粗悪な点訳

最終更新日:2008-09-01

ちょっと、点字のことで。
最近始まったことではないのだが…。
以前、粗悪な点訳物を手にしたことがある。
それはどういうものか?。

簡単なところでは、
点字が間違っている、
ますあけが間違っている、
レイアウトが読みにくい、
点が破れている…。

それはどうしてなのか?。
点字に詳しくない、十分に熟達していないからなのか?。
忙しくてきちんと校正する時間がなかったのか?。

点字とは何だろうか?。
それは、視覚障害者の文字である。
現在世界的に広く普及している六点点字は、
フランスのルイ・ブライユさんが考案したものだ、と。

点字は、指で触って読む文字である。
また、専用の道具を使って点字を打つことができる。
それは、視覚障害者が自力で読み書きすることのできる文字である。

私たちが何か点字の本を読みたいとき、
または、普通の本を点字で読みたい場合、
プロの点訳者にお願いして点訳していただく。

難しい専門書、医学書、哲学書、または音楽の楽譜など、
専門的な知識と経験が要求されるような場合
専門点訳を行っている点訳者にお願いする。

視覚障害者は、点訳所を指で触って理解する。
点字の読み書きを長いことおこない、訓練し、学習している場合
点字を1度触るだけで即座に理解できる。
それは、点字を読みとる力が高いこともあるが、
点訳の制度が高いことも重要である。

点字表記が正確である、
ますあけ、分かち書きが正確である、
レイアウトがきれいで読みやすく、理解しやすいこと…。

質の高い点訳を行うにはどうしたら良いのか?。
点字といえば、プロの点訳者が作成して、
点字使用者が読むものと考えがちである。
しかし、それは間違いであると教わった。
点訳者と点字使用者がお互いに協力して作成するものである。

最近では、音声パソコンを使用している視覚障害者も多くなっており、
点字図書のみということも少なくなっている。
音声パソコンを使えば、電子図書を読んだり、
パソコンを通じて、メールやネットを利用して、
情報が処理できる。
その分、アクセスできる情報の選択肢も増えてきた。

そういう便利な時代、社会にあっても、
情報を点字で読んだり書いたりしたいこともある。
直接見る、読むことのできない普通の図書を、
プロの点訳者にお願いして点字にしていただく。
そして、それを指で読む。

点字の読み書きという点では、視覚障害者の方が慣れている。
点字の間違い、ますあけ、レイアウトなどのミスも容易に気が付く。
そこで、校正の一部を視覚障害者が行う。
また、点訳者も読みやすい点訳所を作るために助けが必要となる。
より良い点訳所を作るため、こういうシステムは当たり前になっている。

最近、一般的に見て、点字に触れる機会はぐんと増えた。
スキルアップ、生涯学習の講座などでも点訳講座というのもある。
道具もそれほど高くない。
道具さえ揃えば、初心者でも点字を書くことができる。
(といっても、かなり難しいかもしれないが。)

以前、ある点訳者と出会った。
その方は何年も点訳を行っていた。
しかし、点字図書館に納める点訳所とか、盲学校で使う点訳所とか、
難しい専門点訳を行っていないらしい。
十分な知識や経験がないようだった。
それでも専門的な点訳を行っているようだった。

で、点訳された作品は…。
ちょっと…。
それはどうかな?というものだった。

その方の所属している会の点訳も似たり寄ったりらしい。
こういう話はときどきあるらしい。

また、こんな話を聞いたことがある。
点訳者の仲間で、プロで専門点訳をしている方々がいる。
あるとき、粗悪な点訳を目にして、
それを作成した方と話をした。
しかし…。
話が通じなかったらしい。
プロの点訳の常識が通らない。
その方が言うのに、ずっとこの方式でやってきたのだから、
これでいい、と。
粗悪な点訳を行う人の周りには、やはり、粗悪な点訳を行う人たちが
集まるらしい。
これは、とても残念なことである。

ということは…。
点訳者の全てがきちんとした点訳が行えるというものでもないらしい。
点字図書館、学校、専門家が手にできる点訳所を作れる者と、
自分かってに点訳まがいのことを行い、自己満足に浸っているものとが
いるという。

点字とは、点訳とは、視覚障害者の使う点字という文字である。
それに触れ、そこを支え、点字のすばらしさを共感できること。
日々の学習、経験によって高めるものである。

視覚障害者の読みやすい、理解しやすい、お手本となるような
点訳所を作成すること。

粗悪な点訳所を無神経に作り続け、自己満足に浸るような者は…。
どうなのだろうか?。
はたして必要なのだろうか?。
いらないのでは…。

今も、点訳所を必要としている視覚障害者がたくさんいる。
点訳を行っているプロの点訳者もいる。
それを必要としている人たちがいて、
それに協力している人たちがいて、
点字のすばらしさに共感できる人たちがいて…。

より良い点じ、点訳がずっとずっと続きますように。

ちょっと、そんなことを思った。
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