評価p | 書名 | 著者 | 出版社 |
★★★★★ | 光抱く友よ | 高樹のぶ子 | 新潮社文庫 |
感動しました。とても短く、美しい作品です。購入したのは文庫版ですが、図書館で探して芥川賞全集の方も借りました。そこに収録されている「選評」を読み、プロがこの作品をどう思ったか知りたかったのです。 ちょっと古い本ですが、絶版でなく、案外あちこちの本屋で置いてあるようなので、皆さんにお奨めしたいです。 この著者は官能的な恋愛ばかりを書いているという認識でしたら、本作を読めば認識を改めるかも知れません。 敢えて本作品のテーマを言えば「友情」だと思います。わりと優等生風の主人公の少女がすれっからしの不良(らしく見える)少女のことが気になって色々と悩み近づいていく様子にどんどんと感情移入してしまいました。 ちょっとネタばれですが、不良少女にはどうしょうもないアル中のお母さんがいます。その不良少女が彼女なりの思いやりでお母さんを大切にしている様子、主人公とその少女の関係が接近するくだり、不良少女が星空にあこがれるエピソードなどは心に残ります。結末は寂しいですが、主人公が不良少女を心配して色々考えを逡巡させる様子は本当に美しくかかれていると思います。 本作品はストーリーが分かっていても読めるものですので上に書いた“ちょっと”のネタばれは許してください。本作のような小説はストーリーじゃなくて、文章が僕らの胸の中を揺さぶるのを味わう作品だと思いますから。 さて芥川賞受賞時の選評ではどう書かれていたかというと、高樹さんが受賞時に若かったせいか「美しい話だ」という評価よりは、「これからプロとしてやっていくにはもっと毒のある話をかけるようにならねばならない。」というような発言が目立ちました。僕にはせっかくの持ち味を失わせるような発言に思えます。そして、彼女は「期待通り?」花が咲いている描写さえエロエロの、官能的表現を編み出してくれました。(官能小説家になったという訳じゃないです。むしろ文壇の(プチ)ドン的存在なんじゃないでしょうか。知らない人に、念のため) 著者がもう一回こんな話書いてくれたらなあと思います。他の作品はともかく、本作はお奨めです。 芥川賞の選考委員ってスノッブな人が多そうですね。素直に感動できないのかな? それとも、たくさん色んなものを読みすぎて文豪たちの感性が麻痺しているのだろうか? 僕は純文学というジャンルを認めているわけではないですが、昨今社会がすさんでいるこの時代にこそ、芥川賞には心が洗われるような作品が書ける人を掘り出して欲しいものだと思います。社会の最先端のすさみぶりを飛び越すような作品が選ばれるのはどうかと思います(そういうノミネートが多いような気がするんです。阿部和重さんとかね。とれないけど。評価されてるでしょ。J文学はどーも、むむむです。)。 本作品は最近の文壇が忘れている本来の物語なんじゃないでしょうか。 |