ここは星の神殿。現在、俺は一応この神殿の神官長を任されている。 カペラという少女が現在の月の大神官最有力候補で伴侶募集をするという通達が月の神殿から来た。 俺は伴侶候補からは外されたのだがアルクツルス様に無理を言って行かせてもらえる事になった。 身支度を整え、星の神殿を出ようとした時に後ろから声をかけられた。 「本当に行く気なの?」 「……ベラトリックス」 それはアルクツルス様の娘でカペラの異母姉妹のベラトリックスだった。 「ケフェウスが罪悪感を感じてるのは知ってるけどサ。記憶返しても記憶無いままでもケロッとしてんのョ?あんのお気楽娘は。」 「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれないからとにかく行ってくるよ」 「〜っ!いっつも言ってるからケフェウスは信じてないのかもしれないケド、あたしはケフェウスを愛してるのョッ!」 「ありがとう」 本当に既に聞き飽きてしまって意味さえ薄れ気味なその言葉をいつもの様に聞き流して俺は月の神殿のある方向へ足を進めようとした。 「待ちなさいよっ!」 一面に咲いていたバラが妙な金属音をたてて立ちはだかった。これは彼女の特異能力で『本来自ら動く事がない物』を彼女の意志を持って動かすらしい。特に彼女は植物にこの能力で働きかける事を得意としていた。何故か彼女の能力が掛かると植物が金属の様な表面になるので襲い掛かられたらひとたまりもないのだけれど、彼女に対して冷静に対処している内は滅多に襲われる事はない。 「ベラ……これ直しておけよ」 「また誤魔化す気でしょうっ!?」 (ベラの事は嫌いじゃない。どちらかといえば気に入ってる。けど恋愛対象じゃないんだよな。だからって無視し続けるのも潮時かな……白黒つけよう) 「解ったよ。月の神殿から帰ったら答えを出すから待っててくれ」 6年前からの後悔の素、『カペラの記憶』を返して来たら……俺のけじめをつけたら。 |