掲載します。正三角点の理解に役立つと思います。ただし、球面三角ではなく平面です。正多角形による平面タイル張りには使えるかもしれません(苦笑)。

● シンデレラについて

 シンデレラは市販の平面幾何の学習ソフトです。以下の書籍に同梱されています。

 リヒター-ゲバートJ、コルテンカンプUH 著、阿原一志 訳。シンデレラ 幾何学のためのグラフィックス CD-ROM付。シュプリンガー・フェアラーク東京、2004(2003)、ISBN4-431-70966-5

 幾何的な絵が描けるだけでなく、点を動かしても作図の手順が残っているので、関連する直線の傾きや交点が適切に移動します。
 今回は、変形一様多面体の座標算出に出てくる「正三角点」の作図をしてみます。出来上がりの図を上に掲載しました。シンデレラをお持ちの方は、以下のリンクで図のファイルを取得できますので、遊んでみてください。頂点A,B,Cを適当に動かすと、赤い三角が正三角の形を保ったまま移動・拡大縮小します。

tri2.cdy へのリンク

● 正三角点について

 変形一様多面体には「余剰の正三角形」が、一頂点につき3回出現します(唯一の例外を除く)。残りの正多角形はシュワルツ三角の各頂点の角度で決まります。上図の△ABCがシュワルツ三角に相当します。ただし、本来のシュワルツ三角は球面三角形です。
 余剰の正三角形の頂点は、上図の点Oを各辺を鏡に見たてた対称の位置の点、つまりQ,S,Uです。この点Oの位置の求め方を以下で述べます。

 (1) 各頂点から角の二等分線を対辺に向かって描きます。
 (2) 二等分線と各辺の交点をD,E,Fと名付けます。
 (3) D,E,Fで垂直に交わり、元のA,B,Cを通過する円を書きます。そのためには、A,B,Cの各辺に対する対称点H,L,Nを描き、三点を通る三円(A,D,H),(B,E,L),(C,F,N)を描きます。
 (4) 三円は一点Oで交わります。これが「正三角点」です。シンデレラの操作としては、任意の二円の交点を指示することになります。三円を指示してしまうと、次の操作に移れません。

 交点は2カ所に見えます。図では点Qと点Hの間にもう一つの交点があり、これも解なのですが、とりあえず元の三角内の点を「右正三角点」と名付け、こちらを指示することにします。点Qと点Hの間の三円の交点は「左正三角点」と呼ぶことにします。参考のため、左三角点も描いた図のファイルを以下のリンクに用意しました。△ABCを裏返したりすると、名前の由来が分かると思います。右正三角は右向き三角と強く関連しているのです。

tri3.cdy へのリンク

 (5) 点Oの各辺に対称な点を加え、Q,S,Uとします。この3点を結ぶと、不思議なことに正三角形になっています。

● 誰かつっこみをお願いします

 情けない話ですが、以上の操作でなぜ正三角形が導出されるのか、私は証明していなかったはずです(少なくとも忘れました)。私が用意した一様多面体プログラムpolyhedでも、この「事実」は利用していません。
 本物のシュワルツ三角は球面上にあり、シンデレラでも最初の球面三角(シュワルツ三角に相当)は作れるのですが、その先の操作が可能かどうかが、まだ分かっていません。最終目標の球面正三角形は今回と同様の操作で作れるようですが、証明はさらに困難になると思います。

2004年12月21日 岡田好一


追記: 変形一様多面体の頂点座標の算出方法確定 (おそらく…)

 シンデレラのサイト(http://cdyjapan.hp.infoseek.co.jp/)に上記の話題を提供しましたところ、BBSの参加者から上記の「正三角点」にはすでに「アポロニウス点」という名称があることが指摘されました(参考文献)。ここに感謝申し上げます。
 アポロニウス点はアポロニウス円の交点で、アポロニウス円とは内角・外角二等分線の対辺との交点を直径とする円です。

 そこで、アポロニウス円/点を球面三角形に当てはめてみました。

try22.cdy へのリンク

 点Xが球面上の「アポロニウス点」です。元の三角形は△ABCです。アポロニウス円に相当するのは、3つの球面楕円(球面と頂点が中心にある楕円錐との交点)です。もう一カ所(画面右下方)で3楕円が交わっています。

 この「アポロニウス球面楕円」の構成方法は、シンデレラの楕円幾何モードにて、
 (1) 球面三角の各頂点の内角二等分線および外角二等分線と対辺の交点を取る。この2点が「アポロニウス球面楕円」の長径または短径になる。
 (2) 得られた2点の垂直二等分線および対辺に対する、元の頂点の鏡像点を置く。
 (3) 元の頂点を加えて5点を通る二次曲線を描く。
 上図は球面表示した場合の図です。

 心証的にはこれで十分と思います。以上が正しいとしたら、残る作業は、

 (1) 球面正三角形であることの証明
 (2) 元の球面三角形の頂点(ABC)の位置ベクトルから「球面アポロニウス点(X)」を算出する式の導出。これが初等関数の範囲だったらうれしい。
 (3) 変形一様多面体の個数が、現在まで数え上げられている数であることの証明

 アポロニウス先生を満足させられるか…。
 ちなみに、変形一様多面体に対応する球面三角形の頂点の角度は、(90度、60度、60度)、(90度、60度、45度)、(90度、60度、36度)、あるいはその数組で球面三角形になっているものです。

参考文献 : ソルテY、ソルテR 著、戸田アレクシ哲 訳。なぜ初等幾何は美しいか―三角形幾何学。東京出版、2004(2002)、ISBN4-88742-058-7

2005年6月2日 岡田好一