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    リサイクルショップ 
 

ずいぶん以前から知ってはいたが、訪れるのは初めてだった。
その店の前はスクラップにあふれている。元々は駐車場として使われていたであろうが今では、
家電リサイクル法の4点セットの使い物にならなくなった品々に埋もれていた。
冷蔵庫、洗濯機、クーラー、テレビ。大小さまざま風雨にさらされ錆付いたり割れたり落書きされたりと。
他には朽ち始めたたんすや二輪車などなど。ごみ捨て場ではないはずなのに空きペットボトルやダンボール箱
が隙間を埋めていた。
斜めに傾いた看板が唯一ここがリサイクルショップである証のようであった。
人一人通り抜けできそうな獣道を進むと少し空間が広がり入り口らしき扉につきあたる。

「おお・・めずらしく客か」
扉を引き開けると、店の奥のレジカウンターで深い椅子に身を預けていた小柄な老体がその白髪頭を持ち上げた。
「ま、ゆっくり見ていきな」
と、再び深い椅子に沈み込む。
戸惑いは隠しきれないが何気ないふりをして足を踏み入れた。
店の中はきれいに棚が並び整理されていた。入り口付近には食器類、その向こうにラジカセや小型テレビに
パソコンと周辺機器が。たいして期待もしていなかったがやはりどれも一時代前のものばかりだ。
ただ、なぜだか昼間だというのに薄暗い。商品の傷や汚れを隠すためなのか。
古本棚を後にするとそこは楽器類が置いてあった。数は少ないが年期の入ったものばかり。
弓を使う弦楽器にアコーデオンにピアノ。ま、趣味ていどではあるが、少しは音楽をやる身としては嬉しくなった。
気になり値段を見る。
「安っ」
思わず声がもれる。どれも4桁の前半ばかりだ。ピアノまで・・・。
壊れているのか、と試しに鍵盤をはじく。やや鈍い響きではあるものの、音階もしっかり和音にも乱れはなかった。
ピアノはやらないが知った曲を単音で奏でてみる。悪くないかも、これを機会に始めようか・・・

「買うのかい?」
不意の声に驚き、振り返る。
先の老人が無表情にたたずんでいた。
「そのピアノにはいわれがあってのお・・・」
それきり目を宙にむけたまま押し黙る。問いただしたくてもできない。
しばらくすると身を翻し、ゆっくりレジカウンターへと戻っていった。

何も買わずに店を出たが、どうゆういわれのあるピアノなのか、今だに気になって仕方がない・・・。
 

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