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日刊新聞24時

「好きな教科は英語・・・・海外に住むって夢もあるし。」
「なるほど。OK、ありがとう。じゃあ次の出席番号の人来てください。
 ・・・・・編集長、いい記事になりそうですね。」
「もちろんだとも、木村クン。」
二年B組の教室の昼休み。
日刊新聞の取材で、クラス紹介のための取材が行われていた。
取材しているのは編集長たる新聞部部長と、木村と呼ばれた助手の二名だった。
「二年B組のキャッチフレーズは『明るくて活発なクラス』だ。どうだい?」
編集長と呼ばれた生徒は自信気に言った。
「いいですね。・・・よし、君のプロフィールは完成だ。取材協力感謝するよ。
 はい、次の人・・・って・・・・えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
いきなり助手が素っ頓狂な声をあげた。
「野々口勝美ッ!?」
「なんだよ、いきなり?」
慌てまくっている助手に、顔をしかめながら勝美が聞いた。
「編集長、一大事です!」
「・・・・やってくれたね、野々口クン。」
「だから何が?」
勝美は怒気を含んで再び聞き返す。
「はぁぁ・・・・勝美クン。・・・・『花畑』をどう思うかね?」
編集長はかなり気落ちした様子で聞いてきた。
いきなりの質問に戸惑いながら、
「・・・う〜ん、やっぱり綺麗とか美しいってカンジかな。」
「その通りだ、勝美クン。花畑は綺麗で美しい。
 ところが!!!その花畑のド真ん中に不発弾があったらどうする!?
 綺麗で美しい花畑は、いっぺんでデンジャラスになってしまうのだよ!
 君のせいで今考えた、二年B組は『明るくて活発なクラス』というイメージ像
 が台無しだ。」
「・・・・・殴るよ?」
「待ちたまえ。・・・・・仕方ない。二年B組の紹介で君のことは書かない。
 だが、安心したまえ。後日、君の独占取材を行おう。
 タイトルは『実録・学校犯罪』なんてどうだい?」
「ダメに決まってんだろッッ!!!!!」
勝美の怒声と共に、編集長の悲鳴が教室に響いた。


「見事に勝美ちゃんの事、書いてないね。」
次の日、学校の日刊新聞には勝美のことは全く書かれていなかった。
その事を国香に廊下で指摘され、勝美は怒りの炎をあげた。
「くっそ〜、あのバカ編集長。今から殴りこんでやる。」
「その必要はないよ、野ノ口クン。そう思って自ら来た。」
いつの間にか、男子生徒・・・編集長が横に立っていた。
「ど〜いうことだよ!何で私の事が書いてないッ?」
「昨日言ったはずだ。書かない、とね。独占取材することも言ったはずだよ?」
「独占取材の内容も気に入らないんだよ!」
そう言って、編集長の腹に拳を叩きつける!!だが・・・・
「ふふふふふっ。甘いよ、野々口クン。
 君の半径二メートルはレベル十の危険地帯だ。
 そこに踏む込むなら、それなりの準備が必要だろう。」
どうやら制服の下に鉄板か何かを仕込んでるらしい。
殴ったとき、感触が異様に硬かったのだ。
「むぐぅ・・・・そう来たか・・・」
「どうやら『学校犯罪』の件は不満のようだったからね。
 だから、新しい企画を用意したんだ。」
「また、変なヤツだったら即保健室送りにするからね。」
「大丈夫だとも。そこで・・・・覚えてるかな?
 一週間前、朝の登校時に一人の生徒を殴り倒し、
 その後、その男子生徒を引きずりながら近くのゴミ捨て場に投棄した件だ。
 その男子生徒が君にリターンマッチがしたいと言ってね。」
編集長は企画書と生徒からの挑戦状を手渡す。
「やはり、君への取材は『戦いの強さ』がメインだからね。
 ケンカ不敗伝説を誇る君をしては、この挑戦は受けるべきだよ。
 先生からの許可もある。空手部顧問の格闘好きな人からだ。
 まあ、先生には変わりあるまい。」
そう言って殴られるのが怖いのか、編集長はさっさと逃げてしまった。
「勝美ちゃん、何かすごいことになってない?」
「まだ、やるとも言ってないのに・・・どうするんだよ、これ。」
勝美は無理やり渡された企画書と挑戦状を交互に眺めた。
国香は心配そうに言った
「やっぱりやるの?」
「もちろん!!こうなったら全員地獄に送ってやる!!」


放課後、空手部の部室は恐い空気が流れていた。
中にいるのは、空手部部員数名、その顧問、編集長と助手、そして勝美と
対戦相手の生徒Aだった。
「よく来てくれたね。さっそく、あれをしょってくれ。」
編集長は、勝美に鉄アレイ入りのリュックを指差した。
「は?何でそんなことしなくちゃなんないんだよ?」
「勝美クン、企画書を読んでいないのかね?」
「あんなの、さっさと捨てちゃったよ。」
「・・・・・これだからもう・・・いいかね、対戦相手は一度君に負けているん
 だ。ハンデとして総重量五キロのリュックを背負う事に疑問はあるまい。」
「あるッ!絶対あるッ!」
「第一、君の戦闘技術を見るのに開始早々決着が付いたらわからんだろう。」
「戦闘技術って・・・人を兵器みたいに言って・・
 わかったよ、やればいいんだろ・・・・・うっ・・・重い。」
一端は嫌がったものの結局、勝美はリュックを背負うことになった。
「で?私の対戦相手は?」
「俺だ。」
空手胴衣を着込んだ生徒が一歩前へ出る。
「野々口ィィィ、お前にやられた事はしっかり覚えているぞ。
 お前にやられて、そのあとゴミ捨て場に捨てられて・・・
 ゴミと間違われて、そのままゴミ回収車に入れられそうになったんだぞ!!
 なんて可哀想な俺なんだ・・・。」
「・・・・・・」
「この場で借りは返す!んでもって、俺の気が済むまで殴ってやる!」
「・・・・五キロのハンデ背負った女子に言う言葉か、それが?・・・」
にらみ合った二人を尻目に、
「どうやら、かなり熱が入ってきたね。それじゃあ木村クン、頼んだよ。」
「それでは・・・・試合始め!!!」
編集長に促され、助手木村は開始を宣告したのだった。


「いやー素晴らしいですね。ここまでくると、格闘技って芸術ですね。」
助手は感嘆の言葉を発した。
「明日の新聞一面これでいけますよ。」
「そうだね。今度は観客を呼んで大きなイベントにしたい。
 それを記事にすれば、我が新聞部もメジャー部活の仲間入りだ。
 取材は十分したし。帰るよ、木村クン。」
「えっ、でも・・・・試合終わらせなくていいんですか?」
「木村クンの言いたい事も分かる。
 しかし、ここで去らないと、我らも彼の二の舞だよ。」
「そうですよね、行きましょう。」
そういって助手は彼・・・・勝美から一方的に攻撃を受けている男子生徒から
視線を外した。


「勝美ちゃん、本当にやったんだ。すごいよ。」
国香は新聞を片手に言った。わざわざB組まで感想を言いに来てくれた。
新聞には勝美の記事で埋め尽くされていた。
勝美に対する記事の評価は、絶賛のみである。今までケンカすれば、怒られて
きた彼女にとって、複雑な気分であった。
「落ち着いて考えたら、かなり騙された気がしてさ。
 あんまり嬉しくないんだよね。」
勝美は、静かに廊下に向かった。
突然、教室のドアが開き、編集長が現れた。
「今朝の新聞は見てくれたかな?」
「まあね。」
やる気のない勝美に対して、編集長の嬉しそうに会話を続ける。
「新聞部で君の事が、有名になってね。
 また、企画をやることになったんだよ。
 今度は、十キロを背負って・・・どうした?そんな恐い顔をして?
 ・・・・・何?・・待っ・・・ちょっと・・・」
がすッ、がすッ、がすッ、がすッ   ぐぁっしゃーーーーーーーん  
勝美の乱打は、後ろにあったドアと一緒に編集長を激しい音を鳴らしながら、
二年B組から強制的に退場させたのだった。


                                 RDN著
    


=後書きBy.原作者Azami=

RDNさんにいただきました♪
SELECTION直前くらいの勝美達の楽しくも殺気だった(笑)日常がうかがえます。
個人的にはなかなかめげない編集長がツボでした。
こいつこんな良いキャラだったとは……。
ハンデは桁がもう一つ違って五十キロでも結果は同じだったでしょうね。
何せラス戦、幼稚園児一人背負いながら戦ってますからね……勝美は。
こんなのが一人居ればそりゃあ学校生活もデンジャラスになろうってもんです(笑)