あなたのため(言葉の暴力)

最終更新日:2007-02-28

ちょっと治療に纏わる話で。

ある患者さんと話をしていて。
過去の体験、つらい話を聞く。

「あなたのためだから・・・。
もっとがんばりなさい。
怠けていてはだめ・・・。
これはあなたのためだから・・・。」

と、そんなことを言われ続けた。
しかし、とてもつらく、がんばれなかった。
そして、体調を崩した。
医療にかかった。
治療する中で、これ以上がんばらないことに決めた。
徐々に体調も良くなっていった。

私は、そんなとき患者さんの話をずっと聞いている。
そうなんですか。
まるまるなんですね。
それは大変でしたね。
そこで自分の意見をいったり、考えをいったり、
患者さんを否定することはしない。
ただずっと話を聞いている。
患者さんを受け止める。

私がいて、患者がいて・・・。
同じ場に存在していて。
それぞれの考えとか感じ方とかがあって・・・。
こうした態度は心理学、心理療法、先輩治療者などから学んだ。
患者さん、専門医などからも学んだ。

この「あなたのため」という言葉。
そういえば、普通使うかもしれない。
でも、どうして・・・。

その人は、他の人から言われた。

「これをしなさい。
もっとがんばりなさい。
あなたのためだから・・・。」

その人は、自分のためだと考えた。
自分のためにいってくれているのだと考えた。
そして、最初はがんばっていた。
でも、しだいにがんばれなくなっていった。
それでもがんばろうとした。
そして、体調を崩していった。

ここでちょっと思う。
本当にその人のため・・・なのだろうか。
もちろん、その人のためになることもあるだろう。
でも、がんばれなくなっていった現実がある。

適切な医療にかかり、修正することは正しいと思う。
がんばれなくなったことにきちんと対処すること。

たぶん、きっと、この「あなたのため」は必ずしも当たらないと思う。
「これをしなさい。あなたのためだから。」
普通、こう言われたら逆らえないだろう。

ということは、それを言った人が「それをして欲しい」から
そういったのではないだろうか。

となると、「あなたのため」ではなくて、
「私のため」に従いなさい・・・といえるだろう。
ただ、そうした意識があったかどうかは分からない。
無意識的に「あなたのため」を使ったかもしれない。
「あなたのため」と言った方は自分から責任が離れていく。
そして、「あなたのため」と言われた方は自分のためであって、
責任がかかってきて、逆らえなくなってしまう。

では、どうしたら良いだろうか。
まず、「あなたのため」という言葉を横に置いておく。
相手は「これをしなさい」という。
それが言われた側にできるか、できないか。
冷静に考えてみる。
「あなたのため」という負担、重荷を外して。
その上で、できることか、できないことか。

上記の話では、がんばったができなくなっていったわけである。
そのとき負担、重荷になったのが「あなたのため」という言葉である。
判断や決断を迷わせたわけである。

そう考えてみると、この「あなたのため」という言葉。
使い方を間違えると大変なことになる。
「あなたのため」になるどころか、
その人を傷つけてしまう。

十分に気をつけたい。

ちょっと、そんなことを学んだ。

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