【乳歯の役割の話】

乳歯というのも不思議な存在ですね。なぜヒト(を含む哺乳類)は一度歯が生え変わるのでしょう?
「子供のころは虫歯で歯を失いやすいから、もう一度生えてくるように進化したんだよ」
もっともらしい答えですが、これは違います。
より下等なサメなどの魚類で、何度も歯が生え変わるのは良く知られています。
歯が何度も生え変わると、カルシウム他のミネラルをそれだけ無駄に消費することになりますが、哺乳類はそういったことのないように(歯が生え変わらないように)進化してきているのですね。
しかしやはり、生えっぱなしよりも一度生え変わりがあるほうが、生存競争に勝利する確率が高くなる、だから乳歯と永久歯の交換があるということなのでしょう。

さて、乳歯は何のためにあるのでしょう。
「物を噛むため、食べるため」
ザッツライト。でもそれだけじゃないんです。
1:噛むことによって、脳と顎口腔系の正常な発育を促す。
2:永久歯の生えてくるまでのスペースを確保する。
という役割があるんですね。

まず1について。
これは言い尽くされている感がありますが、噛むことによって骨・関節・筋肉の発達が得られ、大脳の運動野や小脳の発育を促進するということです。
もちろん効率的な栄養摂取も得られますね。

それから2、これは少々理解しづらいんですが、人間の歯は前へ前へ寄ってくる性質があります。1本歯を失ったり虫歯で半壊したりしたなら、その奥の歯が開いた隙間に寄ってくるというか倒れこんでくるんです。
乳歯の状態でこの現象が発生しますと、その真下から生えてくるはずの永久歯のスペースがなくなってしまい、結果として八重歯になったり乱杭歯になったりする・・・要するに永久歯の歯並びが悪くなります。
また乳歯の虫歯による炎症で、正常な永久歯の形成が妨げられることもあります。

つまり乳歯の虫歯を放って置くと、身体の発育が遅れるばかりか永久歯の丈夫さ美しさにも影響があるんです。
そればかりではありません、正しい発音ができなくなったり口をあけることにコンプレックスを持ったりするために、性格が内向的になることがあるとも言われています。
怖い話ですが心内膜炎や腎炎の原因にもなりえます。

子供の虫歯は保護者の責任です。
なってしまったものは仕方がないですが、どうせ生え変わるからいいやなどと、素人判断でほったらかしにしておくのは厳禁。
可能な限り早めの治療と、専門家による指導が必要です。