あにまるみすてりー
その事件はとあるリゾート地の別荘で発生した。
山々に囲まれ林から湧き出る新鮮な空気の満ち溢れた一軒家。
豪邸といわれる部類に入るであろう立派なたたずまいである。
周囲にはブナや樫、松などの木々が緑にあふれ、緩やかな風がここちよさをかもしだしていた。
「それでは、まるで密室殺人ではないか!」
黒犬警部がさけぶ!
鑑識班のうごめくその一室は、一階の書斎と呼ばれる本棚が壁一面に並ぶ、こじんまりとした小部屋。
「し、しかし現状ではそうとしか考えられません」
白犬の部下がキッパリと答える。
ここの別荘のオーナーが殺害された。誕生日のパーティーを開くこととなり、親しい友人を招待したらしい。
被害者は、かっぷくのある獅子のシシ。部屋の真ん中で鋭利なナイフで心臓を一突にきされ、仰向けに倒れている。
あたりは血の海だ。
客として招かれたいたメンバーは4人。
猫のネコ、きりりとした女性。中年ぶとりぎみの狸のタヌキ。俊敏な狐、まだまだ若造のキツネ。
そして、若い女性でピッチピッチ兎のウサギ、ムンムンとフェロモンだし捲り〜。
ほかには執事の羊が二人いたが、今回のためだけに3日間の契約で雇われたらしい。
「現場は一階か」
黒犬警部がつぶやく。
窓は鎧戸で閉じられ、鍵はトリックの入る隙間も無いほど硬く閉じられていた。
「こちらが第一発見者の執事の羊Aです」
白犬部下が黒犬警部の前へと導く。
「あれは確か午後3時すぎでした。夕食の用意を始める時間になってもいらっしやらなかったので」
「呼びにきたんだな」
「はい。獅子のシシ様はご自分で腕を振るうおつもりのようでした」
「それで?」
「3階のお部屋にはいらっしゃらなかったので、あっちこち探しましたが・・・この部屋が最後になり」
警部の顔色が変わる。
「すべての部屋を見て回ったのか?」
「ええ、お客様の4部屋を除いてですが」
「な〜んだ・・・」
と、警部のため息。
部下ももらいため息をもらす。
「検視解剖を待たないとなんともいえませんが、死亡時刻は3時ぐらいでしょうね」
「多分な・・・。鍵は掛かっていたと?」
「はい」
羊Aはつづける。
「それで仕方なくお客様の部屋を回ろうとした時、足元に赤い液体がドアの下から湧き出てきまして・・・」
「体当たりでドアをぶち破った」
「そうです」
「鍵は保存場所は?」
「客室と玄関以外は、すべてオーナーが」
次に呼ばれたのは執事の羊B。
「私はその時間オーナーのシシ様に頼まれて買い物にでてました」
コンビニのレシートもあり、容疑者からははずすことに。
他の4名にはアリバイは無い。誰もがその時間自室にいたと答えた。
各部屋にはバストイレ付きでホテルのような作りになってる。
猫のネコは二階のバルコニーで昼寝をしていたと。
狸のタヌキは三階ベッドでタヌキ寝入りを。
狐のキツネは二階の窓からキツネの嫁入りを見ていたらしい。確かにその時間、にわか雨が・・・。
兎のウサギは一階で風呂に入っていたと。
「怪しいのはネコですね。雨が降っていたのにバルコニーで昼寝とは」
「だが、すぐに起きて部屋に入ったと言っていたぞ」
「そうですが」
「アリバイの前にまずトリックを解ないとなあ」
「はい」
遺体はすでに運ばれ、四角いパネルが市松模様に敷き詰められた床を黒ずんだシミが、
ドアに向かって広がる個室。
「どこかに隠しドアとかあったりして・・・」
白犬部下が壁をたたく。本棚を調べる。
「ありませんね」
その間、黒犬警部は腕組みをして考え込んでいた。
「何か変だ!!」
「はい?」
警部が指差す。
「死体は血にまみれたいた。この部屋の中央でだ。なのに血痕はドアの方にばかり流れている」
「そうですね、もつと部屋全体にまんべんなく染まってもいいはず」
警部が靴のかかとで床を突つく。
どんどん、どどん、どん、とお〜ん・・・!!?窓際の床で奇妙な音が響いた。
「以外とこんなもんなんですね」
あきれ顔で部下がつぶやく。
半畳ほどのパネルをはがすと土面があり、人一人は入れそうな穴があった。
覗き込むと、まだまだ続いており屋外へと出られそうだ。
その一部には血、らしき液体が染み込んでいた。警部は穴の土を手に取ると手のひらで擦りあわせた。
「まだ新しいな、乾いてない。つい最近のものだ。あるいは犯行時か」
「それはどういうことでしょう!?」
さて、容疑者は4名。
猫のネコ、狸のタヌキ、狐のキツネ、兎のウサギ。
賢明な読者なら、すでに犯人の目星はついていることであろう。犯人はだあ〜れだ?
まだ状況証拠しか無かったが、その容疑者を詰問するとあっけなく犯行を認めた。
犯人は兎のウサギ。
穴から出た先は雑草で覆われてはいたが、一階のウサギの窓付近であったことと、なにより、
この四名の中で、一番穴掘りが得意であったことがその決め手になった。
風呂の排水口を調べれば、あの穴の成分と合致する証拠も発見されることであろう。
ちなみに動機であるが、獅子のシシに妹を食い殺されたための敵討ちであるらしい・・・。
チャンチャン
(あ、・・・手榴弾とか投げ込まないでね)