【歯の数の話】

いきなり問題です。
Q:人間の歯の数は何本でしょう?

答えはさておき、哺乳類のもともとの基本的な歯数は44本とされています。ごく原始的なケモノの歯は44本だったんですね。
それから種が進化するにしたがって歯はそれぞれの役割を果たすために形態が変化し、また余分な歯は退化していきました。

さてここで「ドローの法則」というものがあります。これは「進化の系統上で失われた形質は二度と戻らない」という経験則です。
つまり、一度歯が退化してしまった種の動物ではそれ以降、歯の数が増えることはない。ということは、それより基本歯数の多い哺乳類がいるかというと、いないんですよ。ネズミやリスはもちろんのこと、ゾウやクジラのような大きな動物であっても皆、歯の数は44本以下なんです。

生物学的にはヒトの基本歯数は上下左右に8本ずつ、計32本です。原始的な哺乳類に比べるとかなり退化している歯が多いですね。
ただし、歯の必要性は食性にも関わりますので、歯の数が少ないほど高等な哺乳類というわけではありません、念のため。

通常、歯科医師が歯としてカウントするのは最後方の第3大臼歯(親知らず)を除いた28本です。
現代人は顎が小さいため、親知らずは正常に生えてこなかったりもともと歯自体が無かったり(先天欠損)が多く、歯ブラシが届かないためにどうしても虫歯になってしまうケースや、噛むという最も重要な歯としての役割を果たさないケースまで含めると、「抜いちゃいます?」ということが多くなりますね。
特に矯正歯科では特別な症例を除けば、親知らずは邪魔者扱いです。
もちろん、正常な咬合がとれるときやブリッジ(橋義歯)の支台になる可能性があるときなど、親知らずが必要な場合も少なくないんですけどね。

今までは永久歯の話でしたが、最後に乳歯の話を。人間の乳歯は普通に生えそろうと上下左右に5本ずつ、計20本です。
そういえば歯が一度だけ生え変わるというのも哺乳類の特徴ですね。歯のあるタイプの魚類や爬虫類では何度も生え変わるものがほとんどです。