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    金縛りのお好み焼き






ずいぶんと遅くなってしまった。何をしていた訳でもないのにもう夜の11時を回っていた。
月も星もない暗がりの帰り道、点々とある家々からの窓や玄関灯の明かりのみで足元を確かめつつてくてくと。
真っ暗な竹ばやしの向こうに広がる、くもり空のほうがまだあかるい。
でこぼこのアスファルトは夏の熱気にやられたのだろう。それにしても車一台通らないとは。
しばらく歩くと神社が見える。正月と祭りの季節以外は寂れたものだ。
そう言えば子供のころ賽銭泥棒をしたことがあった。
引越して来たばかりのころ学友に誘われて猜疑心(さいぎしん)もなく。
まだ8歳ぐらいだったと思う。その学友は手慣れた感じで賽銭箱を斜めに傾け、箱の底にある取り出し口から
すべての小銭を取り出した。あの歳にしてはやけに手慣れていた。
今思うにその子は、誰か年上の遊び友達に教えられたのではないのか。どうやらこの地域の
伝統的な遊びの一つだったのかもしれない。

鈍い足音が続く、緩やかなカーブの道を進むと大きな樹木の陰から、ぼんやりとした光が。赤く丸く小さな光、
「こんなのあったっけ?」
それはちょうちん、赤提灯だ。歩きながら顔を左へ向け通りすぎかけたが、その看板におなかが鳴った。

店内はやけに薄暗かった。なぜだろう?と首をかしげたとき、こざっぱりとした店員が話しかけた。
「始めたばかりなので配線が上手くいってないんだ、わるいね・・・」
「ふ〜ん・・」
内装は昔ながらの、そう時代劇にでも出てきそうな作りになっている。懐かしいというよりは、
暗さのせいもあり、すこし不気味。
「何になさいます?」
と注文を聞いてきた、が。
「時間が時間なんでビールとお好み焼きしかありませんが」
「じゃそれを」
テーブルの鉄板が暖まるまでしかたなくすきっ腹にビールを流し込む。こんな寂れたところで採算が合うのか
勝手な想像を繰り広げていら、やっとのことでソースの香りが広がった。
「いただきま〜す」
誰に言うともなく割り箸を割る。関西のほうではコテを使う、あるいわテコとも言うらしいのだが、この店には
無かった。割り箸をお好み焼きに突き刺し小分けにしようとしたとき、な、なんと!箸が動かなくなってしまった!!
背筋に寒い汗がかきあがる。箸を開こうとしても開かないのだ。まさに金縛り状態!。
「な、なぜだ?」
それを覗き込む。
と、そこには具として使われていた輪切りのネギがスッポリと箸の先端にはまっていたのであった・・・

チャンチャン
 
 

*フィクションです

(あ、・・・石ぶつけないでね)

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